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精霊の友として  作者: 北杜
三章 伯爵家滞在編
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8

模擬戦が終わって、現在はギルド長の執務室にいる。

エイルド様、ドイル様が椅子に座って、護衛の人とオレは二人の近くで立っている。


「おぬしも座ったらどうだ」


ギルド長がオレに言うが。


「申し訳ありません、私は使用人なのでここでいいです」


男爵様のお子様達と一緒に座れるか。立場を考えてくれ。


「おぬしが使用人?なんの冗談だ」

「私は使用人です」

「そうだ、トルクは使用人だぞ」


エイルド様がフォローをするが、多分その後にろくでもない事を言うだろう。


「今は使用人だがトルクはオレと二人で世界最高の剣の達人になる使用人だ」


ほら言ったよ。こんちくしょうめ。


「違うよ、トルクは僕の右腕になる予定だよ」


だからドイル様も変な事を言わないでくれ。護衛の人とギルド長が変な顔をしているよ。


「本当に使用人なんだな」

「本当に使用人です。平民の子供です」

「平民の子供がワシに意見などしないぞ。これでもワシは伯爵領の傭兵ギルドの長じゃ。ワシに意見の出来る人間は貴族くらいしかいないぞ。いや貴族でもワシに意見をする奴は少ない」

「私が言ったのは意見ではなくて、提案ですよ」

「やかましい、エイルド様をけしかけてワシをはめよってからに」

「はめたとは人聞きが悪いですよ。良いではありませんか少ない給料で人を雇えたんですから」

「確かに雇えたが、ワシはあの二人が負けたら、ギルドを追放した振りをして極秘に他の国に行かせる予定だったんだ。その情報を元にいろんな事が分かる。その為の準備をしていたし情報の操作もしていた。それなのにおぬしが出てきて計画は潰れたわい」


そんな極秘の任務をオレ達に教えてよかったのか?それ以前にずさんな計画のような気がするし。


「極秘の任務って教えてよかったのですか。それにあの二人にそんな計画が出来るのですか?」

「多分失敗するじゃろうな」

「囮かよ、酷いな」

「そうじゃ、囮として帝国をかく乱させて本命の者から情報をもらう。それがこんなガキに計画を潰されるとは情けない」

「帝国を探るって、何かあるんですか?」

「そうじゃ、現在、帝国がまた戦争の準備をしているかもしれない。その情報が欲しかったのじゃ」

「戦争の準備ですか、ちなみに攻める場所は何処ですか?」

「現在の情報ではアイローン領地だな。あそこはいま混乱をしている。そこを攻めたら国境の砦が落ちるかもしれない」

「アイローン領地はバルム領地の隣ですよね。バルム領は大丈夫ですか?」

「バルム領の国境の砦は難攻不落として有名だ。伯爵様もいてクレイン男爵様もいる。問題はないだろう」

「ちなみにこの話は喋ってしまって良かったのでしょうか?」

「……良い訳ないだろう、何故ワシは喋ったのだ」


年のせいですよ、とは言わない。


「坊ちゃんたちもこれは内緒じゃぞ。後ろの護衛も聞かなかった事にしてくれたらありがたい。あとトルクも喋るな。喋ったら元Bランクのワシが稽古をつけてやる」


オレだけ扱いが酷いです。


「トルクずるいぞ。オレが稽古をつけてもらうから喋ってくれ」


だからエイルド様、感情で物事を言うのは止めて下さい。主にオレの為に。


「ねえ、ギルド長。父さまやお爺さまは知っているの?」

「ドイル様、伯爵様には報告はしていますが、まだ情報が少ないのです。エイルド様も後日、稽古をつけますから喋ってはなりません。で、トルクよ。おぬしは本当に使用人なんだな。貴族では無く、裕福な子供でも無いんだな」


くどいな、ギルド長も。体はただの子供なのに。


「私はクレイン男爵家の使用人です。去年から務めていまして、今回はクレイン様達と一緒に伯爵領に来ました。それ以前に住んでいた所は辺境の村です」


ギルド長がため息をついて話した。


「全く、エイルド様やドイル様が連れてきたからどこぞの貴族と思ったぞ。剣も使えて魔法も使える。頭の回転も良いし礼儀もその歳でよく出来ておる。とりあえずはあの二人はギルドの雑務をさせて強くしてみよう。その後はあいつら次第じゃな」

「そうか、さすがはギルド長だな。よくあいつらを許してくれた」


エイルド様は偉そうに言った。しかしその後が問題だった。


「ギルド長、来年までにあいつらを仕込んでくれ。来年に王都に行くがその時にオレの護衛にする」

「エイルド様、来年までに仕込むのですか?少し難しいかもしれません」

「大丈夫だ、トルクは出来るぞ。ギルド長も頑張ってくれ」


この場合の出来るは、オレは護衛も出来る事ですか?それとも一年であいつらが護衛が出来る様に鍛える事ですか?

ギルド長がオレを見るがオレは首を横に振り、エイルド様の言葉を否定する。


「私には出来ませんよ」

「大丈夫だ。オレが保証してやる」


子供の保証はいりません。どうするか考えていたらドアの方からノックが聞こえた。


「入れ」


男性の人が入って来た。


「失礼します。クレイン男爵が来られました」


いきなり保護者が来ました。エイルド様、本当に男爵様の許可を取ったのでしょうね。伯爵の許可は取って男爵の許可を取っていないとかじゃないよね。


「急に失礼するよ、ギルド長。息子たちが此処に居ると聞いてきたのだが……、トルクもやはり此処にいたか」

「お久しぶりです、クレイン様。このような所に来て頂けるとは幸いです」


ギルド長が慇懃な態度で挨拶をする。


「エイルドのランク上げにトルクは巻き込まれたようだな。」


クレイン様、その通りです。見事に巻き込まれました。


「ただいまエイルド様のランクを上げる手続きの最中です」

「では、試合に勝ったのか」

「はい、二対二の試合で見事に勝ちました」

「……少し待て、二対二だと。エイルドとトルクが戦ったのか?そして勝ったのか?」

「はい見事に勝利を治めました」

「ギルド長、トルクはランクを上げるな、ランク外にしろ。今回の模擬戦にはトルクは参加をしていない。良いな」

「ですがエイルド様と一緒に模擬戦をしてランクを上げたので、それではエイルド様もランクが上げられません」


あ、エイルド様が吃驚しているよ。いきなりランクが上がらないっていうから。


「エイルドだけランクを上げておけ。今回トルクは上げるな。バルム伯爵もそう言うはずだ」

「……わかりました。そのように処理をします」

「トルクも良いな、今回はランクを上げない」


いきなり会話を振らないで下さい。母親の問題が有るからかな?


「私は問題ありません」


簡潔に応える。男爵様も伯爵様もなにか考えが有るのだろう。子供のオレが何かを言う事ではないな。精神年齢は大人だけど。


「トルク、いいのか。ランクが上がらないんだぞ。せっかく勝ったのに」

エイルド様が口を出してくる。

「後日、ランクを上げれば良いですよ。私は大丈夫です」

「しかしだな」

「エイルド様が先にランクを上げておいてください。私も後を追いますから。クレイン様の許可が下りればランクを上げる事が出来ると思いますから」


うーん、困った。エイルド様が納得していないようだな。こうなったら。


「それよりも、エイルド様のランクが上がったお祝いをしないといけませんね。クレイン様、何がいいでしょうか?」


秘技、話題そらし。子供にはこれが一番だ。


「そうだな、何がいいかな。そうだトルク、何か作ってくれないか?」

「では、食後のデザートでも作りましょうか」

「ハンバーグを作ってくれ。義父上と義母上にも食べさせたいからな」

「僕もハンバーグがいい」

「オレもだ。ハンバーグ大盛りな」


エイルド様もドイル様も乗ってきた。


「ギルド長。エイルドの身分証のランクの変更はまだかかるか?」

「丁度、終わったところです」


いつの間にはテーブルの上にはカードがあった。全然気づかなかったよ。クレイン様がカードを取り確認をしてエイルド様に渡す。


「エイルド、お前のカードだ。受け取れ」

「ありがとうございます、父上。これでオレもGランクだ」

「お兄さま、おめでとうございます」

「エイルド様、おめでとうございます」


ドイル様、護衛の人達、ギルド長が祝福の言葉を送る。


「エイルド様、Gランクおめでとうございます。ハンバーグ大盛りですね。腕によりをかけますよ」


オレも言葉を送り祝福する。帰ったら料理を頑張るか。


「ではみんな帰るか、ギルド長、今回は急に来てすまなかったな」


男爵様がギルド長に挨拶をして、立ち上がる。


「いえいえ、クレイン様もまたランク上げにお越しください。お待ちしております」


クレイン様達が部屋を出るときにオレはギルド長に呼ばれた。


「トルク、おぬしもまたランク上げに来い。許可が下りたら模擬戦なしでランクをあげるからな」

「いいのですか?」

「問題ない。ワシの権限なら大丈夫じゃ。楽しみに待っておるぞ」

「ありがとうございます」

「なに、別に良い。その時はワシが稽古をつけてやるからの」


……ランクを上げなくてもいいように思えてきた。



誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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