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精霊の友として  作者: 北杜
四章 男爵家使用人編
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プロローグ

四章開始です。

冬を越えて辺境の村では今年も来年にむけて作物の準備をしている。畑を耕す男性、家事をする女性、冬が終わり暖かな日差しで遊ぶ子供達。

しかしそんな他愛もない日常が崩れ去った。森から武装した人間が現れ、村人を殺し、家や畑を焼いた。男は殺され、女は遊ばれた後に殺された。

着の身着のまま何とか逃げ出した僅かな人々は他の村に逃げたり、森の奥に隠れたりした。森に隠れた人々は村が壊され、この場所では何もできないと悟り村に残っている僅かな私財を持って他の村に向かった。

しかし、他の村々も同じように村が壊滅したことを知る。ある若者が言った。


「貴族様に助けて貰おう」


しかし貴族が居る町までは何日も歩かないといけない。行った事は無いし何より食料も少ない。しかし他に行く所が無いからみんなで協力をして貴族が居る町、ウィール男爵様が治めている町に向かった。

途中で力尽きた人が脱落をしていく。半数は町に着いたが残りの半数は旅の途中で亡くなった。町の門番に事情を説明して、水と食料を摂って安堵した。

事情を聴きに来た人に村が襲われた事を話し、休める所に案内をして貰った。広い畑がある所でその中の家を借りたが次々と人が増え、家の中が人でいっぱいになった。

他の人達から聞いたところ、村を襲われたのは私達の村だけではない様だ。他の村も壊滅をさせられた。犯人は帝国の人間と聞いた。私達は襲われたのは王国の砦に近いからだろう。帝国に親族や友人を殺され、畑を焼かれ、村を壊された。そして助けてくれない貴族を恨んだ。

数日後、男爵領の領主様が来た。


「帝国の攻撃から村を助けられなくてすまない。お前達は私が保護しよう。食料や住む場所を与えるがお前達にも農園で働いてもらう。必ず故郷に帰すから心配をするな」


そう言って農園の責任者が作業を分担する。畑を耕す者、新しく畑を作る者、私達の住む家も作る者。私達が住む家の前で畑を作っている人達がいる。その中の子供が魔法で竈を作ったり穴を掘ったり畑を作ったりした。家が出来上がる頃には目の前に広い畑が出来上がっていた。そして私達はこの場所で帝国に襲われた心の傷を癒しながら生活をしていく。私達が生まれ育った故郷に戻れることを信じて。




部屋で二人が会話をしている。一人は激しく怒りながらもう一人を責めている。だが責められる人間の方は自分は悪くないとばかりにすました顔をしている。


「どうして、村人を大勢殺した。殺すのは極力禁止をしたはずだ」

「申し訳ない。命令が行き届いていなかったようです。しかしこれで戦争が出来ますよ」

「命令違反で戦端を開いてな」

「良いではありませんか。これで王国を攻撃できます」

「その時期ではないと上層部は考えている」

「そういえば上層部から呼ばれているそうですね」

「お前との会話が終わったら行く」

「では私は戦の準備がありますので失礼をします」


部屋から出て行った後、机を殴った。机の上にあった書類やペンが床に落ちる。作戦が漏れたか、利用されたか。今から戦端を開いた責任を取らされる。

ドアからノック音が聞こえる。


「失礼します。閣下がお呼びです。至急、お越しください」

「分かった」


これで出世は無くなったな。良くて辺境の警備の任務か、汚れ仕事か、変な所に左遷かだな。最悪は死刑か。行く気にはなれないが命令では仕方がない。


「失礼します」

「死刑との声も出ていたが今までの功績を見て死刑ではなくなった。これが命令書だ。受け取ってとっとと消えろ」


投げつけられ床に落ちる。拾って礼を言い部屋から出た。


「おや、作戦を失敗した奴がどうしてここに居る?」


嫌な奴に会った。何かとオレに絡んでくる馬鹿な貴族だ。


「命令書を貰ったんだ。多分、辺境任務だ」


「おや、それは大変だ。辺境は賊が居るからな。村を壊滅させない様に気を付けろ」

「・・・気を使ってくれてありがとう。用事があるから失礼する」

「そうか、大変だな。では辺境で頑張ってくれ」


嫌な奴と会話を終え部屋に戻り命令書に目を通す。辺境にある鉱山の労働施設、帝国の犯罪者収容施設の警備か。それも至急出発と書いている。早く準備をして帝都を出発するか。早く出ないと五月蠅い奴が来るし、命を狙われるかもしれない。


「おい、どういう事だ」


今度は五月蠅い奴が来た。


「いきなりどうした?ノック位しろ」

「どうして辺境に行くんだ?作戦は上手くいったのだろう」

「作戦は失敗。戦端を開いた責任を取る」

「⋯⋯お前の作戦は戦争の戦端を開く事だろう」

「そうだ、オレが指示した作戦は村人は生かして村を壊滅させて貴族が居る町に行かせて食料を減らし、村人と一緒に諜報員を送り込み領地を混乱させて情報操作をしながら戦端を開く事だった。しかし三日前に「物資不足から王国との戦端を開くのは少し待て」と言われた。作戦を始めたのは半月前なのに作戦の変更が三日前だ。それも作戦は内密だったのにどこからか漏れた。そのせいでオレは責任を取って辺境の労働施設の警備だ」

「やられたな」

「見事にやられたよ。これでオレの出世の道は断たれた」

「犯人は誰だ?」

「知らん、オレを恨んでいる奴なんて帝国だけで百人は居るだろう。オレには敵が多すぎる」

「⋯⋯お前、良く生きてるな。それだけの人数を敵に回して生きているなんてオレには無理だ。しかし戦争が始まるが作戦はあるのか?」

「知るか、上層部が決めるだろう。オレは関係無い」

「帝国は勝てるか?」

「⋯⋯せめて王国側の砦が上手く混乱していたら何とかなるかもしれない」

「作戦はあるのだろう?オレが引き継いでやるから教えろ」

「⋯⋯分かった。オレの元副官に渡すからオレの元部下達を保護してくれ」

「お前の部下達を保護しよう。戦争に勝利したら褒美にお前をオレの下に置くぞ。お前を辺境で腐らせる訳にはいかない」

「辺境よりもお前の下の方が少しだけ良いかもな」

「少しだけか。オレの部下になったら近衛兵よりも良いと言わせてやる」

「だったら脳筋を辞めろ。ヤマ勘で動くな。情報を吟味しろ」

「それはお前に任せる」

「だったら早く武勲を立ててくれ。オレの部下達を頼む」

「分かった。ではまたな」


部屋から出て行った。一人になったオレは帝都を出る準備を始めた。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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