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精霊の友として  作者: 北杜
五章 伯爵家騎士編
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11 知り合いと再会②

馬車が目的地に着いたみたいで先に降りてアルさんをエスコートする。

……デカい建物だな。この店がゴランさんの言っていた料理店か?


「では行きましょう」


ケビンさんを先頭について行く。店の中では楽しく明るい声が聞こえ、食事している人達は良い顔で飲んだり食べたりしている。


「おう!ケビン。こっちだ!」


ゴランさんの声の方に行くと、部隊の者達とゴランさんとマーナさんとミーナさんがテーブルに座っている。テーブルには食べ物がそろっておりゴランさんはコップ片手に手を振っている。もう飲んでいるのか?


「お待たせしました。紹介します。私の従者をしてくれているアルさんです」

「お初にお目にかかります。騎士トルクの従者でアルーネと申します。皆さまよろしくお願いします」


綺麗なお辞儀をするアルさん。場違いだな!

……まあ、平民の集まりに貴族の子女が来たからビックリしているな。マーナさんとミーナさんも驚いている。ゴランさんは。


「おう!よろしくな。しかしトルクも手が早かったんだな!これは奥様に伝えておかないと!」


ゴランさんに突っ込まない!突っ込んだら変な事を言われるに決まっている。


「アルさんはデンキンス子爵の人でオレの二つ年上で、訳あって王都の学校を休んで父親のいる砦で従者の仕事をしているんだよ。アルさん、あの飲んだくれのおっさんがゴランさん。ウィール男爵領の農園責任者、そちらの女性はマーナさんとミーナさん。伯爵家で侍女をしています」


アルさんは三人に挨拶をする。マーナさんとミーナさんは緊張しているな。


「では農園出身の騎士トルクに乾杯!」


ゴランさんがいきなり乾杯の音頭を取って飲み始める。部隊の人達も飲み食いを始めた。

席順はマーナさんとミーナさんとアルさんと固まって座っており、オレの右側はアルさんで左側はゴランさんだ。

正直ゴランさんの隣は変わってほしかった。

しかし誰もゴランさんの乾杯の掛け声に突っ込まなかったな。

どうしてだろう?


「しかしポアラ様にどう説明をするんだ?婚約者だろう」

「え!騎士トルクは婚約者がいたのですか!」

「ウィール男爵家の長女でトルクと同じ年のポアラ様って名前だ。魔法の才能があってな。オレもよく的にされたものだ……」

「騎士トルクと同じ年という事は……今年に王都の学校に入学したのですね」

「そうそう、本当はトルクも入学する予定だったのにな。婚約者と別れて寂しいだろう」

「そうなんですか」

「トルクが寂しがっていると思っていたが、砦であんたみたいな女の子を連れて来るなんて。アンジェ様にどう説明をすればいいやら」


ニヤニヤ笑いながらオレを見るな!それからオレを間に挟んで話さないでくれよ。


「アンジェ様というのは?」

「ポアラ様の母親だ。あの方が二人を結び付けたんだよ。それなのにこの現状をしったら……笑える!」


ガハハ笑い、酒を飲む。この酔っ払いめ!


「ねえ、トルクさん。大丈夫ですか?」


ミーナさん、あまり大丈夫じゃないよ。酔っぱらいのせいでね。


「トルクは子供の時から面白い奴だな。荒地を数日で畑に変えて驚いたもんだ」


今度は昔話になったか……。


「でもトルク君、本当に大丈夫なの?ポアラ様はこの事を知っているの?」


マーナさん、ポアラ様は知らないと思います。手紙もアルさんの事は書いていないな。

……隠しているんじゃないよ。アルさんの事を教える理由はないし、アルさんはただの従者だからポアラ様とは関係ないし。


「ポアラ様に説明しておきなさい。後で知ったら怒られるわよ」


……今度手紙を書くときにアルさんの事を書きます。


「オレは見ていないが男爵家一家が賊に襲われて、激流の川に落ちたドイル様を助ける為にトルクも川に飛び込んで……」

「それからポアラ様には手紙の他にプレゼントを用意するのが良いわね」


プレゼントか……。物で釣って機嫌を良くするんだな!どんな品物が良いかな?


「それは自分で考えなさい!トルク君が一生懸命考えた物なら大丈夫よ!」

「あとリリア様やマリーちゃんにも用意した方が良いと思うわ。トルクさんを心配していると思うから」

「リリア様達に渡すならアンジェ様にも渡した方が良いわよ!」


……ハンカチ人数分で良いかな?


「もっと考えてプレゼントを用意しなさい!」

「そうですよ。みんなの事を考えながらプレゼント決めればすぐに用意できるよ」


……御免なさい。でもヒントだけでも……。


「オレが見た時はエイルド様と二人で熊と戦っていてな。驚いたものだ。トルクが魔法で穴を掘ってクマを落としたんだ。這い上がろうとするクマを二人で阻止してな」

「ゴランさん!オレ達もトルク様の自慢話に参加していいですか?」

「おう!いいぞ!どんな話だ」

「ではオレから。オレがトルク殿と模擬戦で訓練したとき、投げ技からの関節技で勝利した時の事を話しましょう!」


……オレの自慢話ってなんだよ!聞きたくない!アルさんも真剣に聞かないでくれ!それよりもプレゼントの事を考えてくれたら嬉しいな!


「やっぱり宝石とかはどうかしら?」

「でもこっちに売っているかしら?」

「お揃いのペンダントとかはどう?」

「お互いの名前を入れているペンダントなんか憧れるね」

「では次は私の番ですね。トルク殿がポアラ様と伯爵家の中庭で抱きしめあった時の事を話しましょう!」

「待て!どうしてそれを知っている!周りには誰も居なかったはずだ!」


どうしてその事を知って……伯爵家の中庭だからな。精霊だけじゃなくて使用人も近くにいるだろう。


「建物の警備をしていた友人から聞いた話ですが」


オレの話を聞け!酒の入ったコップ片手に何を喋っている!


「こら!今はポアラ様のプレゼントの話でしょう!」

「ちゃんと考えないとポアラ様が悲しむよ」


それよりもポアラ様がなんて言っていたのかを教えてもらわないと。


「会話までは聞けませんでしたが、二人で抱きしめあって、後ろにあった中庭の木が祝福してくれているみたいで、なんとも絵になる二人だったと」

「美しい話だ!」

「二人に乾杯だ!」


酔っぱらいどもめが!明日の訓練を楽しみにしていろ!

男共が馬鹿話をしている間、マーナさんとミーナさんとアルさんが三人で会話している。

少し気になったが女性の会話には参加せず酔っぱらいどもの所に席を移動しよう。ゴランさんの横で話すよりも楽だからな。

その後何事もなくお開きに……。


「よう、綺麗な姉ちゃんたちだな。どうだ?オレ達と飲まないか?」


……ならなかった。テンプレおつ!

楽しんでいたのに。誰だよ!


「おし!オレ達と飲むか!」


ゴランさんがいつの間にか男達の前に立って笑っている。


「さて、トルク隊長とアルとマーナとミーナは帰りましょう。うちの部隊から護衛を出します」


ケビンさんが動きオレ達を外に出した。

その後は戦場と同じような怒声と悲鳴。


「ゴランさんは?」

「あの人は慣れているから問題ない。ゴランさんの砦での昔のあだ名は笑う破壊者と言います」


……なんだよその物騒なあだ名は。

あだ名の由来を聞く前にケビンさんは御者席に座った。


「それも酒を飲んで酔っているから、ゴランさん達が手加減を出来るか不安だな」

ケビンさんがボソッと言ったセリフに相手と店に同情する事にした。相手の人は運が悪かったね。

そんな言葉をこぼしつつ、オレ達は馬車に乗り、まずはマーナさんとミーナさんを宿に送り届けた。


「今日はありがとう、トルク君。おやすみなさい」

「アルーネ様もありがとうございました。おやすみなさい」

「またお話ししましょうね。二人共」


三人は友達になったようだ。

その後、アルさんの宿舎に向かった。


「今日はありがとうございました。騎士トルクの事が聞けて楽しかったです」

「また明日からよろしくお願いします。アルさん」

「はい!」


笑顔が綺麗だな。アルさんと別れてケビンさんと話す。


「ゴランさんは大丈夫と思うが店は大丈夫かな?」

「あの店の店主はゴランさんの事を知っていますから大丈夫ですよ。あの店で暴れるのは……私の知っている限りでは五回です」


……そんなに暴れているのか。


「暴れた後は喧嘩した相手と酒の飲み比べをして負けた方が食事代を支払う賭け事をするのです」


……待て!というと今日の食事代は。


「私達に絡んできた男共のおごりになります。あの人と飲み比べで勝った人はいませんから」

「……本当に大丈夫なのか?」

「店の店主もやり手ですから、それを肴に儲けるでしょう」


……計画的な犯行じゃないよな。ケビンさんを見るが目をそらす。

絡んできた男達の冥福を祈った。

翌日、ゴランさんとマーナさんとミーナさんは伯爵家に帰るので、朝から別れの挨拶に来た。

アルさんはマーナさんとミーナさんに別れの挨拶をしている。

ゴランさんは昨日の出来事など忘れているように普通に話している。酒の飲み比べしているはずなのに普通の顔だ。


「トルク、頑張れよ」

「ゴランさんも農園の事をお願いします」

「お前は、どんなことをしても生き残れ。みんなの為にな!」

「はい!」


また砦に来たときは食事をする約束を取り付けて、ゴランさん達の馬車は動き出した。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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