1-8 夢は持つもの、現実は妥協するもの
ノアは魔法使いを夢見ているだけなのです。
だからプロレス技も魔法と割り切るのです。
「知ってたもん……がっかりなんて、してないもん……」
あからさまにノアは肩を落とし、湖の畔で丸を書いていじけている。
「いい加減に諦めろ。お前が普通の魔法を覚えることは、一生無い」
「あるかもしれないじゃん!」
「人間あきらめが肝心だ」
「諦めたらそこで試合終了だよ!」
「魔法と言いつつ、モンスターを投げ飛ばす娘が何を言う」
「うぅぅ~……」
「唸っても一般的な魔法は使えん。諦めてステータスに表示される分を覚えていけ」
「絶対に諦めないもん!」
「分かった分かった……で、DDTの掛け方は教えんでいいのか?」
こんなの魔法じゃない。
ノアはふくれっ面を隠そうともしない。
本来、魔法とは『力あること言葉』がセットになっている。
発動させるために必要な『言』、また威力を高める為の詠唱と呼ばれる『吟』が、天恵として直接頭の中に響き、刻まれる。
魔法とはまさに、神々からの恩恵なのだ。
他にも火の属性とか風の属性とか、いろんなタイプの魔法があって、水の属性は火に強くて土に弱くてとかいろいろ相性があって、光と闇という特殊属性があって、この二つは神の使い、悪魔の使徒とか呼ばれちゃう危険な属性……などと、知識がいくらあっても、生活魔法すら絶望的なノアがどんなに求めたところで、憧れの魔法使いにはなれない。
「……教えて下さい」
ノアは渋々頭を下げた。
「つまり、DDTは、相手の頭を抱え込んでそのまま後ろに倒れ込めばいいの?」
「大まかにはそういうイメージで良い。あとは走って飛びついても良いだろうし、向かってきた相手を捕まえてもいい」
「ふむふむ……」
ノアと寅は、湖の湖畔で至ってまじめにDDTの練習をしていた。
端から見ると、のどかな晴れ間に、湖の畔で少女がぬいぐるみとじゃれ合っている微笑ましい光景なのだが、会話の中身は敵を頭から地面に突き刺す算段を整えているのだから、物騒きわまりない。
「必ず相手の背後を取らなければいけないジャーマンより使い勝手は良いだろう」
「うん、イメージはしやすい」
「あとは、実践あるのみだが……」
と、寅は周辺を見渡す。
のどかな湖の水面が静かに揺れているだけ。
「ま、そのうちゴブリンにでも遭遇するだろう」
「うん、帰ろ」
優先順位で言うなら、当面の生活費を両親に届ける方が先。それに、有象無象の魔物でよいのだから、焦って相手を探し回る必要も無い。
ノアと寅は、暫く湖沿いに歩き、街道へ戻ることにした。
その犠牲者の名は。。
次回のお楽しみ。。
コマケェコタァイインダヨォ!




