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精霊の友として  作者: 北杜
五章 伯爵家騎士編
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閑話 子爵家次女アルーネの砦生活④

父上から宿舎で寝るように指示され騎士トルクや部隊の皆の心配をしていましたが、夜の戦闘は短期間で終わった事を父上から知り安心して寝ました。

朝起きて騎士トルクの所に向かう。

昨日は病院で待機するように指示されていたから病院にいるはずです。

必要なもの……水差しとかは病院にある物を使って、朝食はどうするべきか?簡単な食べ物を用意しておくべきでしょうか?

私が病院に着くと怪我人達の治療がおこなわれている。

騎士トルクも治療している様だ。治療に集中している騎士トルクの後ろにいるケビンさんに挨拶をして私も雑務を手伝う。

今回の戦闘では怪我人も少なく騎士トルクの負担も軽いようです。


「怪我をしたぞ!早く治療しろ!」


かすり傷で貴重な回復魔法を使わせる騎士が後ろの方で叫んでいます。


「全く!礼儀を知らぬ平民め!由緒ある貴族を優先して治さなくてどうする!早く治せ!」


王都の貴族の様な振る舞いをする騎士ですね。そんな人がこの砦にいるなんて珍しい。

バルム砦で働く騎士は領地を持つ貴族の側近の騎士が多く、王都にいる騎士はバルム砦にはほとんど来ない。

理由は辺境と言われるバルム砦は遠くて田舎だから。それから王都にいる騎士は王都を守る事を誇りとして王都から出る事はあまりない。砦に行くとしても王都から比較的に近いアイローン砦を希望するらしい。


「フン!この程度の魔法で騎爵位を持てるとは貴族の質も落ちたものだ!私を治療させてやったのだ。ありがたく思うんだな!」


回復魔法で治したのですか?あんな傷ツバ付けたら治りますよ!勿体ない!

ケビンさんも顔をしかめている。きっと私と同じ考えなのだろう。


「ブレインさんはどうしてあんな性格なのかな?」

「レオナルド様から聞いた話ではブレイン殿は幼少の頃から王都に住んでいて性格が歪んでしまったとの事です」


……あの人は王都に住んでいたのですか。


「ドドバン子爵は善良で有能な方です。その御子息も人間性に優れているそうです」


でもアレは典型的な王都貴族ですよ?我儘で暴力的で自分の上には従順で下には威張り散らす。


「子爵の奥方は王都の生まれでブレイン殿だけ王都で育ったので少し歪んだ性格だとレオナルド様は言っています」

「あれで少し歪んだ性格か。王都にはあれ以上の貴族がいるのかな?大人があれじゃ子供も凄そうだな。アルさん、学校でも性格が歪んだ子供達がいると友人は作れないよね」

「王都の学校では派閥があり、私は派閥の者達と仲良くしていました。王都に住んでいる貴族達と王都から離れた領地持ちの貴族達と、二つに分かれています」

「派閥?学校にも派閥があるって聞いていたけど本当なんだな。アルさんはやっぱり領地持ちの貴族の派閥なの?」

「姉が辺境伯の御息女の側近だったので私もいつの間にかそちらに入っていました」

「辺境伯の御息女も在学しているのか……。お姉さんも在学中なんだね」

「兄は学校を卒業して、姉は在学中です。将来は姉や母を守る騎士になるのです!」

「そう言えば学校か?基本的に貴族は学校に行くものだと聞いていたけど?」


騎士トルクにはここに来た理由は言ってなかったかな?


「……謹慎を受けて王都にいられなくなって父上のいる砦に来ました」


難しい顔をしている。謹慎を受ける身として騎士トルクはどのような事をしたのか知りたいのでしょう。


「私の姉は辺境伯の御令嬢の側近でした。そこに王都に住む貴族の子弟達がお茶会に参加をする為に来たのです。ご存知の通り男性はお茶会には参加する事は出来ません。出来るのは親族もしくは婚約者の親しい間柄の男性のみです。しかしその子弟達はその事を無視して参加しようとしました」


今思うとどうして男共がお茶会に参加したのか疑問です。どのような用事だったのでしょう?


「私の姉がその事を言ったのですが、男が逆上して姉を殴りつけました。その男は騎士トルクに似ている男性でしたが強くないし魔法も使えない、人格も人柄も優しさも騎士トルクの方が上です!」


騎士トルクと最初に出会ったときはあの男と同じ容姿だったので王都貴族の自惚れ馬鹿貴族だと思い込みました。でも騎士トルクは強いし、優しいし、魔法は使えるし、よく見るとカッコイイし、頭も良いし、皆から好かれているし、父上も褒めています。


「私もお茶会に参加していて、姉に暴力を振るった男を殴りました。男は倒れて動かなくなり気絶したように見えましたが、気絶したのは演技だと思い倒れた後も殴り続けました」


私が一発殴った程度で気絶するとは思っていませんでした。騎士の修行をしていましたが私はまだ弱いと思っていたので。


「お茶会に参加した男を倒して姉や御息女を救ったのは良かったのですが、その男の父親は王都貴族でも偉い王宮貴族で私は退学にされそうだったのですが御息女の父親、辺境伯が私を助けてくれて学校謹慎の罰になりました」


辺境伯の御息女には感謝しています。あの方がご両親に言わなかったら私はそのまま退学だったでしょう。

その後、騎士トルクと学校での出来事やウィール男爵の御子息と御令嬢の事を聞きました。

エイルドとポアラですね。私の後輩ですね。騎士トルクの御友人でしたら私も仲良くしましょう。

トラブルは続き、今日は訓練所で騎士ブレインが騎士トルクと模擬戦をするのですが、訓練場の中央に歩いている騎士トルクに後ろから切りかかろうとします!


「危ない!」


私の声に騎士トルクはギリギリで躱す。その後も騎士ブレインは木刀を振り続けるが騎士トルクは躱し、受け、避ける。

すごい!騎士ブレインの攻撃をさばき続けるなんて!


「どうしたサウルのように逃げ回っていないで反撃していいぞ!」


サウルは臆病で逃げる動物なので臆病者と言う意味だ。しかし騎士トルクは臆病者ではない、誇りある騎士です!

怒涛の連続攻撃の合間をぬって一閃。素晴らしい反撃でした!見事としか言えません!


「騎士ブレイン!大丈夫ですか?お怪我は?」


……あの従者は、私をイジメていた男達のリーダー格です!王都の学校を卒業してバルム砦に赴任した貴族。

騎士は従者を経験しないと騎士になれない。在学中に王都で従者の経験を積む者もいれば卒業後に従者の経験を積む者もいるがあの従者は学校を卒業後に従者になった貴族ですね。


「そこの兵隊!騎士ブレインを病院に運べ!」


その言葉にカチンときました。

私達従者はこの訓練場にいる兵隊よりも身分が低いのですよ!私達は従者で貴族ではないのです!


「どうして従者がここに居る人達に命令をしている!自分で連れて行きなさい!」

「私の父は男爵だぞ!その命令に従わないのか!」

「私の父は子爵です。身分から言って私の方が上ですよ!それでもあなたは私に命令をするのですか!」

「女が口を出すな!子供のしょんべん騎士の従者のくせに!」


……このあだ名は他の従者達が騎士トルクが城壁で戦わずにいつも病院にいるので臆病者のチビリ野郎!って言っていました。

私はこのあだ名を言った従者達を叱り続けて騎士トルクの耳に入らないようにしていましたが、ついに騎士トルクの耳に入ってしまったのです。


「なんて無礼な!決闘を申し込みます。騎士トルクの名誉のために!」


決闘をして騎士トルクに私の強さを見てもらいます。私がどのくらいの強さなのかを!決闘に勝った後に褒めてくれるでしょうか?

騎士トルクに習った投げ技であっけなく勝負はつきました。

従者が病院!とか痛い!とか叫んでいましたが他の騎士達に連れて行かれました。

再教育をされるようです。いままで楽をしていた分まで苦労しなさい!

その後、騎士トルクからはお褒めの言葉は頂けませんでした。あの程度では褒められるに値しなかったようです。

訓練が終わり、騎士トルクからマントの修繕を頼まれたので町の服屋で修繕を頼みます。

糸のほつれたくらいだから手芸が得意な姉は簡単に直せるのですが私は手芸が苦手です。

一度、父上の服を直そうとしましたが失敗して呆れさせて「手芸の勉強をしろ!」と言われました。

その後は衣服を直すのは服屋で修繕をしてもらう事にしました。

マントが直りしわを無くして騎士トルクに渡す為に探していると、父上と会い用事を頼まれてまた探していると兵専用の食堂で見つけました。

どうやら食堂の料理人達と話しているようです。


「騎士トルク!マントをお持ちしました!」

「おやアルじゃないか?そのマント……」


私に話しかけた料理人は顔見知りです。子供が好きなようで子供には食事を大盛りにしてくれます。


「それから父上がお呼びです」

「マーナさん、ミーナさん、用事が出来たからまたね!」

「今日は一泊して明日帰るから夕食は一緒にどう?良いですが?ゴランさん」

「ケビン、前に食事をした料理店でどうだ?」

「了解しました。他の者達も連れてきていいですか?」


女性達と騎士トルクは知り合いのようです。双子の綺麗な女性でした。長い金髪の明るい女性、優しそうな笑顔で騎士トルクを見ている髪の短い女性。双子なのに雰囲気が違います。

騎士トルクはあのような女性が好みなのでしょうか?


「アルさん、今日の夕食なんだけど一緒にどうかな?あの人達と部隊のみんなで食事をするけど一緒に食べない?」


騎士トルクに誘われてとても嬉しいです。早く用事を済ませて準備をしないと!

その後、父上と騎士トルクが相談する。

帝国の捕虜の怪我人の治療についてのようです。

父上が捕虜と話し合い怪我人を治療する事になったようです。敵を治療しても治った体で王国兵を傷つけるのでは怪我を治す必要は無いと思いますが私の考えよりも父上にはもっと深い考えがあるのでしょう。


「それから砦に来てそろそろ十日ぐらい経ったが慣れたか?」

「アルさんやケビンさん達のおかげで砦での生活に慣れました」


褒められました!嬉しいです!


「従者の子供達とも仲が良くないと聞いているからな。トルクにはアルーネの友人になってもらいたい」

「私で良ければ喜んで」


友人にもなってくれるのですね!男性の友人は生まれて初めてです!


「今日、知り合いがこちらに来て夕食を一緒に取るので、アルさんを紹介したいので夕食に誘っても良いですか?」

「良いぞ。しっかりと着飾って行くように言っておこう」

「父上!」


父上の軽口に少し怒ります。私だって貴族の女子です。男性に食事を誘われたのですからそれ相応の準備はします!


「あ!」


いきなり騎士トルクが声をあげました。どうしたのでしょう?今日の食事の事ですか?大丈夫です!騎士トルクに恥をかかせるような恰好はしません。


「……えーと、夕食の集まる人達は平民でして。貴族の御息女であるアルーネ様を誘ってしまって……」

「大丈夫だ。我が子爵家も平民との付き合いはある。我が家の侍女達も平民だ」


では平民が着る服よりも上等な服を着ないといけませんね!前に姉と一緒に買い物をしたときに買ったドレスが良いでしょうか?

装飾品は……母上と王都で買ったネックレスを付けましょう。


「アルーネよ。平民との集まりとはいえ騎士トルクの知り合いだ。無礼な真似はするなよ!」

「騎士トルクの従者として主に恥をかかせる事はしません!」


貴族の女子とし、騎士トルクの従者として二人の女性には負けません!

騎士トルクと別れて外食に行くためにドレスを準備する。体を綺麗にして、いつも後ろで結んでいる髪をとかして髪型を整える。

父上に馬車の手筈をしてもらい、ドレスを着て確認をした。うん!大丈夫!


「アルーネ、馬車の準備が出来たぞ」

「父上、いかがでしょうか?」


母と姉から教わった礼儀作法です。スカートをもって腰を落とし一礼する。


「…………」

「……父上?」


喋らない?おかしかったかな?


「良く似合っているぞ!ではトルクの所に行くとよい」


父上も褒めてくれたので、きっと騎士トルクも褒めてくれるでしょう!


「騎士トルク、迎えに来ました」

「…………」


騎士トルクも父親の様に喋らない。おかしかったかしら?


「ど、どうしました?恰好がおかしかったですか?」

「いや、従者用の服以外の服装をはじめてみたから驚いた。良く似合ってますよ」


褒められました!とても嬉しいです!頑張って用意した甲斐がありました!

騎士トルクはまだ用意が出来ていなかったようで今から着替えるそうです。

私はケビンさんと一緒にドアの前で待ちました。ケビンさんは私服のようです。


「……化けるとは言ったものだ」


ボソッとケビンさんが言いましたが聞こえませんでした。


「お待たせ」


騎士トルクは騎士服にマントを着て部屋から出てきました。今日は髪型を整えておりいつもよりも凛々しく感じます。

建物を出て父上に手配してもらった馬車を見た二人は唖然としています。


「馬車に乗って行くのが普通でしょう?ケビンさんは御者台で道案内をお願いします」


……馬車で騎士トルクと二人きりになりました。今日の食事は楽しくなりそうです!


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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