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精霊の友として  作者: 北杜
二章 下人編
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6

今日の勉強時間が終わり子供達は自由時間になりました。これで子守の時間は終わりです。次の仕事に取り掛かる予定ですが……、次の仕事内容はなんだろう?

廊下でボケっと考えていると、エイルド様がこちらにやってきた。


「トルク、庭で遊ぶぞ。ついてこい」

「申し訳ありません、今から仕事ですから無理です」

「安心しろ、オレが父上に伝えておくから。さあ行くぞ」


下人のオレには拒否権は有りません。エイルド様についてくが何処に行くのだろうか?庭に行くって言っていたが、オレはエイルド様の後をついていくと何故か後ろからポアラ様までついてくる。


「ポアラ様、エイルド様は何処に向かっているのでしょうか?」

「多分、鍛錬場だと思う」


……鍛錬場。また模擬戦でもするのかな?

鍛錬場に着いたら兵隊さん達が訓練をしていた。おやレオナルド様もいらっしゃる。レオナルドさんは文官ではなかったのか?


「レオナルド、トルクに剣を貸してくれ、トルク約束通りに剣の基礎を教えてやるぞ、まずは素振りの仕方だ」


……約束。確かに素振りから教えてくれって言ったがそれは模擬戦から逃げるためであって本気ではないよ。レオナルド様から木刀を借りて素振りを開始する。剣道の素振りだが大丈夫かな?


「ほう、トルクは剣も使えるのか?なかなか様になっているな」

「こいつは才能が有るぞ、オレに勝ったのだからな」


卑怯な手を使って勝ちを拾いましたが剣の才能はありませんよ。


「しかし、エイルド様やポアラ様と親しくなれたようだな。どうだ、二人の勉強は?」


素振りを止めて今回の勉強内容をレオナルド様に伝える。


「えー、エイルド様ですが初日から逃げられましたが、説得してなんとか勉強をしてくれる様になりました。勉強する事で剣術が上手くなると洗脳して勉強に参加させています。勉強に剣術を結び付けたら上手く勉強をしてくれますので勉強方法の変更をしたら良いでしょう。ポアラ様はダンスの時間に逃げられましたが、何とか授業に参加をしていただけました。ポアラ様のダンスは女性がリードをしたら上手く踊れます。多分ですが主体をポアラ様にすれば良い結果を生むのでないかと思います。ポアラ様が進んでやることは上手く出来て、相手が主としている事は苦手ではないのでしょうか?」

「……確かにポアラ様は得意な分野は自分で進んでする。苦手な分野は他人に合わせる事が多いな。エイルド様は確かに剣術の事しか考えないがそれではいけない。男爵家を継ぐのだからな」

「大丈夫、私が爵位を継げば良い」


ポアラ様から意外な言葉が出てきた。


「ダメですよ、ポアラ様。この国の女性には爵位は継げません」

「でも兄上に任せたら男爵家は没落するかもしれない」


……確かに剣術バカの脳筋候補生に任せたら駄目な気がするな。


「しかし将来の事はまだわかりません。これからエイルド様も跡継ぎの自覚が出てきますよ。トルク頼んだぞ」


そこでオレに振るかレオナルド様。オレでも無理です。仕事の範囲外です。


「大丈夫、トルクは私の味方。だから私を次の男爵にさせる事」


ポアラ様、私にそんな事は出来ません。そして味方って何時なったのでしょうか?


「何をしているトルク。もう素振りが終わったのなら今度は模擬戦だぞ。今度は負けないからな」


脳筋候補生を真人間に更生して男爵家を継がせる事もオレの仕事に入っているのでしょうか?オレには無理です。あと模擬戦は回避出来ませんか?

エイルド様と模擬戦をしているとダミアンさんが鍛錬場にオレを探しに来て模擬戦は終わった。これから仕事があるのでダミアンさんの手伝いをする。模擬戦で何回か打たれた所が痛いので人に見つからないように回復魔法で治す。体の疲れと痛みが引いていく。疲労の回復にも使えるとは出来るな、回復魔法。

次の仕事はダミアンさんと一緒に掃除をする。はたきで埃を落としたり、窓の掃除をして綺麗にする、床のゴミを集めて捨てる等々をダミアンさんに教わりながら掃除をする。何事も無く掃除が出来た。今度からは一人で指定された場所を掃除する事になった。

掃除をしていたらあっという間に夕方になった。オレはダミアンさんについて行き今度の仕事は夕食事の配膳の仕事をする。もちろんオレだけではなくダミアンさんとメイドさん達と一緒に支度をした。

今から男爵家族のみんなが夕食をとるので、男爵様専用食堂でみんなが集まり食事をとる。配膳の仕方が分からないので今回は見るだけだ。オレはダミアンさんの側で配膳の仕方等を見て覚える。

配膳が終わり男爵様達は夕食を食べる。食事中にクレイン様やアンジェ様は子供達に今日の出来事を聞いている。アンジェ様がポアラ様の勉強の事を聞いたり、クレイン様がエイルド様やドイル様に今日の出来事を聞いたりしている。


「今日はトルクが居たからとても楽しかった。お父様、今はトルクに剣術を教えています。結構筋が良いとレオナルドも言っていました」

「ほう、勉強だけではなく剣術の腕も良いのか。トルクに剣術を習わせても良いと思うがどうだろうか?」


クレイン様が側にいたダミアンさんとオレの方に話しかける。頼むダミアンさん、止めさせてくれ。これ以上仕事を増やしたくない。


「良いことだと思われます。しかしトルクにも仕事がありますので毎日は無理でしょう、せめて三日に一回位ではないでしょうか?」

「それくらいなら良いだろう。良いかトルク」

「分かりました。よろしくお願いします」

としか言えないよ。ちくしょー。エイルド様との模擬戦は大変なんだよ。木刀だから当たると痛いしキツイし。


「お父様、トルクは魔法が得意と聞いた。一緒に魔法の勉強をさせてほしい」


……今度はポアラ様か。


「ふむ、三日に一回で大丈夫か?」

「これ以上は無理でしょう、他の仕事に差し障ります」

「だが、レオナルドもトルクを使いたいと言っているがどうする?」

「トルクの仕事が減ります。これ以上は無理かと」

「ではエイルド、ポアラ、レオナルドで使うか」


元々オレには拒否権は無いですけど、少しくらいはオレにも都合を聞いてください。


「あらあら、トルクはモテモテね。私もドイルの事を頼もうとしたけどこれでは無理かしら」


奥様、これ以上は無理です。勘弁して下さい。

食事が終わりオレとダミアンさんはクレイン様に呼ばれ執務室に向かう。

執務室にはクレイン様とレオナルド様がいる。オレの今後の予定の話し合いかな?今度は何をさせるのか。


「今日の勉強の事は教師に聞いたがあまり要領を得ない。トルク、なんでエイルドとポアラは勉強から逃げ出したのに勉強に参加するようになったのだ?」

うーん……、何て言えば良いのだろうが?とりあえずはエイルド様の事を言おう。


「まず、エイルド様ですが、頭を使う事が苦手で体を使う事が得意で剣術が好きな方です。エイルド様は将来は剣で生きていくと言う位に剣が好きな方です。ですから勉強をする事で剣術が強くなると騙しました。歴史の勉強をするのは過去の剣術の強い人の事が分かる、地理を勉強することによってその土地の強い人がいる場所が分かる、計算もする事で相手の攻撃のパターンが分かったりして攻撃の際に有利になる、ダンスを習うことによって足運びが上手くなる等々を言って授業に参加をさせました」


……皆さん何も喋りません。

「ポアラ様ですが、ダンスの授業で逃げ出した理由は上手く踊れないとの事ですが、実際には上手く踊れています。上手く踊れない理由はポアラ様がリードされて踊る事で、相手に合わせて踊る事が出来ないのです。ポアラ様は相手に合わせるのが苦手だと思います。他の事も相手に合わせるのは苦手ではないでしょうか?勉強などは自分の主体で出来ますが、相手に合わせる事、礼儀作法も自分の主体でない場合は苦手でないのでしょうか?」


……まだ、皆さん喋りません。ようやくクレイン様が口を開く。


「そうか、それで対応はどうすれば良い?」


……え?対応策も考えるの?他の人達を見るがオレの方を向いている。何て言えば良いのだろう。


「えーと、とりあえずエイルド様は今後の教育で跡取りの自覚をはっきり持たせる事でしょうか。ポアラ様は他の人達の考えが分かるようになれば相手に合わせる事が出来るのでないかと思います」


これ以上の考えは出来ません。


「分かった、後は良いぞ」


クレイン様から退出の許可が出た。


「トルク、食事を取って今日は休みなさい。お疲れ様」


ダミアンさんから今日の仕事が終わったことを告げられる。


「今日はご苦労だった」


レオナルド様から労いの言葉をもらった。


「では失礼します」


ようやく、男爵家下人の初めての仕事が終わった。なんだかんだ大変な一日だった。今日はゆっくりと休もう。


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