102 ゴルランド道場
そう言えばスッカリ忘れてしまってたな、勇者レズリー。慌てて[探知]してみたものの。
「やっぱりいないか…」
「ムサシ様、勇者ですか?」
「うんごめん、逃げられちゃった」
「仕方ありませんね。またの機会に」
どのみちヨルムさん達がいるので血生臭い事はする気はなかったけどね。
それはまぁいいとして、お昼時だし飯にでもしますかねー。さてさて今日はどのお店に入ろうか?
「おや? あなた方は先程お城でご一緒した方々ではありませんか」
そんな時に掛けられた声に見やれば、確かにさっきお城で一緒にいた人。もっと言うとお城付きの道場になったゴルランド道場のゴルランドさんだ。
「おお、貴方はゴルランドさんだったかの。この度はお城付きの道場と言うことで、おめでとうじゃの」
「ありがとうございます。皆様の様な立派な剣客を差し置いて誠に光栄至極であります。特にそちらのお嬢さん、あの一振りは素晴らしかった」
なにげに誉めてるように話してはいるが、これは完全にバカにしているな。目が笑ってるもん。
「そうだ! 皆さんお昼は済ませましたか? まだでしたら私の道場でご一緒にいかがでしょう? よろしければですが」
「おじいちゃん、わたし行ってみたい! 他所の道場見てみたいの!」
「いや、しかしじゃな、こんな大人数で押し掛けるのもじゃな……」
「いえいえ、こちらは一向にかまいませんよ。道場生達も、他の道場の方と触れ合えば良い刺激になるでしょう。お嬢さん、うちの者達に一つ稽古つけて下さい」
う~ん、ユッコちゃんはノリノリなんだが大丈夫かな? このオッサン何か引っ掛かるんだよなぁ。
「ねぇおじいちゃ~ん」
「わかったわかった。ゴルランドさんすまないの、宜しく頼む」
じいさん孫に弱いな。簡単に陥落した。ゴルランドさんもいえいえと言いながら、目がより一層不気味に笑ってる様な。考え過ぎならいいけど。
「さて着きましたよ。ここが私の道場です。おい、客人だ。昼食の用意を頼む」
程なくして着いたゴルランドさんの道場は、王城からさほど離れていない場所に構えていた。とても立派な道場で、敷地面積でいうならヨルムさんの道場の倍くらいありそうだ。
そして中からは威勢の良い掛け声が聞こえてくる。
「さあこちらへ。先に昼食に致しましょう」
ゴルランドさんの案内のもと、道場の中へと誘われる。中では当然道場生達が稽古に励んでいるのだが、俺達が現れると目を奪われてるのがありありとわかる。俺はもうスッカリ慣れてしまったのだが、美人使い魔にヘイトが集まる現象だ。汗臭い男達のギラギラした目付きが怖いっす。
そんな欲望丸出しの視線に晒されながら案内された先は、道場の食堂なのだろう。大勢が腰掛けられる広い造りになっている。
そして既にテーブルには所狭しと色々な料理が既に用意されていた。こらまた凄いご馳走だな。
「急だったもので大した物はご用意出来ませんが、お召し上がり下さい」
これで大した事ないとか、普段どんだけ良いもの食ってんだか。こうなったら遠慮も会釈も無いぜ! 田舎者の食事を思い知るがいい!
「いったっだっきま~すっ!! こら美味いこら美味いガツガツ! ガツガツ!」
「ムサシ様、お行儀悪いですよ。モグモグモグモグ」
「テン! そっちの肉をとってくれ!」
「モゴモゴ~モゴモゴ~(どうぞ姉様)」
「お兄ちゃん達は相変わらずの……クスクス」
「こりゃこりゃお前ら、人様の家と言うのにまったく」
「アッハッハッ、素晴らしい食べっぷりですね! ささ、どうぞご遠慮なくいただいて下さい。道場生用に量だけはありますので」
言ったな? うちの使い魔の胃袋を舐めてるな? エンゲル係数の高さに毎月ヒィッて呻くくらいだぞ! 者共! 食って食って食いまくれ!
そして食事を続ける事しばし。あれよあれよと平らげる俺達に、ゴルランドさんも顔が引きつっている。
すると厨房の方から人が現れるとゴルランドさんの元に駆け寄り、何やら耳打ちする。
「す、すいません皆さん。申し訳無いのですが食材が切れてしまった様で、この辺で……」
勝ったな。ゴルランド道場恐れるに足らず。
「そうですか……」
リヴァイアさんは本当に残念そうな顔してる。アレだけ食ったのに……
恐怖のおもてなしタイムにたっぷり冷や汗をかいたゴルランドさんを余所に、俺達は道場を見学させて貰う事にした。
「ほうほう、お城で見た演武だな。クリクリ回ってるな」
「なぁ兄上、アレは何故回ってるのだ?」
「必殺技じゃね?」
「おお必殺技か。格好いいな」
リンちゃんに格好いいと言われた演武君に力がこもる。そんなやましい気持ちで稽古してていいのか? 面白いけど。
「リンちゃんアイツに手を振ってあげて」
「ん? 手を振るのか? こうか?」
うはっ! 回転力上がった! 分かりやすいモチベーション! あっ! ずっコケた!
「ムサシ様も大概人が悪いですね」
「いや面白いですよこれ。リヴァイアさんはアイツに手を振って」
「主の命令じゃ仕方ありませんね」
自分だって楽しんでからかってるクセに! 今度はリヴァイアさんに手を振られた奴が余所見して、隣の人を叩いたりしている。おお、ケンカしてるぞ。物騒だねぇ。
「ん~、こうかなぁ」
「ユッコ姉様上手いですぅ」
お! ユッコちゃんが演武の真似しとる! てか、道場生より上手くねぇか? なんつうか動きがスムーズだよな。
「ユッコちゃん上手いもんだな。よっ!この天才美少女剣士!」
「照れるぜー」
照れるしぐさも可愛いね。テンちゃんと一緒にいると可愛いさ倍増だね。
「どうですか? うちの道場は」
見学してる俺達のもとにゴルランドさんがやってきた。
「もしよろしければ、少し遊んでみませんか? うちの道場生と試合とか。王様も絶賛したお嬢さんの剣技を是非」
なるほど。こいつの目的はこれだったか。
読んでいただいてありがとうございます!




