16 初代の精霊
充電完了!
データが飛んだショックから立ち直りました。
少しずつ頑張ります。
ハリセンを受けて痛み……ではなくて驚きで目が覚める。夢だと思っていたらララーシャルが、夢の中で出てきたララーシャルが目の前にいる。夢と同じで背丈も人間と同じになってドレスを着ている。
「目が覚めた?」
「その前に一つ聞きたい。夢の中で会ったララーシャルがどうしている?本物か?」
「夢の中で私を見た?私とは初対面のはずよ?私の事を知っているの?」
不思議そうにオレを見る。お前が夢の中で自己紹介したんだろう?そして精霊になった経緯も!
「三十年前に死んだ皇女のララーシャル。精霊と融合してさっき覚醒した精霊だろう」
「どうして知っているの!知っているのはルルーシャルとジュゲムと初代の精霊だけのはずよ!」
「さっき夢の中で聞いた。それでここは何処?初代の精霊がいる場所なのか?」
周りを見渡すと広場になっており周りは木に囲まれている。その広場の中心には石が積み重なっている場所がある。そしてオレの近くにはルルーシャルとジュゲムとララーシャルと見たことがない女性がいる。……人ではないな、宙に浮いているから精霊か。
「彼が貴女の事を知っているのは、奥義の影響でララーシャルの心が彼の中に残ったからでしょう」
初対面の精霊がララーシャルの疑問に答えた。薄い桃色の長い髪の奇麗な女性だ。
「目が覚めたようね」
見知らぬ精霊がオレに言う。彼女が初代の精霊なのかな?
「はじめまして、私はサクラ。初代と一緒に旅をした精霊よ。ようこそ初代と同郷の方」
「改めてはじめまして、私の名前はトルク フォウ バルムと申します」
「あらバルム領の方ね。実を言うと王国の方にも旅をした事があるわ。バルム領といえば……あれよね。確かお魚が美味しい所だったわ」
……バルム領で食べた魚は川魚ですか?魚が美味しいと言われると海を思い出すのだけど……。本当に行った事あるのか?
「貴方って王国出身って聞いていたけどフォウの身分だったの?騎士って初めて聞いたんだけど」
「言ってなかったっけ?」
「聞いていないわよ!」
ララーシャルがオレを責める。ルルーシャルとジュゲムはオレの身分なんてどうでも良いのか普段通りの表情だ。
「質問だけど私の名前の由来を知っている?」
名前?サクラって言ったら普通に「桜」しか思い当たらないが……。
「花の名前しか思いつかない」
オレの答えにニッコリ笑って「正解~」と言う。
「サクラ吹雪と言えば?ヒント時代劇」
「遠〇の金さん」
「サクラ切る馬鹿」
「ウメ切らぬ馬鹿」
「花見で」
「一杯!」
「サクラ咲く」
「合格!」
「合格!本当に初代と同郷なのね。普通の人は分からないわよ。流石だわ!」
ハイタッチの動作をするのでオレはサクラとパチンと手を合わせる。……多分、オレと初代は同年代で趣味とかが一緒だったんだな。じゃないと普通の人は分からないだろう。
「一応聞くけど此処は何処?」
「ここは私が住んでいる場所でライのお墓よ。ライって言うのが初代の名前よ」
サクラが墓を指さす。石が積み重なっている石碑の様な物が初代の墓か。近くまで歩いてみると日本の墓の様に作っている。墓石には「田中雷音」と書いている。
……ライってサクラさんが言っていたからライオンって読むのか?キラキラネーム?
「なんて読むか分かる?」
サクラさんがいつの間にか横に近づきオレに聞いてくる。
「タナカライオン?って読むの?」
「そう、彼の名前はライオン。ライって呼んでいたわ」
とりあえず手を合わせて黙祷する。田中雷音さん初めまして、トルクです。よろしくお願いいたします。
目を瞑って心の中で雷音さんと話した。昔の自分の事、今の自分の事。ジュゲム達から雷音さんの武勇伝を聞いた事を話した。貴方はどんな事を思いながらこの世界で暮らしたのか尋ねた。
……長い時間、目を瞑って雷音さんと話す。話し終え目を開けて墓を見た。墓はとても奇麗に清掃されていた。サクラさんが掃除をしているのかな?
「終わったかな?」
「はい、ありがとうございました」
サクラさんに礼を言って。他のみんなにも頭を下げる。雷音さんの墓を見て頭を下げると床に近い部分に文字が彫ってある。……日本語だな。
「サクラさん、この文字は?」
「これはライが残した遺言よ。貴方なら読めるでしょう」
墓石にはこう書いてある「初めまして、この文字が分かる同郷の方。私の名前は田中雷音。日本で生まれて神隠しに遭ったのかこの世界に転移した。来た当初は混乱したが精霊のサクラ達のおかげで何とか生きてこれた。私が来たときは精霊達が人間の奴隷の様に扱われていたので、私は恩返しのため、精霊を奴隷扱いから解放しようと、人間の勢力と敵対して精霊を救った。その後は精霊がまた虐待されないように魔鉄で出来た首輪や記録を壊して後世に残さないようにした。私の子供達にも、精霊を奴隷にさせない様に頼んだが今はどうだろうか?精霊は無事だろうか?奴隷になっていないだろうか?そしてこの文章を読んでいる人にお願いがある。また精霊が人間に虐待されていたなら助けてほしい。私の友の精霊サクラと一緒に精霊達を救ってほしい。最後に精霊が人間を恨んでいるのならその憎しみを昇華してほしい。精霊と人間が幸せに暮らしている事を願って」と書いてある。
雷音さん、精霊は無事だよ。大丈夫だよ。どちらかというと人間のオレの方が被害に遭っている様な気がするよ。
「これを読んだのなら貴方のするべき事は分かっているわね」
オレのするべき事?
「オレのするべき事は王国に行き、家族のもとに帰る事だぞ」
母親と別れてからどのくらい経っただろうか?バルム砦で半年未満、労働施設で半年未満?一年は経っていないはずだ。とりあえず無事を知らせたいのだが……。
「ちょっと待って!これを読んだのでしょう!ライの遺言を読んだんでしょう!」
「読んだけどオレには関係ない話だよね。今の精霊は人間に虐待されていないじゃないか。だから大丈夫だろう」
「先代の御使い様が頑張ってくれたので今では精霊達も平和に暮らしています。人間を恨んでいる精霊も少なくなりました」
「帝国でも精霊の事は一般的に自然の守護者として認識されています。奴隷として扱われているというのは聞いた事がありません」
「三百年くらい精霊は平和だぞ。大きな事件は偶にはある。しかしそれは精霊が人間を陥れているだけだぞ」
オレ、ルルーシャル、ララーシャル、ジュゲムの順番に答える。その言葉を聞いてサクラはショックを受けて動かない。再起動が必要か?それとも叩けばなおるかな?
「……動かないな」
「よほどのショックだったのかしら?」
「大丈夫なの?」
ジュゲム、ルルーシャル、ララーシャルは動かない初代の精霊を見る。……そういえば精霊が見えるようになっているな。どうしてオレはこの場所に居る?
最後の記憶は……奥義を覚える為にジュゲムとララーシャルと話して……。そこから記憶がないな。そのあと夢でララーシャルと話したんだっけ。
「ルルーシャル婆さん、初代の精霊がどうしているの?ここは家の近くなの?」
「……ララーシャルと奥義を使った事は覚えている?」
「……覚えていない。ジュゲムから三ヶ月以内で奥義を覚える方法として松コースの事を聞いたけど」
婆さんはハァーとため息をついて呆れている。その後ジュゲムを睨んでことの次第をオレに言う。
「貴方がララーシャルと奥義のフュー〇ョンして貴方達は魔力を暴走させる寸前だったの。最悪の場合は「ボン」となってあの森が無くなるような状態だったわ。奥義を解除する為に初代の精霊に助力を願ったの。ここは初代の精霊が住まう場所で、私達が居た森の家ではないわ」
「安全に安全を重ねて私と奥義を使う予定だったのだがララーシャルが私の止める間もなくフュー〇ョンを使ってしまった。流石に冷や汗が出たぞ。少しの衝撃で「ボン」といくかと思ったからな。まあ奥義の習得には成功したから結果オーライだな」
「アハハ、前の私が無茶したみたいでごめんなさいね。でも「ボン」とならなくて良かったわね、お互いに」
……いろいろと深く聞きたい事があるんだけど、ボンって何がボンするんだ?手を顔の近くに持ってきてグーからパーに開く動作を止めてほしい。
とりあえず、「ボン」となりそうだったから初代の精霊に助けを求めたんだな。そして初代の精霊が助けてくれたという事であっているな。
「確かに奥義を習得したけど少し違うのよね。貴方の場合は精霊との相性っていうのかしら?それが強くなりすぎたの」
いつの間にか復活した初代の精霊サクラ。しかしどういう意味だ?表情を変えるのはジュゲムだけ。ルルーシャルとララーシャルは意味が解らないような顔をしている。
「奥義は精霊の力を人間が操る技術だけど人間の限界以上の力を使うの。普通の人間なら命を削って気絶するか死亡するけど御使いはそれをギリギリ制御できるわ。今回の件で貴方は初代の御使い、ライ以上に精霊の力を操る事が出来るようになったと思うわ」
普通に考えたら良いことだと思うんだけど……。真面目な顔でオレに言う。
「原因はララーシャルと未完成なフュー〇ョンをしたからだと思うけど、精霊の力が貴方の体に残ったの。普通の人間よりも精霊に近い存在になったわ」
「それは私と同じような存在って意味ですか?」
「ララーシャルは人間と精霊が融合した半精霊というのかしら。トルクは半精霊と人間がほんの少しだけ融合した人間よ」
半精霊?そういえばララーシャルって前は人間のお姫様だったっけ。精霊と融合したって言っていたな。それが半精霊って意味なのか?
「ララーシャルは精霊だけど人間でもあるわ。トルクの魔力を使えば実体化できるかもしれないわね。普通の精霊ではできない事よ。そしてトルクは精霊の力がほんの少し混じっているだけの人間よ。だけど少し困った事になったわ」
「困った事とは何でしょうか?トルクさんに害があるのですか?」
ルルーシャル婆さんがサクラに聞く。ララーシャルも心配そうな顔をしている。
「精霊の力が貴方の中に有るから他の精霊達にも好かれる様になったの。勝手に貴方から魔力を奪ったり、勝手に貴方の物を物色したり、勝手に貴方の体を使って遊んだり、勝手に貴方の力を使ってフュー〇ョンしたり」
……要するにメンドクサイ事になったんだな。今まで精霊に悪戯されたり、物を取られたり、変なこと言われたりしていたけど、今からはそれ以上の事が増えるのか!
「精霊に好かれやすい体質になった貴方は他の精霊から魔力を簡単に奪えるようになったの。御使いだから制御が出来ると思うけど、精霊が面白半分で人間の限界以上の力を出し続ければ最悪の場合は「ボン」っていくわ」
「……「ボン」ってされない方法はありますか?初代の精霊様。どうか教えてください」
土下座するような勢いで頭を下げる。精霊に遊ばれて「ボン」ってなるのは勘弁してほしい。
「大丈夫よ。私が貴方を守ってあげる。私なら他の精霊達からも守れると思うわ。それにライの遺言でもあるしね」
雷音さんの遺言?そんなモノがあったの?
「口頭でライから「私と同じ同郷の者が居たら助けてくれ」って。だから私が貴方を助けてあげるわ!」
「ありがとうございます。……ではこの世界に住む人間達を農奴として精霊の国を造り未来永劫の栄光を輝かせる!」
途中から変な言葉が出てきたんだけど。……あら?動けないし喋れなくなった?どうして?
「もう精霊に憑かれたようだな?それもトルクに憑いた精霊は人間に良い感情を持っていない精霊だな。どうするのだ?」
冷静に言うなよ!ジュゲム!助けてくれ!なんかオレ変な格好をしていないか?ポーズを決めている?
「まず手始めに近隣の人間を農奴にして作物も作らせて物資を充実させて、その物資を売って軍資金を作り領地を広げていこうではないか!」
なかなか手堅い攻め方だな。時間がかかりそうだけど……。喋りながら変なポーズをとるのを止めろよ。周りのみんなが変な目で見ているぞ!
「大丈夫よ!ここをこうすれば良いわ」
サクラがいつの間にか持っていた棒でオレの頭を叩く。痛みで頭を抱えて座り込んだ。
「こうすれば精霊を追い出すことが出来るわ。とりあえずトルクには今後精霊から身を守る術を覚えないといけないわね」
「なんだかごめんなさい。私のせいで変な事になって……」
ララーシャルが申し訳なさそうに謝る。これから精霊達に憑かれる生活を送るのか?……早めに身を守る術を覚えよう。マジで!
「とりあえず残りの御使いの修業をしましょうか。精霊から身を守る術を覚えるのが最優先ですね」
ルルーシャル婆さんの言葉を聞いて真面目に取り組もうと本気で思った。これ以上精霊に変な事をされたくない!
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




