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精霊の友として  作者: 北杜
二章 下人編
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10

冬が終わり春の訪れを感じます。澄み切った青空に気持ちいい風。今日は旅行日和です。

現在、オレは男爵様ご家族と一緒に旅行に出かけています。

男爵家、恒例の旅行です。行先はバルム領地、アンジェ様の実家です。アンジェ様はバルム伯爵家からウィール男爵に嫁いだ方で毎年、家族みんなで一緒に里帰りをしている。旅行には男爵家の皆さんと周りを世話するメイドさん、安全に旅行が出来るように男爵家の兵隊さんとオレが参加をしている。

レオナルド様は男爵領地内の見回りで後でオレ達と伯爵家で合流する予定だ。

ダミアンさんは領地で留守番だ。オレも留守番の方が良かった。留守番をしていたら子供達の相手をしなくていいから。

旅行の行程は三日くらいでアンジェ様の実家に着く。クレイン様は馬に乗っているが奥様と子供達は一台目の馬車に乗って向かう。二台目の馬車にはメイドさん達が乗っていて三台目は荷物が置いてある馬車だ。オレは兵隊さんと一緒に後ろの方を歩いている。良い天気だな。休みたかったなー。

順調に街道を歩き続けて周りが見渡せる場所に着く。どうやら此処が今日の野営地の様だ。兵隊さんは野営の支度と周辺の警備、メイドさんは男爵家族の世話をしている。オレの仕事は。


「トルク、夕食の支度を頼むぞ」


夕食の支度に精を出す。今日はバーベキューでもしようかな。土魔法でかまどを作ってそこで肉と野菜を焼こう。いや~魔法って便利だな。

かまどを作りながら思ったが、鉄板焼きのようなかまどになった。まぁいいか。


「今日の夕食はなんだ?」


おや、エイルド様が様子を見に来たぞ。


「今日はバーベキューですよ、このかまどの上で肉や野菜を焼いたりして食べます」

「ほう、旨そうだな。今回の野営は旨い夕食が食べれそうだ。期待しているぞ」


クレイン様も様子を見物にきたよ、火を付けてかまどを温める。あれ、ドイル様も来た。


「料理を作るところを見るのは初めてだよ」

「あまり面白いものではないですよ、ドイル様も危ないから少し下がってください」


さて、料理を始めるか、メイドさん達に手伝ってもらおう。


「すいません、そろそろ食材を切るのを手伝ってください」


メイドさん達に肉や野菜を切ってもらいながら食材の焼き係になり始めようとするが。


「夕食はまだ?」

「あら、今日の夕食は作るところを見れるのね」


ポアラ様、奥様も見物に来た。みんなで来なくてもいいじゃないか。かまどの近くは危ないぞ。仕方がないから、かまどの近くに土魔法でテーブルと丸椅子を作る。


「皆さん、ここに座っていてください。かまどの近くは危ないので、座って見てください。出来上がったらテーブルに持って行きますので」


男爵一家をテーブルに座らせて食材の焼きに入る。そういえば前世でもバーベキューのときは焼き係だった様な気がする。鍋奉行・焼き奉行などよくやっていたな。

そんな事を考えながら肉を焼き皿に盛り付けをしてソースをかける。よし完成。メイドさんに持って行ってもらう。お替り分の肉を焼くか。

兵隊さんやメイドさんの分の食事を作りやっと一息ついた。そういえば鉄板焼きのように肉を焼いていたから、お好み焼きも出来るかな?

小麦粉を水で混ぜて貰って刻んだ野菜、肉を入れる。かき混ぜたらかまどに乗せて焼いてみる。肉を焼いていた場所だから油を引かなくてもいいみたいだ。おや、いけそうかな。生地をひっくり返して焼き具合を確認しつつ焼き加減を調節する。


「お!なんだ?その丸いやつは」


エイルド様はよく見てますね。満腹ではないのですか?


「私の夕食分ですよ、小麦粉を水で練って中に野菜と肉を入れて焼いています。初めて作る料理ですから味はわかりませんよ」


初めて作る料理と言う言葉に全員が一斉にこちらを向いた。


ビク、と吃驚した。なんでいきなりこっちを見るんだ?


「トルク、オレにも食べさせてくれ」

「オレもだ」

「私も食べてみたい」

「私達にもください」


全員が催促をしてきた。オレの夕食分ですよ。まずいかもしれませんよ。


「まだ、出来上がってないし、味見もしていないので味見だけはさせて下さい」


焼き上がりソースをかけて食べてみる。やはり、何か物足りない。オレが作る料理は一味足りない。


「一味足りない料理です。あまり旨くありませんよ。これを味見してみますか?」


兵隊さんの一人とメイドさんの一人がオレの作ったお好み焼きもどきを食べる。


「トルク、オレの夕食はこれで頼む」

「トルク、私もこれをお願いするわ」

「あまり旨くはないと思いますけど、いいんですか?」

「オレ達の分はこれを作ってくれ、頼む」

「私たちもこれを二枚作って。みんなで分けて食べるから」

「なら私も一枚作ってくれ」

「オレも一枚作ってくれ」

「私とポアラとドイルは三人で一枚を食べましょう」


何故にして旨くないお好み焼きもどきを注文するのだろうか。また仕込みからはじめて焼くのか。

メイドさんに手伝ってもらってお好み焼きもどきを作る。

そういえばオレはまだ夕食を終えてないぞ。




次の日、朝起きて朝食を準備する。今日の献立はホットケーキです。これは男爵家でも作ったことがある人気の一品です。

食事を終えて野営の後片付けをして出発。

そろそろエイルド様が馬車の旅に飽きて何か言ってくるかもしれない。


「トルク、馬車の移動は暇だから何かないか?」


ほら来た。オレにどうしろと言うんだよ。


「えーと、暇だから何か暇つぶしになるものですか?うーん、私には何も思いつかないです」

「暇なんだよ、何かないか?」

「確かに暇、馬車では揺れて本も読めない」

「暇だよね」


子供だから仕方ないか。とはいってもオレも何も思いつかないし、奥様さまはニコニコしながらオレを見ているし……。


「……分かりました。それでは物語を語りましょう。これは他の国の物語です。正義を助け、悪を挫く、暴れん坊な王様の物語です」


以下ダイジェクトでお送りします。


騎士様が女性を助ける。

「助けてくれてありがとうございます、お名前を頂戴できますか?」

「私は騎士爵の三男坊だ。シンノスーケだ。今回の騒動は一体どうしたのだ?」

「はい、私は嫌がらせを受けていまして……」


前略。

密談をしている二人。

「子爵様、今回もありがとうございます。これはお礼です。黄金色の果物でございます。どうぞお収め下さい」

子爵様に箱一杯に入った金貨を渡す。

「ふふふ、お主も悪よのう」

「いえいえ、子爵様の御助けがあってこそです」


中略。

悪人の屋敷にて。

「何者だ」

「無礼者め、余の顔を見忘れたか」

「こ、これは王様、なぜこのような場所に」

「お前の悪事を見せてもらったぞ、罪なき平民に罪を負わせ、そこの商人と悪事を働いた。お前の罪は明白である」

「このような場所に王様は来られるはずがない。この者は偽物だ。殺せ」

家来がいっせいに出で来る。


戦闘シーン。

「成敗」

「ぐわー」

「ぐわー」

「王様とは知らず申し訳ございません」

「私の事は秘密に頼むぞ」


エピローグ

「王様、また街に出ましたね」

「すまない、大臣よ。平民を助ける為に仕方がなかったのだ」

「確かに子爵の罪は大きいですが国王様みずからする事ではありませんよ。それよりも溜まった政務をしてください」

「私は罪なき者を助ける為に王になったのだ」

「政務をしてください。あと早く結婚をしてください。王の務めですよ」

「あ、用事を思い出した。またな」

「王様~」

以上。


「かっこいいな、王様」

「すごーい」

「面白かった」


子供達の反響はいいみたいです。見ててよかった時代劇。


「では次の話です。題名は「親子の涙、遭難者を救え」です」


子供達に物語を聞かせる、みんな真剣に聞いているよ。話を終えた時には次の宿泊する町についた。

今回は町の宿屋に泊まる事になり、オレは料理番をしなくていい事になっている。男爵家族と侍女たちは宿屋に泊まり男たち兵隊は護衛で宿屋と

馬車の見張りをする。三交代で見張りをする事になっていてオレは最初の見張りをして交代をして直に眠りについた。




次の日に目覚めたら激しく雨が降っている。他の兵隊さんに聞いたがこの時期の雨は珍しく、雨で出発が出来ないので今日はこの宿屋で一日を過ごす事になるのだが。


「トルク、暇だ。何かないか?」


出ました。エイルド様の「暇だ」の言葉。

宿屋の男爵家族の部屋に呼ばれて来てみればそれかよ。


「分かりました、勉強をしましょう」

「勉強以外で何かないか?」

「勉強以外の暇つぶし希望」


ポアラ様も参加してきた。


「何して遊ぶの?」


ドイル様も参加してきた。ポアラ様もドイル様も暇をしている様だ。

しかし暇つぶしか……。部屋を見渡すとクレイン様とアンジェ様もお茶をしているが興味があるのかこっちを見ている。

うーん、何をしようかな。周りを見渡すと机の上に紙と羽ペンがある。双六でも作るかな。ダイスになりそうなモノを考える。お金で代用してみるか。


「クレイン様、机の紙を使っていいですか?あとお金の銅貨を六枚ほど貸してもらっていいですか」

「紙は使っていいぞ。後、銅貨は何に使う?」

「遊びで使います」


机に座って紙に双六ゲームを作る。スタートからゴールまで三十マス位で作って、一回休む、三マス進む、三マス戻る、よし書き終わった。後は銅貨と皿を借りて完成。


「では、双六ゲームをはじめます。ルールはスタートから出発です。六枚の銅貨をお皿に投げて表の数だけ進みます。お皿から出た銅貨は無効です。仮に銅貨の表が三枚だったら三マス進みます。そしてそのマスに書いてある所に止まるとその通りにします。一回休みなら順番が来ても一回休み。三マス進むなら銅貨の出と関係なく三マス進む。一番早くゴールに着いた人が勝ちです。まずはやってみましょう」


エイルド様、ポアラ様、ドイル様とオレで双六を始める。クレイン様とアンジェ様は双六を見ている。

一回目の結果、一位ドイル様、二位オレ、三位ポアラ様、四位エイルド様。


「もう一回だ、今度こそ一番最初にゴールをするぞ」


二回目の結果、一位ドイル様、二位ポアラ様、三位オレ、四位エイルド様。


「やり方は分かった。次こそは一位だ」


三回目の結果、一位ドイル様、二位ポアラ様、三位エイルド様、四位オレ。

接待ゲームで何とかエイルド様を三位にしました。ドイル様がずっと一位だよ、絶対に休みや戻るマスに入らない。すごいな。


「私達も参加しようかな」


クレイン様とアンジェ様も参加をしてきた。


「それでは、双六のマスを作り直します。そうだ!みんなで作ったマスでゲームをしませんか?」


子供たちに一枚ずつ紙を渡して双六のマスを作ってもらう。三人共、一生懸命マスを作っている。


「トルク、これは貴方が考えたの?」

「いえ、どこかの書物に載っていたのを参考にして作りました」


男爵夫婦は双六ゲームを知らないみたいだ。この世界には双六は無いのか。この世界の常識が分からない。その内、下手を打ちそうだ。


「出来たぞ」


エイルド様の紙はマスを見ると1回休みと進むが多い。


「出来た」


ポアラ様の紙は六が出ればゴール。それ以外はスタートに戻る。


「出来たよ」


ドイル様の紙はオレが作ったのに似ている。

男爵家族とオレで双六を開始する。オレは接待ゲームだ。社会人は大変だよ。

そして一位がドイル様だったよ。なんて運だよ。

今日は一日、双六ゲームで暇を潰した。



誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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