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精霊の友として  作者: 北杜
四章 男爵家使用人編
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閑話 男爵家家族旅行3

プロローグからいきなり閑話(笑)

100,000PV突破。皆様ありがとうございます。

今回の伯爵領の旅行は大変だった。行きに賊に襲われ苦労したが、滞在中も苦労した。

伯爵家の料理は不味いし、エイルドとトルクが傭兵ギルドでやらかすし、トルクが伯爵家の料理長とやりあうし、トルクが賊に襲われるし、賊が屋敷に侵入して義父をねらうし。

⋯⋯トルクが原因で事が起きた方が多いのは気のせいだと思いたい。

やっと明日には男爵領に帰れると思うと頭が痛くなる。旅行で書類や厄介事は溜まっているだろうし、新しく増えた人員や兵達の事を考える。料理人はデカルとトルクに任せよう。侍女のエリーはクララに頼み、侍女見習いのマリーはエリーに任せよう。問題は伯爵家から来た兵達の住む場所だな。新しく宿舎を建てるか?農園の方に休める宿舎があったかな?領地の見回りもしないといけない。

おっと、もうすぐ義父と話す時間だ。伯爵家滞在中は夜になると酒を飲みながら義父と話す。伯爵家にある酒は良い物が多い。これも伯爵家に行く楽しみの一つだ。


「失礼をします」

「今日は最後の日だ。秘蔵の酒だ」


乾杯をして二人で酒を飲む。これは美味い。男爵領では手に入らない極上の酒だ。


「ムーア伯爵領の酒だ。ネーファの伝手でお茶の葉と一緒に酒を貰ってな。今度、ムーア伯爵にはお礼をせねばならんな」

「では精霊の料理で決まりですね」

「そうだな。それにしてもトルクには色々と驚かされる」

「ですね。私達も色々と驚かされています。料理だけではなく、剣の腕、魔法、勉強、使用人としても問題ないし、レオナルドの仕事も出来ます。リリア殿の子供とはいえ凄い才能豊かな子です。あの子が来てからエイルドは使用人達に暴力を振るわなくなったし勉強も真面目に頑張っています。ポアラも勉強から逃げず、魔法の腕も上がってきています。魔法で物を壊したり、人に当てないし、私達もトルクが来てから助かってますよ。ドイルもトルクのように剣術・魔法を習うって言っています」

「そういえばエイルドとポアラは王都の学校では大丈夫か?」


王都の学校は十歳から十五歳までの貴族の子供がいる。そこで勉強や貴族の有り方を教わるのだが。


「⋯⋯エイルドの剣術や馬術は優秀ですし、ポアラは魔法の才能が有るから大丈夫でしょう」

「貴族としての立ち振る舞いはどうだ?」

「⋯⋯アンジェやリリア殿に教育をしてもらいます。トルクもいるから大丈夫でしょう」


男爵家の私は貴族の立ち居振る舞いは随分と苦労をした。田舎で礼儀作法が出来る人間が居なかったから、親から習ったがそれでも学校では浮いていた。男爵家は平民と一緒に暮らしていて私はそれが普通だと思っていたが、他の貴族達の立ち居振る舞いを見て驚いた。貴族達にとって平民、いや貴族以外は「道具」だという事を。王都や学校で平民を道具のように扱う事が貴族の有り方だと知った時はショックを受けた。今まで男爵領で生活してきた事が否定されていた。農園で平民と畑の実りを祝い、男爵家で働く人達と一緒に生活をする事が否定された事が子供時代の私にはつらい事だった。

王都に住んでいる貴族からは平民と一緒に生活をしている辺境の貴族、田舎者の貧乏人の貴族と言われたが私達はその子供達と助け合いながら学校で生活した。

学校では王族の子供が上位でその次に公爵・侯爵の子供。そして裕福で金を持っている王都の貴族の子供達だ。辺境の貴族は田舎者と扱われている。辺境の男爵家の私は田舎者として扱われたが剣術の腕は学校では上位だったから教師や優しい貴族達からは評判は良かった。

しかしそれ以外の貴族からは嫌味・やっかみは多かった。「流石、田舎者。剣しか振るった事が無い様だ」とか「野蛮な田舎者だ。王都の雰囲気を壊す事しか出来ないのか」とか「金が無いようだが鉄の剣はもっているか?木刀で魔物や賊と戦うのか?」色々と言われた。

私は辺境の貴族達と仲良くなり、勉強や剣術をして、王都の貴族と縁を結ぶ。そして伯爵家令嬢のアンジェと会い色々あって仲良くなった。

アンジェは平民を道具とは思っておらず心優しい女性で私達仲間の憧れの対象だった。他の仲間達を蹴落としてアンジェと恋仲になり、仲間達から拳や剣や魔法の暴力的な祝福を受け、戦場で手柄を立て結婚をした。今思えば私も若かったな。


「まあトルクがいるなら大丈夫と思いたい」


義父から酒を注がれる。いつの間にかコップの酒を空にしていたようだ。義父のコップも酒が少なくなっているので私も義父のコップに酒を注ぐ。


「して、そのトルクだがお前はどうする?」

「どうするとは?」

「リリア殿はワシの命の恩人だ。その子供のトルク、そしてアイローン伯爵家にいるトルクの妹だ。エイルド達の一つ下の子供だから再来年には王都の学校に来るだろう。ワシはリリア殿と子供達を保護する。アンジェは伯爵家の養子にと言っているし、ワシもその方がリリア殿を守れる。そうなるとトルクも伯爵家の人間になるのだが、その事についてお主はどう思う」


確かにアンジェがそんな事を言っていたな。あの二人は雰囲気もそっくりだし、姉妹の様に仲も良い。そうなるとトルクは伯爵家の養子になり継承権を持つようになる。そうなるとただの使用人ではなく、キチンとした教育をしなければいけない。王都の学校で学ぶ必要がある。


「王都の学校に入れる、という事ですか」

「うむ、エイルド達と同じ来年ではなく、再来年、リリア殿の御息女を保護したら二人とも学校に入れようと思う」

「それではエイルド達は学校の宿舎には入れない方が良いでしょう」


王都の学校は宿舎があり王都に屋敷が無い貴族の子供と使用人が使う。私は宿舎を使い、アンジェは王都の別邸から馬車で学校へ通っていた。


「王都にある伯爵家の別邸からエイルド達は行く。トルクとリリア殿は別邸で過ごしてもらうのが良かろう」

「その方向で考えましょう。まだ時間はあります」


また酒を飲む。トルクとリリア殿をアイローン伯爵から隠さないといけない。見つかったら何が起きるかわからないからな。

アイローン伯爵か。私と近い年齢で同じ学校で学んだが彼は典型的な貴族だ。平民を道具として扱い、暴力を振るい、上位の貴族にはへりくだり、下位の貴族には威張り散らす。嫌な奴だった。そんな奴から生まれたトルクは奴とは全く似ていない。礼儀正しく頭も良い、剣術も魔法も使える。母親のリリア殿の血だな。アイローン伯爵の血の面影もない。嬉しい事だ。


「エイルドとドイル。どちらを伯爵家に継がせるか考えたか?」


義父から去年と同じことを質問された。伯爵家の一人娘と結婚した時、男の子を伯爵家に継がせる事は結婚時に約束した事だ。エイルドは剣に夢中で男爵家の仕事は興味がない。「世界一の剣士になる」と言っている。そろそろ貴族としての心得を教えないといけない。ドイルはまだ幼いのでどんな大人になるかわからないが、エイルドの方がドイルより貴族に向いていると思う。


「まだ、二人とも幼いからわかりません。伯爵家を継ぐのはそれ相応の者ではなければ」


去年と同じ答えで返す。


「最悪、トルクを養子にしてポアラと結婚させても良いか?そしてその子に伯爵家を継いでもらう」


その事は考えてなかった。しかし水の聖女リリア殿の子と伯爵家の血を引くポアラ。悪くないと思うのは私だけでは無いはずだ。だが、トルクは男爵家に必要な人材だ。これは困ったな。


「良い考えだと思いますが、トルクは男爵家に必要な人材です。この案も少し待ちましょう。ポアラの事もあります」

「そうだな。少し早すぎたか。娘を嫁に出す辛さをお主も味わえるな」


義父がハハハと笑いならが酒を飲む。ポアラが嫁に行く事も考えなければならないな。そういえば許嫁や婚約とか考えていなかったがそろそろ考えた方が良いのかもしれない。しかし我が男爵家と縁を結びたい貴族はいるか?エイルド達の婚約者を考えた方が良いかもしれない。私の父は「結婚相手は自分で探せ、親を当てにするな」と言われたから学校で探したんだ。私の子供達はどうすれば良いか?


「義父上、子供達には婚約者を探した方が良いのでしょうか?」

「婚約者か。広い農園が有るとはいえ、男爵家に来る者か。難しいだろう」


やはりか。これは父に習い子供たち本人に探させる事が良いかもしれない。いや待て。アンジェやリリア殿に相談をすれば何とかなるかもしれない。


「婚約者の事はアンジェと相談をしてみます。私よりも良い事を考えるでしょう」

「それが良いだろう。リリア殿にも相談してみてはどうだ」

「アンジェがリリア殿に言いますから問題ありません」

「確かにな。ネーファにも相談をするかもしれんな」


笑いながら酒を飲む。今日は義母には驚いた。侍女のエリーの為に結婚相手を探していたみたいだが結婚出来る人間が見つからず、最後にはトルクをエリーの結婚相手に出したからな。子供達の婚約者を探すのは難しいかもしれない。


「エイルド達の婚約者を探すのも良いがトルクにも探さなければいけないな」


トルクに婚約者を探すか。これはリリア殿に相談をしないといけないな。この際、ポアラと婚約させるか。アンジェも喜ぶだろうし。トルクなら伯爵家や男爵家の為に尽くしてくれるだろう。義父も義母もトルクに悪い感情は持っていない。レオナルド達も賛成してくれるはずだ。それにポアラも遠くの知らない領地に行かなくていいし、心無い貴族のもとに行くよりも安全だ。


「まあ、まだ時間はある。ゆっくり考えるか」

「そうですね」


ゆっくり考えよう。まずはアンジェと相談をしてリリア殿の許可を得る。レオナルド達も巻き込んでトルクとポアラが逃げない様にしないといけないな。嫁に出す苦しみは有るがトルクならそんなに苦しくない。うむ、今日の酒は美味いな。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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