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11 侍女長の思い

お優しい、可愛らしいヴィオラお嬢様。

わたくし達、使用人のものにも柔らかく微笑み声をかけて下さるお嬢様。

「いつもありがとう」「倒れないよう、気をつけてね」そんな言葉を惜しみなく与えてくださるお嬢様。


わたくし達は、わたくしは、そんなお嬢様が大好きだった。

ライラック家で働ける事を、本当に誇りに思っていた。

……はず、なのに。


『信じてください。私、私……ヴィオラ様に、酷いことをたくさんされて……っ!』


涙ながらに訴える、マーガレット男爵家のご令嬢、リリィ様。

何を馬鹿なことを、と思っていた。

お嬢様がどんな方か、わたくしが1番よく知っている。

そんなことを出来る方ではないのだ。


なのに、なのに──……



「お嬢様。あなたがそんなことをなさるなんて……」



なぜ、わたくしはこのような女の証言を信じているのだろう。


なぜ──……



「このような方だとは思いませんでしたわ」



だいすきで、たいせつなお嬢様を、……傷つけているのだろう。



※※※



「突然の御無礼をお許し頂き、感謝致します。……レオ王子は、我がライラック家のお嬢様に婚約のお申し出をされたとお伺い致しました」

「ああ、事実だ。我が国へと貰い受けたい」

「……然様でしたか」


ああ、よかった。

お嬢様には、まだ『味方』がいる。


思わず、安心から笑みが漏れてしまう。

準男爵家生まれのわたくしとは比べ物にならない高位のご身分の方相手に、不敬になるかもしれないのに。

そんなことを考える余裕は、今のわたくしには無かった。


今でも、わたくしは『お嬢様がリリィ様を虐めた』ことは事実だと思っている。

……事実なはずがないと、分かっている。それなのに何故か『それは事実だ』とナニカが強くわたくしに言うのだ。

『女の嫉妬は醜いぞ』『どんな淑女であれ、やらかさないとは言いきれない 』と。


「それで、ライラック家の侍女長がどうしてここに?」


その言葉に、2人の王子に改めて向き直る。

先程声をかけてくださったのは、イライアス王子だ。

柔らかな、淡い色合いの金の髪に、夏の空のような淡い水色の瞳。色合いだけならとても儚く美しい王子だが──その実、この方お一人で一国の軍を相手取れると噂されるような剛腕の持ち主と言われている。

……初めてお会いしたけれど、とてもそんなお強い方だとは思えない。


わたくしへと気遣うような視線を向けるイライアス王子と打って変わり、レオ王子は無言でわたくしを睨むように見つめている。きっと、お嬢様が公爵家でどのような扱いを受けたか……ご存知なのだろう。

レオ王子はイライアス王子と違い、夜を切り取ったような黒髪に、キラキラと煌めく橙色の瞳が印象的だ。

怖いくらいに整ったかんばせからは、何の感情も読み取れない。


──この方々なら、お嬢様をたすけて下さるかもしれない。


そんな望みをかけ、わたくしは口を開いた。


「お嬢様の元へ、御案内に参りました」


わたくしが、傷つけてしまったお嬢様。

宝物と思っていた。恐れながらも、妹のようにさえ思っていた。

自死を試みて、倒れるお嬢様をみて。冷たい身体を抱き上げて。

まだ生きていると、そう、分かって。

そして、やっと取り戻せた、この思い。



しあわせに、なってほしいの。



──それに口に出して願うことすら、今のわたくしには許されないけれど。


せめて、手助けくらいは、と。

『そんな悪女放っておけ』と。わたくしに囁く声を無視して歩き出した。



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