019⚫️政治に命をかける!
その巨大な客船には、何でもそろっていた。
豪華な食堂、大浴場やサウナ、リラックス空間、雰囲気のよいバーや居酒屋。
理髪店、病院、コンビニエンス・ストア、
ジムやゴルフ練習場、プールに各種競技場。
美術館、博物館、水族館、テーマパークに様々な宗教施設。
無いものは無い。
そう言い切っていい、まさに、国民の税金で建造された、動く国会議事堂だ。
この船には、国会議員とその家族が常駐している。
災害があれば視察のために被災地に向かい、
台風などの接近時には国家中枢が丸ごと避難できる。
すばらしい!
このアイデアが、国民の総意という名のもとに実現した。
全く、うらやましい環境だが、実は、これには理由があった。
ある候補者が選挙の時に「わたしは命をかけて取り組みます!」と叫んだ。
これを伝え聞いた各候補者が、右に倣えて同様なフレーズを言い始める。
「この身体も魂も、この政治生命も、すべて捧げます!」
「妻も同じ気持ちでいます!」
「家族一丸となって、わたしを応援してくれています!わたしはみなさんの生活者目線を大切にします!」
「まさに命がけです!清き一票を!」
これを聴いた国民は、思った。
じゃあ、命をかけてやってもらおう、と。
紆余曲折はあったが、その決定はなされた。
巨大な豪華客船を作る。すべての国会議員とその家族が乗船する。
特別会計から支出され、急ピッチで建造が進み、異例の速さで完成した。
ただし、この船には船底にあるものが仕掛けられている。
爆弾である。テロリストによるものではない。
設計段階から組み込まれているのだ。
船の完成と同時に、有権者一人ひとりに「ポチッとスイッチ」が配布された。
個人番号に紐づけられたそれは、怒りの意思表示を可能にする装置だった。
もし、彼ら彼女らが
「なにやってんだあ、今の政治は!」と憤りをおぼえた際に、
そのスイッチを押すことができる。
前後あわせて1時間、それは有効である。
もし、有権者の75%がそうしたら・・・起爆する。
あらゆるところにある船内モニターに、
どれだけの有権者が「ポチッと」しているか、リアルタイムで表示される。
「内閣総理大臣ー!」
「ご意見はごもっともですので、今後前向きに検討していきたいと・・・、うわっ、72%か!」
「総理、総理、総理!質問を変えます!ええっと、福祉にもっと予算をかけないといけまてん!」
「そ、そうです、そうです、そのとおりです!わたしたちは、福祉に予算をかけます!」
「あっ、71.5%まで下がった!」
「で、ですから、その福祉予算のために、増税を・・・ぎゃあ!74%!増税はしません!国会議員の報酬を大幅に削除することから、予算確保に取り組みますう!」
政治に命をかける。
その言葉の重みを、今こそ受け取ってもらおうではないか。




