101 剣聖の片鱗
「今日、皆に来て貰ったのはわかっていると思うが、その腕前を見せて貰う為だ。勿論、実力次第で城で召し抱える事もある。思う存分に力を奮ってみて欲しい」
なんか思ってたよりザックバランな感じの王様だな。堅苦しくなくて助かる。
「それでは順番に演武を見せて貰います。左端から今並んでる順でお願いいたします。では宜しく」
宰相のシモンズさんが淡々と説明すると、早速御披露目会は始まった。
正直、剣術や槍術の演武なんて俺は出来ないし、見た事もなかった。ヨルムさんの道場でもそういうのは全く教えて貰ってないしね。
「ヨルムさんもあんなヒラヒラ舞ったり出来るんですか?」
「ワシの道場は実戦しか考えておらんから、こういうのは出来んのぅ」
「出来ないって! じゃあユッコちゃんどうするんですか?」
「真似すれば良いかのぅ」
適当だなおい。こんな複雑な創作ダンスみたいなの簡単に覚えられないだろ。
「ユッコちゃんどうすんの?」
「ん~…… どうしようね♪」
ニッコリ微笑まれた。いや可愛いけどれも。でも臆した様子もなく、楽しく演武を眺めてるし、何かあるんだろうな。横からやいのやいの言ってもしょうがないか。
しかしこの演武と言う物にも、きちんとした剣術の意味があるんだろうな。クルクル回りながら剣を振り回したり、明後日の方向を向きながら訳のわからないポーズで剣を突き出したりするのにもきっと。
当人さん達は演武が終わるととびきりのドヤ顔をしている。周りの人達もウンウン頷いている辺りは、これで剣術の何かが見切れているのだろう。
俺にはさっぱりわからないけど。
ただ、中にはつまらなそうに眺めてる面々もいる。その中に王様も含まれているんだが。
次々と演武が行われる中、目を引く者も出てきた。ヒラヒラ舞うようなソレではなく、素振りを見栄え良くしてる様な感じだが。こっちの方が剣筋等がとても分かりやすい。俺向きだね。
「はい結構ですよ、では次の方」
「はいっ!」
そしていよいよユッコちゃんの番だ。頑張れー!
「おっと。こりゃまた可愛いのが出てきたな。お嬢ちゃん名前は?」
「ユッコです!」
「ユッコか。いい名だ。力一杯やるんだぞ」
王様からの小粋な激励が入った。このむさ苦しい中で紅一点だしな。これくらいは贔屓にもならんだろ。でも子供だから、女だからの差別が無いってのは良いことだ。平等にこの場に立たせて貰っているのだしな。
しかし演武なぞ出来ないと言ってたけど、どうするのかと思ったのだが、家から持ってきた愛用の木刀をスッと上段に構えた。うん、隙の無い良いかまえだ。王様もほぅと、感心してみせている。
そのまま目を半開きにし、更に集中するユッコちゃん。これはアレだな、座禅の時の要領に近いのかもしれない。
でもなんか…… この集中力と言うか緊迫感のような感覚は……
ヒンッ!
なっ!? マジか!?
俺は自分の目を疑った! ユッコちゃんは木刀を振り下ろした。振り下ろしただけなんだが、この剣筋を俺は俺は良く知っている。いや、細かい癖こそ違いは有るだろうが、これは[剣聖]シルヴェーヌさんと同じものだ!
その凄さに気付いた者達は驚愕の色を隠せない。王様に至っては身を乗り出している。
「はぁ…はぁ… これくらいしか出来ませんけど…」
放ったユッコちゃんもたった一振りに疲労困憊の様だ。自身を極限まで研ぎ澄ました一閃だったんだろうな、こんな小さな身体でたいしたもんだ。お疲れさん。
「クックッ… たった一振りに…」
「まぁ子供か…」
「どうしてここに招かれたのか…」
今のがわからないレベルの連中は、ユッコちゃんが一振りで疲れたと思っているみたいだが、この凄さがわからんお前達こそどうして招かれた?
ユッコちゃんの後もつつがなく演武は行われた。ただしドングリの背比べの様な腕前だった。勇者レズリーの一団からはレズリーではなかった。きっとレズリーも付き添いなのだろう。
「それでは今の方で最後ですね。お疲れ様でした。えー、今回召し抱える方はゴルランド道場のゴルランドさんですね。立派な演武をありがとうございました」
え? ゴルランドって一番ヒラヒラ回ってたあの人だろ? 誰が見たってユッコちゃんが一番凄かったろ? あ、凄過ぎて伝わってないのか。笑ってた奴もいたしな。つーか結果出るの早くね?
「ちょ……」
俺が一言いってやろうかと思った時、ヨルムさんがガシッと俺を掴み、首を振って小声で呟いた。
「いいんじゃよ。これはな、こういうもんなんじゃよ」
……出来レースか。初めから結果が決まってたのかよ。何かつまんねーな。
「おい、お嬢ちゃん。ちょっとこっちに来てくれるか?」
「王様何を!?」
「いいから」
そんな中、王様が突如自分の元においでとユッコちゃんに声を掛ける。たまらず宰相が制止しようとしたが、王様は無視してユッコちゃんを呼び寄せた。そして二人しかわからないくらいの声量で、二言三言会話をするとケラケラと笑っていた。
「よし、それでは今日は皆大儀だったな。選ばれなかった者もこれに挫けず、より一層の精進を王として願う。では解散してくれ」
そういう訳で御披露目会は無事に終了した。なんとも釈然としない終わり方ではあるが、これが政治やらなんやら色々ある結果なんだろう。
お城を出て暫く、
「ユッコちゃん、王様と何を話したの?」
「ごめんなって。俺的にはわたしが一番だったよって。少なくてもゴルランドとかいう猿回しの猿じゃないよって」
そりゃ一番の褒美だな。一国の王に認めて貰えたんだ。きっと今後ヨルムさんの道場に何かあっても善きに計らって貰えるんじゃないかな?
それにしても猿回しの猿とは、王様も上手い事言うもんだな。
読んでいただいてありがとうございます!
100話達成記念に活動報告でちょっとした制作秘話を書きました。




