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――D――  作者: 山目 広介
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 その後、連絡が来た。

 検査結果によるとアイシアのDNAは逆巻きだった。左巻きのZ型DNAというわけではなく、普通のB型DNAの左右反転した、という意味での左巻きだ。鏡像対称の構造をしていたのだ。

 アミノ酸も当然左右反転していた。当然その構成要素であるたんぱく質も左右が違う。

 そのため栄養が吸収されなかったのだ。

 化学的な性質は、左右反転したものも同じである。だから簡易検査では分からなかったのだ。

 生物学的な活性はL体のアミノ酸だけだ。D体は生体内には存在していない。

 科学的に合成すると通常は両方の物が出来上がる。物理的には変わらないのだから。

 しかし生物は片方しか作らない。

 何故アイシアが左右反転した生物なのかは不明だった。もしかしたら遺跡の地下にその理由が眠っているかもしれない。

 そして倉庫の食料も左右反転した、L体で構成されてないものだ。

 だからアイシアを殺したのは俺だということになる。

 あのとき俺がアイシアにこちらの食べ物だけを与えなければ……。

 俺もアイシアも摂取したからと言って消化しても吸収出来なかったのだろう。

 だから問題がないように見えたのだ。

 毒にも薬にもならなかったに違いない。実際は同じ構造でも左右対称のものでは匂いが違ったりするというような報告はある。毒にならなかっただけでも良かったと思う他ないのかもしれない。

 それでもそんな気にはなれない(マコト)だった。

 ペットロスで飛ばされたわけだが、また更に失って呆然としている俺を上司が見かねて別の者を寄越して引継ぎをし、呼び戻して有休をとることになった。

 それだけ使えない状態だったのだ。





――ピンポーン。


 呼び出し音が鳴っているのが聞こえた。しかし動くのが億劫で出る気にならない。


――ピンポン。ピンポン。


 無視していたら、連続で鳴らし始めた。根競べで負けて、ゆっくりとした動作で玄関へと向かう。

 俺は玄関を開けて、いきなり声を掛ける。


「誰」

「元気?」


 それは元カノだった。


(ユキ)、どうした?」

「あのね、ちょっと頼みたいことがあって」


 何やらモジモジとしている元カノに面倒になり、部屋へと促した。


「悪い。何もない」


 家に入れたはいいが茶菓子も何もなかった。


「ううん。大丈夫」

「それでなんだ?」


 余程言いにくいことでもあるのか、なかなか話そうとしない。


「用がないなら、もう帰ってくれ」

「ま、待って、ちゃんと言うから」


 テーブルに持ってきた荷物を置く雪。


「なんだ、それは?」

「ちょっと困っていて、ね」

「面倒ごとか。今、気力がないんだ。他、当たってくれないか」

「でもね。教えて欲しいんだ、生き物の飼い方を」


 そう言って布に覆われていた物を取り出す。

 そのケースはからは物音がしていた。


「黒猫の子供?」

「うん。里親探している友人がいて。それで、お願いッ」


 俺たち(・・)は猫を飼い始めた。



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