エリスタ名物体験……これ観光になるかな?
今回は近いので父と並走して東へ向かう。
後ろからカサンドラが飛行魔法で付いて来ていたので、気持ちゆっくりと…
草原を駆け抜け、森に差し掛かると中位の大型魔物がいた。
後ろから動揺する声が聞こえ、父がキンッと剣を抜くと真っ二つに切断されそのままの速度で森を抜ける。
「ルク…ルナード、そろそろ来るぞ」
「ふふっ、別にエリスタでは名前なんて気にしなくて良いんじゃない?」
「あいつはオレイドスの男だからなんか嫌なんだよ。あっ、この辺りは戦士系統の迷宮だったな」
前方に魔物の軍勢。
土魔法で地面を隆起させ、見下ろせる位置のお立ち台を作成し魔物を見下ろした。
オーガ種やギガース種等の中位魔物が犇めき、砂煙をあげて脳筋な行進……いつも思うけれど、警報って誰が鳴らしているんだろうね。後で父に聞こう。
「嘘だろ……こんなの……無理だ……」
「じゃあ、一撃目…行くね」
「よろしく。坊っちゃん、見ていろ。これがエリスタだ」
前方に青い魔法陣を展開。
右手に黄色い魔法陣、左手に黒い魔法陣を展開し、青い魔法陣に重ねた。いつもイメージだけで合成するから、正直正確にどんな魔法になるか解らないんだよね……普通の詠唱とは少し違うし…言葉が浮かんでくるから、身を任せれば、良い。
「大地を見下ろす殺戮の雨よ、見えるだろう…お前達の敵が…」
黒い霞から星空を隠す暗雲が発生し、魔物の上空には暗雲から突き出てきた無数の黒刃が、今にも落ちそうに待機していた。
「は…はは…すげえな……」
「やるべき事は一つ、貫くだけ、私に見せておくれ……血で彩る大地を……魔法合成・黒の万刃」
魔法陣が輝き、待機していた無数の黒刃が、一斉に落ちてきた。
上空から一気に発射され、次々と地上の魔物を貫いていく。
貫通力が凄い……頭の先から地面までバシュンと貫くから、ほぼ一撃で殺していく。
魔物達の断末魔が響く中……一体、一際大きな鎧の魔物が身体中に黒い刃に貫かれながらも、こちらに向かって一歩一歩踏み締めていた。あれは上位の中でも上の方、か。
「ルナード、ありがとう。後は任せてくれ」
「あっ、のっ、俺も手伝います!」
「いや、君はエリスタの者では無い。見ていれば良いさ…秘剣・瞬走」
父が張り切って魔物に向かって高速で駆け出し、魔物の前に移動していった。
別にここから剣閃飛ばせば良いのに……
「……クルル、エリスタっていつもこうなのか?」
「月に一、二回はこんな感じですよ。知っていますか? エリスタで魔物の氾濫を抑えた時の国から出るお金の額」
「あっ、知ってるよ! 結構な額貰えるんだろ?」
「答えは、ゼロです」
「は? 嘘だろ! こんなに魔物を倒してゼロか!?」
「これは、国から見たら魔物の氾濫では無いからです」
「なんでだよ、どう見ても魔物の氾濫だろ」
「ヴァン王国法第九百条・魔物の氾濫が起きた際は、騎士団や討伐者ギルドと連携し合同で対処する。各連携が無く少人数で対処出来る場合は魔物の氾濫とはならない……これは昔、オレイドス家が作った法律ですよ?」
「……まじ、かよ」
「そしてその法律が出来た時、前年度の収入に対して決まった税金が払えずに、エリスタは莫大な借金を抱えました。酷いですよね、国はエリスタから搾取したんです……お金の無いエリスタ領は、どんどん人が減って……エリスタの街は……小さな町になりました。あっ借金は討伐者ギルドのお蔭で、二年前に完済しましたよ」
「……」
「だからエリスタ一族は、この国を見捨てる決意を固めました。カサンドラさんは、こんな私達に国の為に命懸けで戦えと言えますか?」
「言えねえ……俺、何も知らなかった」
討伐者ギルドと探索者ギルドから手数料は貰っているけれど、ね。
父が鎧の魔物を真っ二つにした所で、任務完了、かな。
父が決めポーズをしてウザいので、適当に拍手しておこう。
「ルナード、ほれっ」
「おっ、やったー。ありがとうーきゃーお父さんだいすきー」
七色の珠…迷宮の核を受け取り、魔力を通す。
……おっ、今回は魔法だ。水中で呼吸出来る魔法。良い魔法ゲットだ。
「それ、何?」
「迷宮の核ですよ。じゃあ、晩御飯でも食べていきます?」
「あ、あぁ……ご馳走になります」
エリスタの事を話しながら家に帰り、母の作った晩御飯を四人で囲む……なんかカサンドラが居ると変な感じだな。
母はご機嫌で父は微妙な表情だし。




