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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編
23/336

知らないよっ、知らないんだからねっ

 

 昨日も、また魔物の氾濫が起きた。

 父が剣でバッタバッタやったけれど、父なので省略だ。


「ねーねールナードって休みの日何してるにゃ?」

「ん? 休みの日はハァハァしているね」


「何それー、きもいにゃ」

「ミカは何しているの?」


「私はー、店番だにゃ」

「そうなんだ。リューメイ魔導具店って有名だよね」


 ミカ・リューメイ。魔導具で有名なリューメイ家のお嬢様。

 ぴこぴこ動く黄色い猫耳に心躍らされる私の同級生だが、友達ではない。たまに話す程度の仲だ。


「ウチの支店ってエリスタにもあったっけにゃ?」

「無いよ。近くの街で寄った事があるから」


「へぇー、何か買ったかにゃ?」

「いや、買っていないよ。魔導具はエリスタで手に入れているから」


「あっ、迷宮産の魔導具って興味あるにゃ。何か持ってるかにゃ?」

「凄いの持っているよ。見て」


 ミカに変な踊りをしている人形を見せた。これ音に反応して踊るからつい手を叩いてしまう魔導人形……ミカは微妙な顔をして興味が無さそうに首を振った。


「もっと凄いの無いかにゃ?」

「高価な物は家にあるから持っていないよ」


「えー、じゃあルナードの家行きたいにゃー」

「ミカは長期連休が無いと家には来られないよ?」


「何それー、ルナードは家から通ってるんにゃよね?」

「うん、言ったじゃん。遠いって」


 家には色々と魔導具がある、光の便器だったり闇の義眼だったり風雷のクルミ割り人形だったり呪われしダッチワイ…げふんっ!

 ミカは口を尖らせて家に来たいと言っていたけれど、物理的に無理だと思うよ。

 エリスタから王都まで馬車で一ヶ月らしいから。

 引くよね、遠過ぎて。

 それに今持っている魔導具は、ある意味危険な物だから……


 二年生になって、授業内容はさほど変わらず……特に難しいという訳でもなく、相変わらず実技関係は手を抜く生活。

 なので私の生活リズムもさほど変わらない。

 今日もいつもの通り学院が終わったら、図書館に通う。最近は、四階に行ってから眼鏡を外してマスクをして図書館に行っているかな……だってなんか、人が多いし……ルナードからクルルに変わったらビビるでしょ。マスクなら素顔じゃないし。

 という事で隅っこが空いているから、とりあえず座ろう。


「……」

 ……そういえば、絵本って読んでもらった事無いなぁ。

 戦術や魔法書くらいか? 母は色々教えてくれるけれど、父は訓練以外で関わらないし……


「……」

 誰か前に座ったな。

 まぁ、席を立ったらもう座れなさそうだから良いか。


「……いつも、一人なの?」

「……見れば解るでしょ」


 相変わらず青い髪を一つに結んだ女子……セイランか。他の髪型を見た事が無いな、陰口女は毎日髪型を変えているのに……

 なにさ、見るからにぼっちなのに確認して楽しいかい?


「宿題、答えに来た」

「……ここは本を読む場所だから、移動しようか」


 本を戻してっと。

 図書館を出ると、セイランが付いて来たので学院の中に行き……階段を上がる。

 四階に上がる前の踊り場で、セイランの目を見ると自信ありげな目をしていた。

 さぁ、聞かせてもらおう。


「私は、自分の力じゃクルルの望む物は無理だと思った」

「……それが答え?」


「違う。私が、クルルの望む者になれば良いのかなって」

「何それ。どうやってなるの?」


「出来る限り一緒に居ようかなって」

「私が一緒に居たくないと言ったら?」


「それでも、一緒に居る。一人は、寂しいかなって……」

「それは、迷惑だね。同情なんてもっと迷惑だ。帰って」


 嫌だよ、付き纏われるだけじゃん。

 しかもオレイドス家だ。セイランと一緒に居るのなら、爺ちゃんを嵌めた家が私を調べようとする。

 それに魔法を教わりたいというだけで、一緒にいる選択をするのなら私が望む者にはなれないよ。


「そんなの、解っている。クルルが私を嫌っているのだって……解るし」

「……君の家は嫌いだけれど、君は嫌いじゃないよ。で? 望む者になったとして、魔法を教わった後は? ずっと一緒に居られる訳じゃない」


「……それは」

「私達は子供だ。今一緒に居たいと思ったとしても、いずれは大人になる……」


「……大人になっても、一緒に居られるかも知れない、し」

「一緒になんて居られない。私に身分なんて無い……そして君の家は有名だ。周りがそれを許さない」


 あぁくそ、セイランに八つ当たりしているみたいじゃないか。

 こんな事を言いたい訳じゃ無い。

 セリアの事が頭に浮かんで、あぁ駄目だ。

 落ち着け落ち着け。


「……私だって、将来の事なんて、解らない、よぉ……好きで、ルールを守っている訳じゃ、ないもん……」

 セイランの目から涙が溢れ、頬を伝ってもなお、私から視線を逸らさない。セイランは、私よりも将来に不安を持っているのかな……そう思うと、ルールに縛られているセイランは、ルールを破る自由なルナードが嫌いなんだろう。

 はぁ……気丈に振る舞うセイランには、気を許せる瞬間が無いみたいで……気を許せる人が居ないみたいで……見ていて苦しくなる。

 そうだよな、先の事なんて解らない。


「……言っておくけれど、常に一緒に居られると迷惑だから、これを渡しておく」

「……これは?」


「簡易通信魔導具、これが震えたら四階の教室に来て。今から案内する」

「良い、の?」


「見込みが無かったらそれで終わりだから」

「……ありがとう」


 セイランが頼んだ訳だし、私のペースに合わせてもらおう。

 因みに、この簡易通信魔導具は迷宮産の魔導具で、正式名称……遠隔バイ…いや、ここで正式名称を言っては駄目だな。私がこれを気に入ってしまって母が微妙な顔をしていたけれど、使い方は……知らないよっ。



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