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精霊の友として  作者: 北杜
六章 帝国領囚人編
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9 精霊と御使い①

「誰が死神だ!」


……うるさい死神だな。心地よい気分が台無しだ。しかし綺麗な男性だな。光り輝く長い髪、整った顔立ち、声も綺麗な声だな。


「……お前は私の事が見えるのか?」


見えるよ。死神だろう?どちらかと言うと女性の天使に天国に連れて行ってもらいたかったが、この際どっちでもいいや。


「天国とやらには連れて行かないぞ」


なら地獄か?徳を積んでも地獄に落ちるのか……。


「地獄とやらにも行かないのだが。それよりも私の声も聞こえるのだな」


声くらい聞こえるさ。耳は悪くないはずだ。それよりも早くオレを輪廻の輪に戻らせてくれ。


「輪廻の輪とはなんだ?」


命あるものが何度も転生する事だ。死神だろう、そのくらい知っておけよ。


「だから私は死神と言うものではない!」


死神だろう。オレを迎えに来たのだろう。早くオレを旅立たせてくれ。


「早く起きろ!いつまで寝ぼけている!」

「どうしたの?」

「子供が私の事を死神とかなんとか言ってな。寝ぼけているのだ!」

「あらあら、子供が大人を背負って随分と歩いていたのだから疲れているのでしょう。ゆっくり寝かせておけば良いでしょう」

「……しかしだな」

「子供が寝ているのだから静かにね」


……女の人の声がする。こっちが天使なのかな?天使と言えば綺麗な人のはずだ。声の方に目を向けるが老女だった……。

オレのトキメキを返せ!

老女の周りを見ると部屋の様だ。どこの部屋だ?木で作ったログハウスのような建物?オレが寝ているのはベッド?ここは何処だ?最後の記憶は魔獣に殺される記憶だ。

思い出した!爺さんは無事なのか?魔獣に噛まれた腕は大丈夫なのか?あれ?それ以前に両目が見える?手錠や魔封じの腕輪が無い?どうなっているんだ?

体を見る。傷はない。目に手を当てる。潰れた片目が治っている。両手両足にはめてあった錠と鎖がない。魔封じの腕輪も無い!

なんで?何があった!


「目が治っている!鎖も無い!魔獣に受けた傷も無い!どうして?なんで?」


混乱して頭がおかしくなったのか?物事がうまく考えきれない。あれから何が起きたんだ?オレは死んでいないのか?生きているのか?夢か?幻か?


「大丈夫?お水いる?」

「……混乱しているのだろう。少しすれば落ち着くだろう。今はそっとしておこう」

「そう?では飲み物は置いていくから後で飲んでね。それじゃ」


そう言って出て行く二人。老女は歩いて、男性は宙に浮きながら部屋を出る。


「待て!死神!なに自然と宙に浮いている!重力というモノを無視するな!」

「だから私は死神ではない!これでも精霊だ!」

「……そうか精霊か、それなら宙に浮く事も出来るか。知り合いの精霊も宙に浮いていたからな」

「分かればいい。では正気を取り戻したら降りて来い」


部屋から出て行く二人を見送ってオレはベッドで横になりながらつぶやく。


「精霊なのか。精霊なら宙に浮くよな。当たり前のこと?ではなくて!何寝ているんだよオレは!此処は何処だよ!」


ベッドから跳ね起き、部屋を出ると今度は小さい女の子が宙に浮いている。目の錯覚かな?身長二十センチくらいの小さい女の子?年齢はオレと同じくらい?

……目をこする。見えるな。頭を打った衝撃か?それとも精神的にヤバイのかな?


「……目の錯覚だな」

「こら!私を無視しない!いきなり部屋から出ないでよね!ビックリするじゃない!」


改めて見る。小さいが女の子だ。宙に浮いているから精霊なのだろうか?それとも進化の過程で人が縮んだのだろうか?この子を学会に出せば拍手喝采で有名になれるだろう。テレビにも出演させてそのうち歌も歌わせて歌って踊れて空飛ぶ小さいアイドルとして有名になれるのでは?


「こら!私を無視するな!」

「……怒っている顔も可愛いな」

「えっ?いきなり何言うのよ!なに変な事言っているの!」


口に出たか……。まあ良い。それよりも下に行こう。ここは二階建てのログハウスの様だ。二階にはドアが三つあるから部屋が三つある様だな。

小さい女子が何か叫んでいるが無視して下に降りる。


「起きたか。体の調子はどうだ?」


髪を整えて髭を剃って清潔な格好の爺さんがエプロンを着て部屋から出てきた。……花柄のエプロンを着て。


「……爺さんのエプロン姿を見てめまいがしたが大丈夫だ。それよりも爺さんの方は大丈夫なのか?ナイフが刺さっていただろう?」

「ワシは大丈夫だ。御使い様が治してくれた。お主の怪我も治されたのだぞ。後でお礼を言っておけ。それよりも腹が減ってないか?食事がもうすぐ出来るからそこで待っておけ」


部屋に、食堂の様な部屋に入りテーブルにオレを座らせて飲み物を用意して爺さんは厨房に戻った。両腕で器用に料理をしている。

……両腕?爺さんって片腕が無かったよな?腕が生えた?


「爺さん、腕が……」

「腕?御使い様が治してくれた。凄いじゃろう」

「……凄いね、御使い様って」


……食堂に座って待つ。腕の生えた爺さんのエプロン姿なんて見たから頭が回らん。御使い様?老女が御使い様なのか?宙に浮いていた男性は精霊?小さい女の子も精霊なのか?

それに服も寝間着のようだ。前の囚人服は汚かったからな。寝ている間に着替えさせられたのだろう。ついでに体も綺麗に拭いてもらっている。


「降りてきたようね。気分はどう?」


いつの間にか老女が向かいのテーブルに座っている。いつの間に?考え事をして周りが見えていなかったようだ。


「貴方が御使い様ですか?」

「そう呼ばれているわ。私の名前はルルーシャル。隠居してこの森で暮らしているただの老人よ」

「ではルルーシャルさん。助けてくれてありがとうございます。傷の手当までしてくれてなんとお礼を言ったら良いのか」

「貴方が森でランドを助けてくれました。こちらこそお礼を言います。ランドは私の兄の様な人。それから貴方の名前を聞いていいかしら?」


花柄のエプロンを着た爺さんはランドって名前だったのか?初めて知ったな。施設では名前を覚えようとも聞こうともしなかったからな。オレは爺さんに名前を伝えてなかったし、ランド爺さんも坊主とかしか言っていなかったからな。


「失礼しました。私の名前はトルクと言います。王国出身で捕虜として労働施設に居ました。こちらこそランドさんに助けてもらって感謝しています」


ニッコリ微笑んで茶を飲むルルーシャルさん。オレが王国出身だからなにかあるのかな?


「故郷を離れ、捕虜となり大変でしたね。ここで休んで心の傷を癒してください」

「ありがとうございます。それであなたの側にいる男性と小さい女の子は精霊ですか?」


男性はルルーシャルさんの横に座り優雅にお茶を飲んでいる。小さい女の子もテーブルに座って小さいカップでお茶を飲んでいる。いつの間にテーブルに座ったんだ?頭を下げてお礼を言ったときか?


「そうよ。男性の方はジュゲム、女の子はララーシャル。二人とも精霊よ。やはり貴方も精霊が見えるのね。訓練をしたの?」

「訓練はしていません。いつの間にか見えていました。声だけしか聞こえない場合もあります」


本当にいつの間にか見えたもんな。頭を打った衝撃で見えたのだと信じていた。その後、見えたり見えなくなったりだもんな。


「ランドから聞いたけど本当に初代だったのね。私も初代を見たのは初めてよ。ジュゲムはどう?」

「私も初代は久しぶりに見た。うむ、ランドの入れたお茶は美味いな。腕を上げたか?」

「お茶が美味しい。お菓子も有ったら最高だけど!」

「お菓子はご飯の後でね、ララーシャル。それでトルクさん。貴方の……」

「お待たせしました。食事の準備が出来ました」


爺さんが食堂に入ってきてルルーシャルさんの話が途切れた。何を言おうとしたのかな?それよりも配膳を手伝うか。立ち上がって配膳を手伝おうとしたが爺さんに止められた。


「お主は客人だ。ゆっくり座っていてくれ」

「でも」

「久しぶりの付き人の仕事が嬉しくてな。座った座った」


爺さんがオレとルルーシャルさんに食事を並べる。精霊達には?食事を並べないのか?


「ランド、ジュゲムとララーシャルは私の隣にいますよ。二人にもお願いね」

「すいません」


爺さんには精霊は見えていないのか。ララーシャルさんが怒っている。人間サイズの皿を並べられて怒っている。


「私はこんなに食べれないわよ!太らせるの!」

「食べきれなければ残して良いわよ。ランドには後で言っておくから」


おや?爺さんの分がないぞ?爺さんを見ると。


「ワシは後で食べるから心配するな」


パンにスープにサラダに肉を焼いたやつ。豪勢な食事だ。でもオレには肉はないぞ?


「お主は四日間寝ておったからまずはスープで体の調子を整えてからだ。病人に肉はきついからな」

「……ララーシャルさん、お肉頂戴。食べきれなかったらオレが食べてやるよ」

「本当?ありがとう!いい子ね!」


良し!肉が食べれる!久しぶりの肉だ!絶対に食べるぞ!

……でも爺さんやルルーシャルさんが肉を食べさせてくれなかった。……にくーー!!


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 腕を切り腕輪を外して回復、又は手を潰して腕輪を抜くって ワイルドすぎか・・・期待してたんだけどな~
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