12 砦での日常③
お久しぶりです、トルクです。
あれから何度か王国と帝国の小競り合い繰り返し、数ヶ月経ちました。
大規模な戦闘も無く、砦の怪我人も少なくなり死亡率が劇的に下がった。
この数日は戦闘もなく平和な日々をすごしている。
病院でも評判でいろんな怪我を治している。
「腕が動かなくて……」
治療しました。
「足が動かなくて……」
治療しました。
「首を寝違えて……」
治療法を教えました。
「虫歯が……」
歯磨きしろ!
「便秘で……」
腸内の流れを良くしました。
「お尻にデキモノが……」
……治しました。見たくなかった。
「お腹を下して……」
治してみ……失敗した。更に下った。
「便秘で……」
……治しました。
病院でいろいろと頑張っています。
前にポアラ様に手紙と一緒にプレゼントを贈ったらその返信の手紙が届いた。
なになに、「贈り物ありがとう。学校では勉強や魔法の訓練を頑張っている。友達も出来て楽しいです。トルクもお仕事頑張って。プレゼントのお返しに王都で流行しているペンダントを二つ送ります。空のペンダントには何か入れて送り返してください。また会いましょう」
プレゼントのペンダントを見る。ロケットペンダントのようだ。蓋を開けるが何も入っていない。もう一つのペンダントには宝石みたいな綺麗な石が入っている。
……この宝石のような石を入れて送り返さないといけないのか。難易度高いな。
次にエイルド様からの手紙だ。
内容は「勉強が大変だ。覚えても将来使わない様な事まで覚える授業に何の意味が有るのか。これも騎士になる為として頑張っている。模擬戦ではオレに勝つ同年代の者はいなくて訓練に困っている。友人も出来たが派閥に入って、その対応に苦労している。現在は王族派に入っている。王族の付き人と勝負して勝ったら派閥に入れられた。どうすれば良いのか助言を求める」って。
……王族の付き人にどうやって勝負する羽目になったんだ?助言ってこっちが聞きたいよ!
友人も出来ている様だしその人達に相談……待てよ、派閥の友人ならその派閥の為になる事しか言わないのではないか?
難しいな。クレイン様やレオナルド様に聞くのが一番だよな。二人に手紙を送るように書いておこう。
それから「嫌な事が多い。どうすれば良いだろうか」と言う質問に「三回我慢しましょう。そして三回怒りを抑えましょう。その後は誰にも迷惑にならないように反撃しましょう」と書いた。
次は母親とマリーだな。
どれどれ……仕事頑張っているとか、体に気を付けてとか好き嫌いはダメ!前半部分はマリーが書いた手紙だな。後半は母親が書いた手紙だな。内容は体に気を付けてとか仕事を頑張ってとか。それから無力な母を許してくれという懺悔的な内容の手紙だ。
……返信でマリーに母親の事を頼み、母親には立ち直らせる為に良い事を書こう。それからエイルド様やポアラ様に助言をしてもらおう。息子の願いを叶える為に行動すれば嬉しく思うはずだ。……多分。
ドイル様の手紙には勉強と剣の鍛錬を頑張っているそうだ。
王都でアンジェ様達と生活しており、魔力を感じる事が出来たので母親に魔法を教えてもらっているそうだ。
ドイル様って才能有るみたいだな。伸ばせば凄い人物になるに違いない。
アンジェ様から王都の有名なお菓子を送ってきてくれた。
……お菓子の再現を求められているのか?送られてきたお菓子はクッキーだよな。
このお菓子よりも美味い菓子を作って送れっていう意味かな?
それからレオナルド様からの手紙は。
農園の作物が不作らしい。ゴランさん達農園の人達が頑張っているが収穫量は前年度よりも量が減るらしい。でもトランプはバルム伯爵を通じて王都で売っているのでその分の収入は増えたそうだ。
祖母も穏やかに過ごせて男爵家のみんなも平穏な暮らしをしている。
……手紙を返信にあたり、トランプの他にもオセロの作り方を書いておくかな?
クレイン様からの手紙は。
バルム領内は何事もなく平和の様だ。
帝国の密偵も捕まらなく賊もいない。今度カシムさんが砦に来るから新しい料理のレシピを教えて、体調には気を付けろと書いてある。
……返信の手紙には砦での出来事を書いておくか。
この数ヶ月で起こった出来事といえばオレの部隊の部下のうちの一人が魔力を感じる事が出来た。それからもう一人、アルさんも魔力を感じる事が出来て現在、水魔法を覚えたので火魔法の火の玉を覚えている最中。
二人とも水魔法の下級レベルに達したので火魔法を覚えている。
アルさんが魔法の素質があった事を一番に喜んだ人は父親のヴィッツさんだろう。抱き上げて回りながらアルさんを褒めた。
回りすぎて気持ち悪くなったアルさんに回復魔法を使おうか悩んだ。
それからオレの部隊からも魔力を感じる事が出来た者の名前はダヤン。部隊の中で一番若い兵だ。
他の者も負けずに魔力感知を頑張っている。何人か魔力を感じそうと言っている者もいるので魔力を感じるまで頑張ってほしい。
そしてダヤンには回復魔法を教えている。それを知っているのは砦の責任者のアーノルド様と副隊長のケビンさんだけ。
なんでもサムデイル様から回復魔法の指導は内密にと言われているらしい。
だから訓練時に他の魔法を教えるふりをしながら回復魔法を教えているが、やはり魔力を生命力に変換する事が難しく、オレが精霊に教えてもらった方法でやっているが時間がかかりそうだ。
返信の手紙を書いているとドアからノック音が聞こえる。
「騎士トルク、お時間です。お迎えに参りました」
「ありがとう」
これからアーノルド様とヴィッツさんと話し合いをする。
話し合いの内容はアルさんが従者を辞めて王都に帰るからその後の新しい従者を決める話し合いだ。
「もうすぐ王都に帰るんだね」
「そうですね。謹慎が解けますから」
「寂しくなるよ」
「私も寂しいです。魔法の訓練も教えてもらいたかったのですが」
「ウィール男爵家のポアラ様は魔法が使えるからポアラ様に教えてもらってくれ」
「今年に入学した方ですね」
「すこし寡黙な方だけど良い人だから」
「はい」
話しているとアーノルド様の部屋に着いた。部屋に入り話し合いを始める。
「ヴィッツがまだ来ていないから世間話でも始めるか。兄上、バルム伯爵から手紙が来た。手紙の内容はアイローン砦の戦争の事だな。王国が有利な状況と書いてある」
アーノルド様は腕を組み手紙をテーブルに置く。
「王国が有利なのは当たり前だ。アイローン砦には騎士や魔法使いがこの砦よりも多い。それなのに不利な状況に陥っていたら、帝国がそれ以上の戦力なのか、アイローン砦の者達が遊んでいるかのどちらかだろう」
「バルム伯爵の手紙に書いているのはそれだけですか?」
「連戦連勝でアイローン砦の者達はお祭り騒ぎで酒を飲んで集まっているそうだ」
……古来、酒を飲み宴をして油断しているところを敵から討たれるって話があったな。大丈夫なのか?
「酒を飲んでお祭り気分の者達は第二王子とその取り巻きの戦争派が多いらしい。中立派のバルム伯爵をはじめ他の領主や貴族達が帝国を撃退しているそうだ」
……大丈夫なのか?アイローン砦の者達は。
ドアからノック音が聞こえてヴィッツさんが部屋に入ってきた。そしてオレに話した事をヴィッツさんにも話す。
「先程、王都からの手紙が届きました」
手紙をアーノルド様に渡すヴィッツさん。変な事を書いていなければ良いのだけど。
「……兵の補充が遅れる事とアイローン砦に援軍の要請だな。これ以上遅れるのか!」
手紙をテーブルに叩きつけて怒りを表す。
ハアハアと息が荒い。頭に血が上って顔が赤く怖い表情だ。怒気をまき散らして怒っている。
「……しかし援軍を送らない訳には」
「……王命に逆らう訳にもいかん。死亡率が下がったとはいえこれ以上砦の兵を減らす事は……」
「……私が行きましょう。兵はアイローン砦に行く途中に領地に戻って徴兵して数を増やせば……」
「こちらからも兵を出す。デンキンス領での徴兵は数合わせで良いから大人数で頼む!」
「わかりました」
「アイローン砦に行く前に王都によって貴族院に手紙を渡してくれ」
二人の話し合いが終わり頭を抱える。
アイローン砦の戦力は分からないがかなりの兵力があるのに再度援軍の要請とは……。
単純に考えると大規模戦闘を始める気なのだろうか?
いや、帝国領に攻め入る為に大規模な戦争を始めるのだろう。
しかしこれ以上兵力を減らされるバルム砦は大丈夫なのだろうか?こっちで大規模な戦闘が始まったら……。
アイローン砦が囮でこっちのバルム砦が本命……。そんなことはないよな。考えすぎだよ。
「当初の話に戻ろう。アルーネよ。トルクの従者、ご苦労だった」
「こちらも良い経験をさせてもらいました!ありがとうございます」
「アルーネはヴィッツと共に王都に帰るとよい」
「はい!」
「そしてトルクの後任の従者だが……」
なんか言いづらそうだな。どうせ「子供の従者は嫌だ!」とか言っているのだろう。
「子供の従者は嫌だと言って誰も従者になろうとしない」
だと思ったよ。オレって従者の子供達から嫌われているから。前にアルさんに決闘で負けた従者はリーダー格で、オレの事を今でも陰でしょんべん騎士って言っているらしいからな。
それに騎士の人にも一部嫌われているからな。筆頭がブレインさんで王都に住んでいた貴族からも嫌われている。
「私がいなくなるのでその従者を付ける事は……」
「お前の従者もアイローン砦に行かせる。もともと領地の者だろう」
……別に従者はいらないからどうでも良いけど。世間体でも有るのか?この世界の常識は分からない事が多いよ。文化の違いだな!
「では騎士トルクの従者が決まるまで私が従者を続けるというのは」
「馬鹿者!謹慎を受けて学校に行けなかったのだろう。これ以上勉強が遅れるとまた留年するぞ!」
アルさんの言葉をヴィッツさんが反論する。勉強大事!これ教訓!
……また留年ってもう一回留年したんだね。これ以上の留年は家族を悲しませるよ。
「従者の件は後日でも構いません。従者に決めたとしても嫌々されても迷惑ですから」
オレの言葉にアルさんが反応して下を向く。……アルさんも最初は嫌々従者をしてたっけ、忘れていた。
「アルさんは、最初からキチンと従者の仕事をしてくれていましたよ。私を嫌っていてもキチンと仕事をしてくれたのだから」
……フォローになってない気がする。
「それに後から真面目に従者の仕事をしたではないですか!オレの名誉のために決闘までしてくれて!」
「……なんだ?決闘?」
「その話は聞いていないな?」
え?知らなかったの?アルさんを見ると失敗したって顔をしてる。
アルさんが事情を説明中。変なあだ名の事を聞かれて顔を赤くしながら言って、アーノルド様とヴィッツさんが黙り込んだ。
「従者の教育もしないといけないのか?」
「リーダー格の従者が力を持っているから他の従者が反論できないようです」
アーノルド様の問いにアルさんが答える。
「ではその従者をアルーネの後任にするか。トルクよ、再教育しろ!」
難題を押し付けられた。……確か父親が男爵って言っていたな。父親の名前は?派閥は?
「名前はモリス ルウ ヴォルグです。ヴォルグ男爵の当主が死罪になって領地を没収され、その弟が男爵を継ぎました」
ヴィッツさんが説明をしてくれる。……どっかで聞いたことある名前だな。
「派閥は戦争派の王都貴族で、アイローン伯爵の下に付いていたはずです」
……この辺まで出てきそうなんだけど。もう少しで思い出せそうだ!
「……ヴォルグ男爵領。たしか数年前にバルム領、ウィール男爵の領地になったところだろう」
「そうです」
思い出した!母親をオレのクソ親父に売った貴族だ!ヴォルグ男爵!思い出した!そいつの血縁者か!
「どうしたトルク?」
「……なんでもありません」
抹殺リストから消していたから思い出せなかった。血縁者も屑だな!
「再教育、喜んでやらせてもらいます!」
この屑を再教育させて泣いたり笑ったり出来なくしてやる!今から楽しみだ。
「ど、どうした?顔が笑っているぞ」
「なんでもありません、大丈夫です」
おっと顔に出てしまったな。どんな訓練をさせるか考えるだけでもワクワクする。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




