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男爵様達の話し合いが終わって部屋を出てきました。伯爵様と男爵様はまだ話すことがあるようなのでオレとレオナルド様は部屋から出ました。レオナルド様も用事が有ると言って廊下で別れて現在、オレ一人です。
一人で何をしようか考えているとエイルド様とドイル様がこちらに向かってくる。
「トルク、話は終わったか?」
「エイルド様。先程、話は終わりました」
「よし、では遊びに行くぞ。この街の傭兵ギルドに行こう」
……傭兵ギルド?なんぞや?
「大丈夫だよ、護衛の兵隊さんと一緒に行くから」
ドイル様も遊びに行く気満々ですね。二人がオレの手を取って玄関に向かう。玄関の外には護衛の人と馬車が待っていた。
「ちなみにクレイン様、もしくはアンジェ様の許可は取りましたか?」
「大丈夫だ、お爺様の許可がある」
「お爺様が馬車の用意をしてくれたんだよ」
伯爵様が許可をしたならいいのかな。三人で馬車に乗り出発をする。コトコトと馬車に乗りながらエイルド様に聞いた。
「エイルド様、傭兵ギルドってなんですか?」
「トルクは知らないのか?傭兵ギルドは魔獣を倒す組織だ」
そういえば魔獣っていたっけ。叔父さんが魔獣に殺されそうになったんだ。
「男爵領には傭兵ギルドは無いけど伯爵領みたいに大きい街にはあるんだ。傭兵ギルドでは魔獣を倒す以外にも戦争に参加したり、町の厄介事を片づけたり、盗賊を倒したりしているんだ」
へー、結構いろんな事をやっているんだな。
「それでどうして傭兵ギルドに行くのですか?」
「もちろん、傭兵ギルドに行って模擬戦に参加してランクを上げるんだ」
え、模擬戦に参加?ランク?
「傭兵ギルドでは訓練場では模擬戦が出来るんだよ。試合や模擬戦の結果でランク順が変るんだ。ランクが高い人ほど強くて、低い人は弱いんだよ」
ドイル様、解説ありがとうございます。
「ランクは傭兵の他にも騎士や貴族にも強さのランクがあるからな。強い騎士や傭兵になるにはランクを上げないとダメだ」
「お父様もお爺様もランクを持っているんだよ、それに護衛の人達もランクを持っているよ」
この世界には強さのランクが有るのか、初めて知ったよ。
「エイルド様のランクはどのくらいですか?」
「これだ」
エイルド様がカードみたいな物を渡す。どれどれ、名前が書いてありランクはっと……ランク外としか書いてないよ。
「えーと、ランク外としか書いてないですね」
「オレも去年、模擬戦に参加したけど負けたからランク外だ。今回こそは模擬戦に勝ってランクを上げんだ。だからトルクもやるぞ」
やっぱり、オレも参加ですか?
「すみませんが、まだ体調が悪くて今回は参加できません」
まだ、顔に怪我があるから模擬戦は辞退する。背中や腹は治ったけどまだ顔の腫れが引いてないんだよな。魔法で一気に治すとヤバそうだし。
「そういえばこのカードはなんですか?身分証ですか?」
「そうだ、トルクは持っていないのか?基本的にみんな持っているはずだが」
「私は持っていないですね、母親が持っているかもしれないです。まあ、今まで使ったことがないから別に良いですけど」
護衛の人が口を出してきた。
「トルク殿、身分証は街に入る為の許可証になります。他にも犯罪履歴があると身分証で分かるのです。身分証にはランク以外にもいろんな情報が載っているのですよ」
へーそうなん。今回、街にはクレイン様達と一緒に入ったから許可証が要らなかったのかな?しかしこの身分証は金属なのかな?何の素材で作っているんだろう。しかしこれを見れば個人情報ただ漏れだな。
そんな話をしていると傭兵ギルドに着いたようだ。結構でかい建物だな。建物の中から気合の入った声と悲鳴と怒声が聞こえてくる。
なかなか過激な所の様だ。
エイルド様、ドイル様、護衛の人達と一緒に建物の中に入る。入ってすぐの所に受付みたいな所があるようだ。護衛の人が受付の人に言った。
「先日、予約をしたバルム家の者だ。ランクを上げるための模擬戦に参加したい」
「はい、ではこちらに記入をお願いします」
何か書いているな。ドイル様に聞いたらエイルド様の身分証とランクの順位を書いて、同じ位のランクの人と対戦をするらしい。ランク外だけど。
しかし年下の子供に聞くなんて情けないな。これからは世間の事も勉強をしなければいけないな。おや、年配の男の人がこっちに来る。
「お久しぶりですな、エイルド様」
「久しぶりだな、ギルド長。今日こそは勝ってランクを上げてやるぞ」
「ははは、頑張ってください。しかし我がギルドは子供に負ける人間はいませんぞ」
「大丈夫だ、この一年特訓をしたんだ。今度こそは勝ってやるぞ」
「ギルド長、僕も参加をするよ」
ドイル様も模擬戦に参加するのですか?まだ剣の鍛錬はしていませんよね。
「いやいや、ドイル様はまだ年齢が足りませんよ。ギルドの登録は来年ですね。そちらの顔に怪我をしている子供はどうしますか?」
「もちろん、参加するぞ」
だからエイルド様、勝手に決めないで下さい。怪我をしているのですよ。
「すいませんが、まだ怪我をしていて今回は辞退します」
「だが、今回の模擬戦は二対二の模擬戦じゃぞ。参加しなければエイルド様の負けじゃ」
「護衛の人に頼みましょう。お願いします」
「エイルド様と同じ位の年齢でランク外の者は護衛におるか?」
皆さん、オレを見る。はめられたようだ。
……エイルド様、だからオレを此処につれてきたんですね。エイルド様を見るとニッコリ笑って頷いている。
「大丈夫だ、トルク。オレが二人まとめて倒してやるから」
オレの強制参加が決まりました。下人のときも自由が無かったが、使用人でも自由は無いのか。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




