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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編

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呪いを治しに

 


「あっ、そうだクルル。マグリット家の使いが娘の声を治して欲しいってさ。他にも治してっていう家も来ているし……どうする?」

「じゃあ、マグリット家を最後に治す形なら良いですよ」


「なんか意味あるのか?」

「マグリット家は、母に罪を着せた家です」


「……わかった。じゃあ何軒あるか聞いてくるよ」

「クルル、私も行くわ」

「セイランは家に居たほうが良いよ。友達に声を出せない自分を見られる訳でしょ?」


「だって、クルルに惚れちゃうじゃない。嫌よ」

「いや、それは無いでしょ」


 セイランさん、睨まないで。

 惚れないでしょ。

 ほとんど会話なんてした事無いんだよ?


「エルリン、何か言ってあげなさいよ。自覚していないわ」

「私は人間や獣人の恋人が増えても気になりませんよ?」


「エルフって寛容ね」

「セイラン、エルフは極端なんだ。もし私が他のエルフに好意を持たれたら、そのエルフはエルリンちゃんに暗殺される」


「……なんか怖いわ」


 エルフじゃなきゃ何人恋人がいても気にしないという……人間とは恋愛の概念が違うからかな。

 だからなのかは知らないけれど、愛が深い。


「カサンドラさんは気を付けた方が良いですよ」

「なんで俺さ」


「エルフ好きそうですよね? エルリンちゃんにちょいちょい視線が行くのはバレていますよ」

「ばっ! そんな事無いぞ! 可愛いとは思っているが俺は好きな人居るから大丈夫だ!」


 エルリンちゃんのチラ見回数多いんだよ。

 駄目だぞっ。私のエルリンちゃんなんだから。


「好きな人? 誰ですか? 今言って下さい」

「えぇ……俺の扱い悪くね?」


「兄さんは第一王女様が好きみたいよ」

「なっ! バレてるっ!」


「カサンドラさん、見損ないました」

「なんでよっ! 好きになるくらい良いだろ!」


「王族嫌いの私によく友達になろうなんて言えたもんですね。自分はガッツリ王族好きじゃないですか」

「いや……だってよぉ……一目惚れしちまったもんは仕方ないだろ」

「そういえばクルルがディクシムと話しているの見た事無いわね」


 ディクシムって誰よ。

 へぇー、一目惚れねぇ……

 ほうほう、第一王女とな。

 さぞかし美人なんだろうね。


「同じ学年ですか?」

「まぁ、そう、だな」


「今度喧嘩売りに行きますね」

「マジやめて、からかわないで、泣いちゃうから」


「男の涙に需要があると思っているんですか?」

「くっ、言って後悔している……いやでも俺もクルルと友達になりたいよ。なってよマジで」


「えぇ……じゃあ友達(仮)になりますかぁ……」

「ごめん、友達の後ろに見たくねえ文字が見える」

「兄さんは駄目」


 セイランさんは厳しいね。

 カサンドラの扱いが悪いのは、この中で唯一の男だから……なんかね。


「あっ、そうだ。四年になって迷宮の課外授業があるんだ。クルルも来てよ」

「行く理由がありませんね」


「迷宮の事色々知りたいんだ。お願いっ!」

「その場合カサンドラさんのついでに第一王女と話す可能性があるので却下です」


 断った所で、幼女が入ってきてドヤ顔でふんぞり返っている……なにさ。


「クルルよ、今年の課外授業はファイアロッドの大迷宮にするぞいっ! だからお主も参加じゃっ!」

「えぇー……」


 絶対私が行くって言ったから決めたでしょ。

 クルルで参加とか嫌だから、ルナードで参加だね。



 カサンドラに声を治して欲しい人を調べて貰い、貴族街を回る事になった。

 セイランは家でお留守番。エルリンちゃんは邪魔になるからと私の後方で尾行している。


「お邪魔しまーす」

「ようこそいらっしゃいました。此度の活躍、私どもの耳にも入っております」


「なんの事ですか? 他の方も治すので早く案内して下さい」

「……かしこまりました」


 えーっと、多分二組の女子の家。

 名前は知らない。カサンドラの案内通りに治すだけだから。

 応接間らしき場所に通されると、同じ年の女子が居た。声を出せない様子で、私を見てあたふたとしている。


「……」

「こんにちは、クルルと申します。少し失礼します」


 シルフィードの石をこっそり当て、水を飲ませて少しずつ喋るように伝えた。


「あり、が、とう」

「いえいえ、では失礼しました」


「待っ、てっ」

「あぁそうだ、あなたの行いを精霊様は見ています。何か声を失う切っ掛けがあると思いますよ」


「……」

 さらばだー。

 次が控えているからね。

 家の人の呼び止めを無視して、次の家へ。

 面倒だけれど、エルリンちゃんがシルフィードは休暇中という嘘で私に全員見ろと暗に言っていたから仕方なく全員回る。


「なぁクルル、その石なんだ?」

「声を戻す石ですよ。私以外が持つと呪われます」


「えぇ…まじか。どんな呪いさ…」

「多分呼吸困難で死にます」


「うわっ…こわっ…」

「じゃあ行きましょうか」


 ……

 ……もう、何軒も回っている。

 何軒も回って、私の素性を調べようという家もあるから、尾行も多い。


「人気者だなぁ」

「そうですねぇ。国民の為に頑張っていますから」


「はははっ、よく言うよ」

「ところで、オレイドス家は私に関して何か言っていました?」


「……いや、親父は居なかったから」

「そうですか。行きましょう」


「どんな反応を期待していたんだ?」

「いや、今の当主はどう思っているのかなって。確か変な法律が多いのはカサンドラさんの爺さんの仕業ですよね?」


「らしいな。でも俺セイランみたいに詳しくねえからさ……」

「まぁカサンドラさんがそんなだから、セイランがルールを大事にしていたのかも知れませんね」


 セイランを嫌いにならなかったのは私が嫌いでも、陰口なんて言わなかったし……言いたい事は面と向かって言っていた。芯があった。何か決意が見えたから、私はセイランを好きになったんだと思う。


 それから同じような対応を重ね、やっとマグリット家に着いた時には夕方……帰りは夜とか嫌なんだよな。虫が顔に激突してくるから本気で嫌なのよ。


「やっと来たわね! 待っていたわ!」

 母親らしき人に出迎えられ、早速……名前なんだっけ、グニアが待つ部屋へ。

 カサンドラは部屋の前で待ち、私だけ部屋の中に入ると……


「ぜひゅ……ひゅ……ひゅ……」

「グニア、今治せる奴が来たみたいだ。もう少し頑張るんだ」


 ……恐らく色んな方法を試したのであろう。

 薬品が並び、治療士が魔力を送って……これ、エルリンちゃんの呪いが凄い。

 絶妙に死なない程度に呼吸が制限され、水さえ飲めない状態。

 うん、なんか可哀想になってきた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] エルフから見れば百年も生きられない人間など犬猫と変わらない小動物同然… 愛玩獸ごときは恋敵として見なすに値しないという余裕の表れ…ってことですかな?
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