074●卒業おめでとう!
春の風が、制服の袖をそっと揺らす。
校庭の桜は五分咲き。
けれど、膨らんだつぼみたちは、確かに春の訪れを告げていた。
式場の中は、静かなざわめきに包まれている。
式次第が読み上げられ、卒業証書が一人ずつ手渡されていく。
名前を呼ばれた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
これが「卒業」なんだ、と実感した。
壇上から見下ろす景色は、予行演習とは違って見える。
在校生の席の中から、ジン君の姿を探す。すぐに見つかった。
まっすぐに、わたしを見てくれている。
席に戻ると「壇上にいる時間、ちょっと長かったね」と後ろの子が笑う。
わたしは’当たり前、彼を探してたんだもん’って言いかけて、やめた。
心の中では、もっと大事な言葉が渦巻いていたから。
’ジン君、これからも一緒にいたい。’
式が終わり、校庭に出る。
写真を撮る人たち、泣いている子、笑っている子。
わたしは、ジン君のところへ歩いていく。
君もわたしのところに、まっすぐに来てくれる。
「ジン君・・・。」声が自然にこぼれた。
「先輩、ご卒業、おめでとうございます!・・・あの、お願いがあるんだけど。」
「なあに?」
胸がどきどきする。風が吹いた。
桜の花びらが、ひとひらだけ舞ったような気がした。
「これからも、ずっと一緒にいていいかな?」
わたしの気持ち、何かから解き放たれた。
君の優しい瞳をまっすぐ見つめてこたえるよ。
「もちろん。ずっと、ね。これからも、よろしく。」
満開の桜を一緒にみたい。
そんな思いが青空の下、わたしの心に気持ちよく広がっていく。
また、新しい春が来る。
巡る季節を、一緒に過ごして行くんだ、わたしたち。




