表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の友として  作者: 北杜
六章 帝国領囚人編
148/275

17 ラスカル家

ルルーシャル婆さんの提案で戻る事にした。オレは戻るという意味が分からなかったから聞いてみる。

「初代の墓は小山の頂にあってそのふもとに私達の知り合いの家があるの。そこまで戻りましょう」

空を飛んで帰るのかと思ったら歩いているランドとオレ。浮いているサクラ・ジュゲム・ララーシャル・ルルーシャル婆さん。別に良いんだけどさ……。

そういえばランドも居たんだな。精霊達と喋っていて存在を忘れていたよ。


「なあ爺さん。爺さんもふもとの家を知っているの?」

「先代、ルルーシャル様の母親の御使いに仕えていたときに来た事があるし、数年間そこで暮らしていた事がある。館の主も御使いの事を知っている方だ」


大きな荷物を運びながら言う。オレも手伝ってやろうかと言ったのだけど「付き人の仕事だから大丈夫」と言って拒否された。

小山を下りたら屋敷が見えた。門を潜ると庭の草木が伸びている。きちんと剪定をされていない木や通路にも草が伸びている。


「おかしいな……、裏門とはいえここまで管理がされていないなんて……」


ランドが呟くのが聞こえた。こっちは裏門だったのか

誰も居ないのか静かで鳥の鳴き声しか聞こえない。そんな事を思っていると汚れた服を着た老人が屋敷から出て来た。


「お久しぶりです。ルルーシャル義姉上」

「久しぶりね、パトラッシュ」


姉上?婆さんの弟なのか?そんな話は聞いた事がないんだけど。


「お久しぶりです、パトラッシュ様。お元気そうで何よりです」

「お主はランドか!生きていたのか!久しぶりだな。お主も壮健でなによりだ!」


パトラッシュと聞くと忠犬を思い出すのはオレだけだろうか?……宙に浮きながら笑っているサクラ。ツボに入っているのか大笑いしている。こいつのツボが良くわからない。


「……ねえ、サクラはどうしてあんなに笑っているの?」

「気にしない方が幸せだと思うよ」

「そう……、此処はラスカル伯爵の領地よね。どうしてこんなに寂れているのかしら?館の掃除は行き届いていないし、庭も荒れているわね。どうして領主の一族がみすぼらしいのかしら?」


ララーシャルの疑問を気にせずルルーシャル婆さんに呼ばれたので自己紹介をしようとする。


「この子が私の後継者の新しい御使いのトルクさんです。トルクさん、こちらの方がパトラッシュ ルウ ラスカル男爵です。この周辺の領主です。そして私の義理の弟になります」


義理の弟?ルルーシャル婆さんの旦那さんの弟って意味だよな?考えよりも自己紹介をしないと。王国の事は言わない方が良いだろうな。


「初めまして、トルクと申します。よろしくお願いします」

「こちらこそ初めまして、新たな御使いよ」


とりあえず握手してお互い自己紹介を済ます。この人は親族だから御使いの事を知っているのかな。

それにしてもいつの間に後継者になったのだろうか?確かに精霊術の修業をしたり、サクラに会ったり、初代の墓に行ったけど、まだ御使いになるとは言ってないけど……。


「立ち話もなんですから屋敷へどうぞ」


オレ達を屋敷へ誘うがルルーシャル婆さんは用事があると言って別行動をとるようだ。ジュゲムやララーシャルも一緒に行く。


「なあランドの爺さん、婆さんは何処に行ったんだ?」

「知らん」

「多分、旦那と子供の墓じゃないかしら?」


サクラが話に加わる。ランドも知らなかったのか驚いている。オレはパトラッシュさんに聞いてみる。


「ルルーシャルは私の亡き兄と甥の墓の所に行ったのだろう。トルクも行くか?案内するぞ」


だけど邪魔じゃないか?婆さんの家族じゃないし……。


「お主の名前を聞いたとき驚いたぞ。甥と一緒の名前だからな。甥の事は彼女から聞いたか?」

「……オレが婆さんに会ったのは一ヶ月も経っていない。娘がいる事は聞いていたけど甥と旦那の事はいま知った」

「そうか……。案内しよう。甥も兄も喜ぶだろう」


オレ達はパトラッシュさんに案内されて墓の方に行く。


「娘とは養女のフローラの事だろう。レローラが亡くなった後でルルーシャル姉上が母親代わりをしていたからな」

「レローラの娘ですか!初めて聞きました」


ランドが驚いている。レローラって誰?


「レローラはワシと同じルルーシャル様の付き人だ。レローラは女性だからルルーシャル様と一緒に後宮に行く事が出来た」

「そうか……。ランドは知らないのか」

「ワシは帝国兵に捕まって鉱山の労働施設に入れられたのです。何が起きたのかは詳しくは知りません」

「……そうか。ラスカル家が男爵まで地位を落とした事もお主は知らないのだな」

「はい、自己紹介のとき聞き間違いではないかと思いました。どうしてそのような事に」

「ルルーシャルの許可が出ればお主が知らない事を言えるだろう……。お主が苦労したようにルルーシャル姉上や私も苦労したのだ……」


……とっても暗い話題に喋る事が出来ない。オレの近くにいるサクラも黙っている。サクラは知っているのか?


「知っているわ。でも私は部外者だからルルーシャル達に聞いて」


誰も喋らなくなり道を歩く。屋敷の隅に初代の墓に似た石碑がある。墓石には名前は書いていないがこれがルルーシャル婆さんの旦那と子供の墓なのだろう。墓の前で婆さんとララーシャルは跪いて祈り、ジュゲムは二人の後ろに立っている。

オレ達の足音に気づいたのかルルーシャル婆さんとジュゲムは祈りを止めて立ち上がってオレ達の方を向いた。ララーシャルはいまだ祈りを捧げている。


「トルクさん、私の旦那様と子供が眠る場所です。私ももうすぐ此処で眠るでしょう」

「……オレも参って良いかな?」

「勿論よ」


ルルーシャル婆さんが自分のいた場所を譲ってオレは手を合わせて黙祷する。旦那さん、子供さん、ルルーシャル婆さんのお蔭で助かりました。ありがとうございます。

オレが祈り終えたときにララーシャルも祈り終えたようだ。

ララーシャルもルルーシャル婆さんの旦那さんと知り合いなのかな?ララーシャルが精霊になった事は聞いたがその他の事は聞いていない。聞いて良いのだろうか?ランド爺さんの知らない事をオレが聞いて良いのか?


「トルクさん。私やランドの事、ララーシャルがどうして精霊となったのか、昔の事を教えるわ。聞いて頂戴」


覚悟を決めた表情でオレに告げた。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ