057⚫️名探偵、登場して退場
「そやけど、’ジュピター’、’そう、わたしは最初からおかしいと思っていました。犯人はあなただ!’みたいな、まどろっこしいのは、やめてや。」
「あっ、よく古典ミステリーであるやつですよね!僕、読んだことあります!」
「悪くないですけどね。わたしぐらいの年齢になると、結構、クラシック、好きなんですよ。」
「いや、副長、今回はストレートに解説してもらいましょうよ。ストーリーでは、5人も殺害されてから、真犯人わかるってあるけど、実際には手遅れよ。操舵も種明かしも、わかりやすいのが一番!」
「マリカさんのいうとおりです!女子を待たせてはダメですよお!」
ーはい、はい、わかっています。では、この’ジュピター’の分析結果から、再現映像を御覧ください。
「えっ、そんなん、もうできてんのん?!」
眼の前に広がる光景。恐竜人が見える。
漆黒の宇宙空間。その中を漂う巨大な艦内で、恐竜人が操縦席に座っている。
あっ、違うのが来た!’トリケラトプス’!口から砲撃だ!
躱した!反撃だ!発砲!大爆発!
それはそうだろうな。この艦が何かわからんが、どの恐竜艦も、口の砲は大きいもんな。
ー恐竜人の発想では、攻撃は口からするもの、というのが基本なのです。
どういうことだ?
ー例えば、ヒトが争う場合、多くが手をつかいます。
そのとおりだ。原始、その手に棒を持ち、石器を握り、矢をつがえた。
ーつまり、闘争の基本形態は、その生物の形状や習慣に寄るのです。
なるほどね。恐竜人は噛みつくのがオーソドックスだったのね。
あっ、降参する恐竜艦もあるんだ。どうなるの?
ー勝った者の支配下に置かれます。48体の恐竜艦隊は、このような闘いのあと、形成されました。
どこで見たのだろう?懐かしい感じだ。氷河期か?
没入感がすばらしいよね。
あっ、むこうにいるのは人類?
ホモ・サピエンスではないような・・・。
空から恐竜艦!あれは’ティラノサウルス’だ。
ヒト族、ひれ伏している。
仲間を差し出すのか?
選ばれたのか?乗り込む連中、嬉しそうだぞ。
ーこのように、恐竜人は定期的に植民惑星を巡っていました。そう、食糧確保のためです。それぞれの艦隊、船団はより多くの領有惑星を増やそうと、争っています。
・・・今では恐竜人は存在しないのか?
ー採取したデータでは、存在を確認できたのは、約1万年前までです。
なぜだ?滅んだのか?
ー母星はありました。しかし、大きな隕石に衝突されて砕けたようです。その後、新たな母星を探すことなく、植民星を巡回する移動の民であることを続けていました。
子孫を残せなかったのか?
ー1つの恐竜艦にファミリーで乗船していました。しかし、他のファミリーとの交配機会が減少し、遺伝子限界をむかえました。徐々に個体数が減少し、48体の艦隊を率いた、最後の一体が老衰で死亡したのが、先程お伝えした約1万年前です。
だが、その後も恐竜艦隊は動いていたのか?なぜだ?
ーテラの状況に沿って説明すると、生命体がいなくなっても、プラントは稼働を続けた、ということです。恐竜艦だけで、生き残りを続けて闘いを止めなかったということですね。
エネルギー補充やメンテナンスはどうだったんだ?
ーエネルギーは恒星や宇宙空間で採集していました。ただ、自己修復機能が不十分で、恐竜人がいなくなった後は、次第に作動不良となり艦数を減らしていきました。
それじゃあ、もともとは、もっと多くの恐竜艦隊があった、てことなのね。
ーそう推測されます。しかし、その根拠となるデータは乏しいですね。
なるほどなあ。文明や科学が進んでも、永遠の繁栄はないってことよね。
ーさて、それは回答不能です。今、ご覧いただいた内容も、信じるか信じないかは、あなたがた次第です。
「うわっ、もどった?!」
「えっ、時間、そんなに経ってないよ?!」
「うん、僕の思っていたとおりの推理だった!」
「本当かあ、ルドルフ?」
「で、これからどうしますか、艦長?」
「名探偵が退場したんだ。我々も退場しようじゃないか。こっそりともどるぞ。」
「了解!」




