18話
遅くなりすみません
「優斗君、そのポーズの時腕が少し下がってるわよ!妃奈!あなたは体の軸が少しずれてるわ!」
今俺達は絶賛ダンスの練習中だった。何故かって?もちろん文化祭が近いからだ。文化祭まで残り2週間。俺達はサプライズとしてライブをすることになっている。しかも妃奈とだ。俺は失敗は許されないと、練習に奮闘中だ。
「はーい!そこまでー。今日は夜遅いし続きは明日ねー!」
そう花澤さんから終わりの合図を告げられて俺と妃奈は練習をやめて帰りの支度を始める。今俺は花澤さんに妃奈さんの隣の部屋に住んでいるので帰り道は一緒だ。つまり必然的に少し気まずくなる。なんせ、この前付き合ったばかりだからな。練習の時は気にならなかったが改めて妃奈といると彼女のことで頭がいっぱいだった。
「妃奈……。あ、あの文化祭って俺たちのクラス何するんだろうね。」
「う、うん。優くんは何がしたいの?」
お互いに意識しすぎか、顔が真っ赤で話が弾まない。その時だった。
俺の背中に少しの痛みが走る。花澤さんだった。
「ちょっと、優斗君?妃奈?何顔赤くしてるのよー!そんなんだとバレバレだよ?!もう……、2人とも意識しすぎ……。2人とも今までと同じ接し方でいいと思うよ?正直、付き合う前の方がカップルぽかったわよ。」
花澤さんは呆れたようにいう。
「わ、わかりました……。」
俺は花澤さんのおかげで少し昂る気持ちを抑えることができた。ん?付き合う前の方がカップルぽかった?それって大丈夫なのかなぁ?まぁいいか……。
妃奈を見ると妃奈も少しは落ち着いたようだった。花澤さんのおかげでその後の帰り道ではお互い楽しく帰ることができた。花澤さん本当にありがとう。
そして次の日。俺達は今、クラスの出し物について話し合っている。
「ちょっといい?」
初めに意見を述べたのは匠だった。
「みんなに聞いて欲しいことがあるんだ。みんなも知っている通り、今年はこの学校にテレビが来ることになってるのは知ってるよね?そこで定番だけどメイド喫茶とかどうかな?」
俺の知らない間にクラスの中心人物になった匠が言うと、1人の女子が反論した。美坂さんだった。
「それって男子達が私たちのメイド姿見たいだけでしょ!なんで私たちだけ恥ずかしい思いをしないといけないの?」
美坂さんの意見ももっともだ。正直女子にとってはデメリットが多すぎる。しかも意見してるのは美坂さんだ。結構な人がこの意見に賛同するだろう。
俺は不安になり匠の方を向くと、匠は余裕そうな顔をしていた。流石匠!っと内心思ってた矢先俺に危機が訪れる。
「反対派の意見はそんなことだろうと思っていたよ。」
匠がドヤ顔で言うと、美坂さんは頬をぷくぅとさせる。妃奈ごめん。可愛いと思ってしまった自分がいる。そんな俺の心の声などお構いなしに匠がドヤ顔で言った。
「まぁ、メイド喫茶にもいいところがあると思うんだ。優斗、説明してやれ。」
「は……?」
俺はてっきり匠の演説によってこの場が収まると思っていたが、まさかここで俺に振るか?
「え、ゆ、優斗くんもメイド喫茶がいいの……?」
美坂が少し顔を赤らめて言う。俺は匠に助けを求めようとしたが、その助けには答えてくれなかった。
「えーと……、」
みんなの視線が俺の方を向く。俺は思考を高フル回転させ考える。
「ま、まぁ、メイド喫茶だっけ?そ、そうだぁ……。俺はメイド姿を見て嫌な気持ちにならないかなぁ……。か、可愛いと思うよ。普通に。」
自分でも何言ってるのかよくわからなかったが俺は思考をフル回転させ、さらに言葉をつなげる。
「それに、テレビが来るんだし女子にとっては可愛く映った方がいいでしょう?なら、お化け屋敷とかよりもメイド喫茶の方が可愛いく映ると思うんだ!」
俺は覚えとけよと思いながら匠の方を見ると匠は手をグッジョブの形にしてにっこりと微笑んでいた。くそ、憎めないやつめ。
俺の演説を聞いてほとんどの女子は納得していた。特に効果があったのは妃奈と美坂さんだった。2人とも顔が真っ赤だった。うん、見てないことにしよ……。
「じゃあ決まりだな!」
匠がそう言うと、俺達の出し物はメイド喫茶に決まった。
結局、この後色々と出し物について話し合った結果、男子達も執事の格好をすること。そして妃奈はカメラの前でメイド姿をしないことに決まった。あと、匠のおかげか、俺もカメラの前ではメイド姿をしないことに決まった。流石匠だ。助かる。
こうして俺達は文化祭に向け出し物の準備をするのだった。もちろんライブの準備もだけどね。
次は文化祭です