女子らしいお洒落ってしてみたいよなぁ……
「……」
私の少し後ろから、徐々に距離を詰められそうになっている。
これは、競走か?
早歩きでも私は速いんだぞっ。
「……ねえ、何年生?」
「……二年」
「二年? 何組?」
「……知りたい?」
「えぇ、知りたい。同じ学年なのにあなたを知らないから」
「それはよくある事じゃない?」
「私、二年は全員顔と名前は覚えているから」
無駄に優秀ですね!
私は同じ組でさえ一年経ってもみんなの名前知らないぞっ。
それにルナードの顔知らんだろっ。
図書館から学院に入って、階段を上がる。上がって上がって三階に来た時に立ち止まって、セイランと目を合わせた。
「君は、四階に用事があるの?」
「無いけれど、何組か教えて欲しい」
「……零組」
「えっ」
クルルの名前を隠して零組の学生証を見せると、驚いた表情で見ていたので安全地帯の四階に向かおう。
……いや、付いて来ないでよ。
「……用事が無ければ四階に上がってはいけないよ」
「あなたは、あるの?」
「あるよ。教室が四階だからね」
「……私も、教室に行ってみたい」
「ルールは守らなければいけないよ」
「……解って、いるけれど」
「君は、ルールを守りたいんでしょ?」
「……」
はっはっは! ルール大好きセイランさんは付いて来れまいっ。
何気にこんなに喋ったのは初めてに近いけれど、地味じゃ無ければまともに喋られる事が解った……というプラス思考でいよう。別に喋りたくないよ、嫌われているし。話す話題無いし。
「じゃあね」
「待って…名前を教えて」
あっ名前かぁ……名前無いんだよね。ルナードなんて言えないし、このなんていうか男モード? の名前は考えていない……女子はクルルだし、本名はルクナだけれど……名前ねぇ……別にクルルで良いか。クルルで誰にも名乗った事無いし。
その前にセイランなんたらって名乗れし。
「クルル」
「あの……去年の魔法測定、クルルなの?」
「去年? あぁ、そう……」
「──私に魔法を教えて欲しい!」
うおっ! 急に詰め寄って来たからびっくりしたぁ……なに、私は雷使えないよ。セイランには優秀な家庭教師がいるじゃん。
それに私は覚えているからな、嫌いって言われたの。
でもでも話の流れからセイランの弱みを握れそうじゃあないか。
ふっふっふ、理由を聞いてみよう。
「急に言われてもね。君にはきっと魔法の家庭教師が居るし、適性が違うと思うから難しいね」
「それでも、クルルに教わりたいの」
「理由は?」
「……から」
「何? 聞こえない」
「格好良い、魔法だと思った、から……」
「……意外だね、君がそんな事を言うなんて」
「意外? そう、かもね」
皮肉げに笑うセイランは、見た事の無い表情で面白いなって思った。
かと言って魔法を教えるに至る理由にはならない。
私にメリット無いじゃん。限られた時間の中でやりくりしているのにさ。
「ねぇ、聞くけれど……君は、私に何をしてくれる?」
「望む物ならなんでも用意するわ」
「望む物? 君が家の力を使ったとしても、用意出来るとは思えないし、望む物は自分で手に入れる」
「じゃあ、えっと……」
黙り込んでしまった。少し観察……一年前より青い髪が伸びて、毎日髪留めを変えている辺りお嬢様だなぁなんて思ったりして。
私は相変わらずショートカットだから、羨ましく思う。
「意地悪だったかな。次に会った時までの宿題にしてあげる」
「何よ、それ」
「君が悩む姿を想像したら、楽しくて」
「……性格悪いって言われない?」
「言われないよ。いつも一人だからね」
「……」
さて、そろそろ切り上げて幼女の部屋に逃げ込もう。
セイランがなにか呟いたけれど、聞き返したら長くなりそうだし。
階段を上がってさいならー。
学院長室の隣の扉に入り、私の部屋と化した小部屋の椅子に座って一息……なんか、疲れた。
セイランに魔法を教えるという事は、二人きりにならないといけない? えー、結構キツいじゃん。
とりあえずセイランの答えを楽しみにしておこうか。




