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精霊の友として  作者: 北杜
六章 帝国領囚人編
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閑話 エディオン家家臣達の行いと後悔

令和最初の更新!

これからもよろしくお願いします。

スレインの部下達は全員、後悔によって血の気が引いて白い顔をしている。


「……トルクはこの町にはいません。昨夜に森に入り、魔獣に襲われ死にました」


仲間の一人がスレイン様とクリスハルト様に伝える。スレイン様は言葉を飲み込めていないのか棒立ちになっている。

クリスハルト様は壁に背を当て座り込んだ。死人の様に力尽きた表情だ。

……どうしてこの様な事になったのか。

思えば、仲間の一人がトルクの言葉を信用しなかった事だった。

自分達の主の弟君のせいで労働施設に来た王国の子供。ローランド様を憎んでおり殺意を抱いている。

その様な子供と主の弟君。どちらを信用するのか……。主の弟君を信じるに決まっていた。

スレイン様もローランド様を信じるだろう。しかしクリスハルト様からの言葉はトルクの言葉が正しいと周りに教えた。

私達はスレイン様、主を思って行動を起こした。

町に着く前夜、トルクの言葉を信用していない者が声をかけ、行動を起す事にした。


「トルク、話したいことがある。少し良いか?」


トルクは旅の疲れか寝る準備をしていたが言葉をかけて、野営所を抜け出して森の入り口まで来る。一人がトルクに話しかけて注意をそらして背後からもう一人が鎖を利用してトルクの首を絞めた。


「スレイン様の為!ローランド様の為!お前の存在は見過ごせん!スレイン様の弟君のローランド様と王国の捕虜。どちらを信じるのかと言われるのならローランド様を信じるしかないだろう!」


隠し持っていたナイフを取り出してトルクの首に当てる。


「お前の事は不憫に思う。子供なのに捕虜になってこんな所で人生を終わるなんて……。悪く思わないでくれ。苦しませずに殺すから」


殺害しようとしたらトルク達が倒れた。誰かが邪魔をしに来た。見るとトルクと一緒に行動していた片腕しかない老人。

トルクの首を絞めていた鎖を外し、仲間をトルクから引き離し倒す。


「坊主!大丈夫か!」


老人がトルクの無事を確認する。既の所で邪魔をされて爺さんに恨みを放つように言った。


「何をする!邪魔するな!こいつは此処で殺さなければならないのだ!」

「ふざけた事言うな!そんな事などさせるか!」


老人に武器など不要と、そんな気持ちで殴りかけるが腕を取られて仲間の方に投げられる。最後の手と思い投げられながらナイフを老人の背中に刺した。

仲間の体の上に投げ落とされ、下からうめき声が聞こえる。すまん!と謝りながら立ち上がろうとしたが老人がトルクを抱えて森の中に走り出した。


「待て!逃がすか!」


老人の後を追おうとするが仲間から止められた。


「止めろ!夜に森に入るなんて自殺行為だ。この森は魔獣も生息しているし、住民も滅多に入ってこない森だ!オレ達ではトルクを追う前に森に食われるぞ!」

「しかしトルク達が」

「老人にナイフを刺したな。後は魔獣が二人を殺すだろう。血の匂いを嗅いだ魔獣からは逃げられん。武器も無い子供と老人が魔獣を倒す事は不可能だ!あの二人は死んだよ。オレ達が手を汚す事も無く……」


森に入ろうとしたが仲間に止められ、森の怖さを教えてもらい、二人が死ぬのを確信した。


「……せめて墓でも建てたかったな。運の悪い子供だったな」

「魔獣に食べられ、死体は森に帰る。この森が墓標だ……」

「……戻ろう。仲間にトルク達の事を伝えないとな」


仲間にも二人がトルクを殺す事は伝えている。

トルクを信じていた者も居たが最終的に納得してくれた。「主の弟君のローランド様と王国の捕虜のトルク、どちらを信じるのか!」と言うとローランド様を信じるのは当たり前の事である。

野営地に戻り仲間達に合流した。


「……トルクは?」

「死んだ。正確には森に入り魔獣に襲われて死ぬだろう」


端的に言う。この様な会話は少ない言葉で済ませる。森に逃げて魔獣に襲われて死ぬ。酷い死に方だ。


「……そうか。運の悪い子供だった」

「全くだ。トルクがローランド様に殺意を抱いていなければ……」

「だがエディオン家の家臣としては当然のことだ!」

「そうだ。しかし子供を殺したとなると……」

「仕方がない。アイツは魔封じの腕輪をはめながら魔法を使える子供だぞ。もしも、腕輪が取れて魔法が使えるようになったら脅威だろう」

「それに幼いが戦争経験者だ。万が一の事がある」

「……そうだな。スレイン様にはトルクは町に着いたら何処かに行ったと伝えよう」

「殺した事は伝えないのか?」

「スレイン様はトルクを部下にするつもりだった。しかし行方不明となった者は部下には出来ん。それに子供を殺した事を言う必要は無いだろう」

「いや、伝えるべきだろう。トルクは死んだと。森で死んだ。私達が来たときは魔獣に襲われて死んだと」

「……伝えるべきか?スレイン様が落ち込むだろう。行方不明では駄目なのか?」

「行方不明ならスレイン様は希望を持つだろう。ローランド様も不安に思うかもしれん。ここは今後の憂いを断つ為に言うべきだろう」


その後、話し合いを進めて最終的にはトルクは夜の森に入り、魔獣に襲われて死んだと言う事をスレインに伝える事にした。

しかし伝えるのは町での用事が済んだ後にする。全部終わらせて最後にスレインに伝える事になった。




そしてスレインとクリスハルトにトルクの死を伝えた。


「何故だ!どうして死んだ!スレイン!お前は何をしていた!トルクを見殺しにするなんて!」

「申し訳ありません!しかし」

「黙れ!生きていたのに!昨日まで生きていたのに!お前が居ながらどうしてトルクを見殺しにしたのだ!」

「ですが」

「トルクが夜の森に入るなんて!危険なのは分かっているだろう!どうして止めなかった!」


クリスハルト様はスレイン様に八つ当たりの様に責める。エディオン家の家臣達も自分達が行った行動に後悔する。

ローランド様がクリスハルト様の信頼を裏切り、トルクがクリスハルト様の恩人である事は証明された。

どうして証明されたのが昨夜ではなかったのだろうか?昨夜に恩人である事が分かれば殺害なんて行動はせず、護衛を付けてエディオン家の客人として迎えていたのに……。


「……トルクは生きているはずだ!あいつは魔法が使える。魔獣くらいなら魔法で……」

「無理です。トルクは魔封じの腕輪をはめていました。魔法は使えません」

「魔封じの腕輪を?誰がそんな物を子供に付けたのだ!」

「トルクの話ではローランドが付けたと」


火に油を注ぐような言葉でクリスハルトの怒りはここに居ないローランドにも及ぶ。ローランドに悪態を付き、エディオン家まで及んだ。スレインは怒るクリスハルトに頭を下げ続ける。

最後に言い終わってクリスハルト様は言った。


「せめてトルクの死体だけでも回収したいが……」

「森に入るのは止めた方が良いでしょう。森には魔獣が多く居ます。それにもう魔獣に……」


突如、長い髪の美しい貴族の女性が部屋に入り怒るクリスハルトに言葉をかけ近づく。


「……母上、申し訳ありません。取り乱しました」

「この辺の森は魔獣が多く、地元の人間も近づきません。そのような所に人を入れるのは感心できません」


クリスハルト様の母親でロックマイヤー公爵夫人。御子息と領地に帰る為に待っていたのだが時間になっても来なかったので様子を見にいらしたようだ。


「すいません、使いを出すべきでした」

「気にしておりません。そしてスレインも久しぶりですね。冤罪で捕まったときは驚いたわ。今では無罪が証明されて逆に貴方を陥れた人が捕まったのよ」

「お久しぶりです。公爵夫人。この様な格好で申し訳ありません」


公爵夫人の登場で全員が頭を下げる。スレインもその部下達も上位の者に会う格好をしていない。町の兵の様な恰好をしているのだ。貴族の、それも上位貴族に会う格好ではない。


「別に良いわよ。それからクリスハルト、貴方は用事が出来たようね。私の事は良いから用事を済ましなさい」

「わかりました。では護衛の手配をします」

「いつもの人達で良いですから」


クリスハルト様は部下に指示を出して古参の二人の騎士達に護衛を命じる。そして公爵夫人の侍女の一人が近づいて耳元で何かを口にした。


「では用事が出来たので失礼しますよ。それからお仕事頑張りなさい」


公爵夫人との会話を終え、再度我々を見る。


「不正の証拠集めをお前達はしろ!私はトルクを探す。運が良ければ死体が見つかるかもしれん。この町にはギルドは有ったか?」

「この町の規模ではギルドは無いでしょう」


クリスハルト様の部下が伝える。


「では森に詳しい者に案内を頼み探索をする」

「クリスハルト様。森は危険です。そのような場所に……」

「その場所でトルクが死んだのだ!せめて恩人の遺体を回収しなければ!」


そう言い放ち部屋から出て行く。

……スレイン様は憔悴して顔を下に向けている。労働施設でも見た事もない表情だ。

私達はどうすれば良かったのだろうか?私達が行った行動の結果はスレイン様の為にはならず、主君から叱咤された。スレイン様の為、ローランド様の為に行った行動は裏目に出た。

事実を知ったらスレイン様は私達に罰を与えるだろう。叱咤ですませるか悪くても謹慎だろう。


「……そうだ。トルクと一緒にいた片腕の老人だ。あいつが良からぬ事を言ったに違いない。そのせいでトルクは森に入ったのだ。そいつのせいだ!トルクが森に入って死んだのは老人のせいだ!あの老人に罰を与える。死罪だ!クリスハルト様の恩人を害した者を殺すのだ!」


老人はトルクを助ける為に森に逃げて、トルクを救った恩人である。なぜかスレイン様には老人がトルクを害した容疑者になった様だ。しかし老人は傷を負っておりあの森で生き残る事は不可能だろう。血の匂いに誘われた魔獣に襲われトルクと一緒に死んでしまったのだから。


「スレイン様、殺すのはいささか罪が重すぎるかと……」

「何を言うか!トルクが死んだのは老人のせいだ。殺すだけでは飽き足らぬ。両手両足をちぎり、生まれた事を後悔させてやる!」


今更ながらスレイン様の怒りを知る。……スレイン様が事実を知ったら我々は良くて騎士剥奪、悪くて死罪。最悪は一族郎党死罪。

我々は選択を間違った様だ。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここのサイトに出す奴って基本的に戦争大好きで屑しか出せない人多すぎない?
2022/03/05 19:19 退会済み
管理
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