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現在、傭兵ギルドの訓練施設の会場にいます。オレの隣にはエイルド様。向かいには本日、戦う人達がいます。
年齢はオレ達よりも上、子供以上大人未満の青年が二人。武器は木刀と盾を持っている。
一方でオレ達は木刀のみで戦う。
「それでは、模擬戦を開始する」
少し前に戻る。
ギルドの受付でオレは呆然とした。オレも模擬戦に参加する事になったのだ。
「待ってください。オレは身分証を持っていないですよ。第一、まだ模擬戦をするとは言っていないですが」
どうにかして模擬戦を回避しよう。
「大丈夫だ、オレの身分証で問題ない。お前は立っているだけで大丈夫だ。オレ一人で戦うからな」
「しかしですね」
「トルク、頑張ってね」
ドイル様の純粋な視線が痛いよ。模擬戦の回避は諦めよう。悲しい。
「では会場に向かうかの」
ギルド長の案内で外の試合会場にみんなで向かう。
外の試合会場には二人の男が待っていた。
「遅いぞ、オレ達は急いでいるんだ。なんでギルド長が案内をしているんだよ」
「なに、偶にはいいじゃろう」
「で、対戦相手はそこのガキ共か」
オレ達を見てニヤリとした。
「お前達も運が無いな、オレ達と当たるなんて」
馬鹿にしている様だな。子供だから楽勝と思っているのだろう。その通りだよ。
「なあ、ギルド長。今回はこんな弱い奴なのか?これならオレ一人で大丈夫だろう」
あ、エイルド様が挑発している。いやこれは天然だな。素で話しているよ。オレ達は子供で弱いんですよ。挑発なんてしないで下さい。
「なんで、こんな奴が対戦相手なんだ?去年はもっと強かったよな。対戦相手を間違っているのか?」
「このガキ」
「第一、その歳でランク外の試合だろう。こいつら何をしたんだ?」
「こいつらは魔獣を倒す依頼で失敗したのじゃ、ただの失敗ならまだいいが、一緒に依頼を受けていたギルドの人間を置いて逃げたのじゃ」
「なんだ、腰抜けか」
エイルド様、そろそろ挑発を止めないかな。
「違うだろう、原因はギルドの依頼が間違っていたんだ。キチンとした情報が無かったからオレ達は準備が出来なかったんだよ。いったん撤退して態勢を立て直して挑むつもりだったのに、他の奴らが邪魔をしたんだ」
「そうだ、オレ達のいう事を聞いていれば問題なかったんだよ」
「じゃが、お前たちが逃げた間に他の者が魔獣を倒して依頼は終了したんだ。お前たちが逃げたのは間違いない」
「しかし」
「やかましい、お前たちは依頼を失敗したのじゃ。その前の依頼も失敗したくせに。お前たちは失敗が多すぎるのじゃ。今回の模擬戦で負けたらギルドから追放も考えている。覚悟を決めろ」
なんだか対戦相手はチンピラっぽいよな。でもギルドに所属していた奴だよね。なんでそんな奴が対戦相手?
「すみません、ギルド長。対戦相手の人はギルドに所属していたんですよね。元のランクは何だったのですか?」
少し疑問に思ったので聞いてみる。
「Gランクだ。ランク外の一つ上だな」
もともとGランクの人間だったのか。ヘマしてランク外に落とされて負けたらギルド追放とは情けないな。
「確かにこいつらはGランクだったがFに近いGランクだった。最初の頃は真面目に仕事をしていたがサボリ癖がついてからは仕事に失敗ばかりしている」
G?F?など呟いていたら、ドイル様が説明をした。
「ランクには一番下がGからはじまってF・E・D・C・B・Aと段々高くなって一番上がSランクだよ」
「私達、バルム伯爵領の護衛はEランクやDランクが多いです。バルム伯爵様、ウィール男爵様はAに近いBランクです」
ドイル様、護衛の人説明ありがとう。二人とも結構、強いのかな?
なんにせよ、オレとエイルド様でこの二人を倒さないといけないのか。面倒くさいな。
「早速、試合を始めるか。二人を倒してGランクになるぞ。トルクこれがオレ達、冒険の最初の一歩だ」
いえ、オレは冒険とかしませんよ。堅実に生きたいです。
「ダメですよ、お兄様。トルクは僕の名前で騎士に任命をするんですよ」
ちなみに貴族の名前で騎士に任命をする事は、その人に忠誠を誓う事になる。
ドイル様、そんな事を言うのは止めて下さい。ただでさえ母親の件や妹の件、男爵様が騎士爵をどうとか言っているんですよ。
「ホホホ、そろそろ始めるかの。ルールは降参・気絶もしくは戦闘不能になったら負け。急所の攻撃は止める様に」
「質問があります。魔法は使っていいのですか?」
オレは質問をする。オレは剣の才能が無いので魔法で隙を作るしかない。
「おや、魔法が使えるのか。魔法も有りだ」
よし、魔法が使えるなら何とかなるかもしれない。勝率が少し上がったぞ。
相手が武器を構えて臨戦態勢になる。
「トルク、オレに任せろ。オレが二人を倒してやるから見てろよ」
エイルド様も準備万全の様だ。オレも剣を構えて模擬戦に集中する。
「それでは、模擬戦を開始する、開始」
開始の合図でいきなりエイルド様が二人に向かっていった。相手の二人は左右に分かれてエイルド様を迎え撃つ様だ。エイルド様が右側の相手に攻撃をするときに、オレは土魔法で左側の相手を土壁で動きと視界を遮る。相手の戦闘力を分断して一対一にする。エイルド様を見ると果敢に攻めているが相手は防御が上手い。
おっと、左側の相手が土壁の横から出てくる。その隙に落とし穴を仕掛けた。落とし穴に落ちた左の方はこれで時間が稼げる。オレもエイルド様の援護に向かうために相手の方に走った。これで二対一になる。
相手はオレが向かってくるから不利な状態と思って防御から一転、攻撃を始めた。雑な攻撃はエイルド様には効かないぞ。
雑な攻撃を避けられ続けて、エイルド様に大振りの一撃を当てようとするが、その隙にエイルド様が胴を一閃、腹を叩く。そして頭を叩いて右側は気絶で戦闘不能。
左側の相手も落とし穴から這い上がり、相棒を見るが丁度、頭を叩かれて気絶されられてた。その後オレとエイルド様で左の相手に攻撃を仕掛ける。エイルド様が武器を持っている腕を叩いて武器を落として相手の顔に武器を向ける。
「勝負あり」
ギルド長の言葉で模擬戦が終わった。一人は気絶でもう一人は戦闘不能でオレ達の勝ちだ。
「まて、オレ達はまだ負けていない。オレはまだやれるぞ」
「武器を落として何を言っているんだ。決着はついておる。お前たちの負けだ」
「インチキだ。そっちのガキの魔法でオレはいつもの力を出せなかった。この勝負は無効だ」
やっぱり、イチャモンつけてきたか。言うと思っていたけど。オレの魔法は卑怯な手だからな。
「馬鹿者が。お前達も先に魔法が使える子供から叩けばよかっただろう。相手が魔法を使う事は試合前から知っていたのだ。先に魔法使いを倒すのは初歩の戦術だろう。そうでなくても一対一の戦闘に持ち込めたら勝率が上がっただろうに。何も考えずに戦った結果がこのざまだ」
エイルド様も何も考えずに戦ったと思うのはオレだけでしょうか。
「お前たちはギルドから追放だ。これは決定だ」
力なく膝をつく相手の人。運が悪かったな。オレはギルド長を見て言った。
「今回は二対二で戦ったのでこの結果になりましたが、相手が一対一だったら勝負は負けていたでしょう。そうなるとギルドの追放は無かったと思います。彼らには他の事で、模擬戦で戦う事ではない試験をしてみたらどうでしょうか」
ギルド長がオレを見た。ニヤリと笑いながら。
「ではどんな試験をする?こいつらはサボリ癖のある奴らだし、金も無い。他の人間からの評判も低い奴らだ」
そこまでの奴だったのか。オレは少し考えて言った。
「傭兵ギルドの仕事なんてどうでしょうか?ギルドの仕事内容を覚えさせて、自分たちが仲介した依頼を失敗させない様にします」
自分達が依頼を傭兵に仲介して失敗させないようにする。その依頼を考えて失敗する要素を少なくすれば良いと思う。その結果、責任感が生まれるかもしれない。
「面白い考えじゃ。だが失敗したらだれの責任になる?」
「それはギルドの責任ではないのですか?傭兵ギルドの全員がキチンと対応をすれば失敗する確率は少ないと思いますよ」
沈黙が続く。最後の責任はギルド長です。一番偉い人は責任を取る為にある。
「私は提案をしただけです。決めるのはギルド長と対戦相手ですよ」
……まだ沈黙が続く。オレの言った言葉を考えているようだ。
「それにこんな奴らを傭兵ギルドが雇うと思うか。ある意味、犯罪者一歩手前の奴だぞ。ギルドの評判が落ちるかもしれない。追放した方がギルドの為になるだろ」
「追放して賊になって、周りに迷惑を掛けてギルドに討伐される。最終的にギルドが追放をしたから責任を取れと言われるかもしれませんね」
「こいつらなら賊になりそうだな。だが責任は賊になった奴だ。ギルドではないぞ」
「確かに賊になった奴が悪いですが、被害者はどうでしょうか?金を奪われ、荷物を奪われ、怪我をしたり身内を殺された被害者はどう思うか」
いつの間にか周りに人が集まってきた。みんな真剣に話を聞いている。ヤバい、目立っているよ。どうにか話を替えようと考えていたら対戦者の人がギルド長に言う。
「ギルド長、頼む。オレ達を雇ってくれ。雑用でもなんでもする。これ以上落ちるのは嫌だ。このガキが提案した事をする。頼むよ、オレには此処にしか居場所が無いんだ。帰る所は無いし親もいない。ここでギルドを追放されたらオレ達は死んじまう」
対戦者の人がギルド長に話している間にオレはエイルド様の所に行った。そして小声で。
「さあ、エイルド様。対戦者の二人を許してあげましょう。男として戦った相手を許すのです。エイルド様が二人を助けたら皆に噂にされますよ。弱者を助けた強い者として」
エイルド様に言った。男として戦った、弱者を助けた強い者という言葉が良かったのか笑顔でギルド長の側に行った。ドイル様、護衛の方々がオレを見ているが気にしない。最後は偉い人の言葉がいいよね。
「ギルド長、二人を許したらどうだ。二人のお陰で勝ったんだ。私の初めての対戦相手だ。許してやってもいいだろう」
「しかしですね……。わかりました。二人を雇いましょう」
エイルド様に話をかけられたギルド長は、ドイル様の所に移動したオレを見て、苦笑いしながら許可を出した。
「今からお前たちはギルドの預かりになる。一から教えるからいう事を聞け。絶対に反論をするな」
対戦者二人に言ったあと、エイルド様にも言う。
「今からこの二人はギルドで雇い立派な人間になるでしょう。エイルド様と戦った者として」
「うん、頼むぞギルド長」
そして、ギルド長はドイル様の所ではなくオレの所に向かってくる。オレがエイルド様を唆したのがバレたかな。
「さてと、トルクだったかな。今回は良い方法を教えてくれて感謝するぞ」
頭に手をのせて話す。頭を撫でるけど力が入っていて頭が痛いです。怪我人ですよオレは。
「いえいえ、これもエイルド様やギルドの為ですよ。頑張ってくださいギルド長」
頭が痛いです。これは撫でるではなく潰すではないですか。ニコニコ笑っているが目が笑っていないよ。
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