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戦場の死神と呼ばれた最強のパパ、さらわれた娘の救助へ異世界に殴り込む ~拳と鉛玉でドラゴンもエイリアンもまとめてブッ殺す~  作者: els


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第6話 未来兵器!? そんなオモチャに用はねぇ!


 「……待って、マッド。出発の間際にもう一つ、あなたに渡しておきたいものがあるわ」


 最下層へと続く巨大な昇降機へ乗り込もうとしたマッドの背中を、サラの声が引き留めたのである。

 彼女は電子端末を操作し、壁面に埋め込まれていた重厚な電磁ロックがかかった小型のケースを、厳重なセキュリティ手順で解錠したのだった。

 プシュッという圧縮空気の抜ける音と共にケースが開き、中に入っていたのは、鈍い銀色の光沢をあやしく放つ、極めて武骨ぶこつなデザインのナックルガードだったのである。

 それは、エリア55の至る所に並んでいる洗練された最新の未来技術というよりは、どこか古代の地層から掘り出された、失われた文明の遺産オーパーツのような、不思議で暴力的な威圧感を放っていたのだった。


 「超高密度合金と、ゲートの向こうで回収された未知の結晶を組み合わせて作った試作品よ。ゲートの向こうから漏れ出る、何かに反応し強化される物よ。パワードスーツの出力にも耐えられる計算だけど……あなたが使えば、文字通り『一撃で城壁をぶちぬく』こともできるかもしれないわ」


 サラの恐るべき性能説明を聞き、マッドはその冷たいナックルガードを無造作に手に取ったのである。

 自らの岩のように大きなこぶしにはめ込むと、まるで自身の骨格に合わせて作られたかのように、指の関節に吸い付くような完璧なフィット感を見せたのだった。

 その凶悪な感触に、彼は思わず不敵な笑みを浮かべたのである。


 「こりゃいいぜ。最新の鉄砲パルスライフルより、こっちの方が性分に合ってる。ゴミ溜めに群がるローチどもを、一匹ずつ丁寧にぶちのめしてやるのには最高だ」


 マッドは満足げにそう吐き捨てると、首から下げた「次元格納装置ディメンション・ポケット」のディスクに意識を集中させ、その重厚なナックルを異次元空間へと無造作に放り込んだのだった。


 ・・・・


 地獄の討伐とうばつ部隊を乗せた巨大な昇降機が、腹の底に響くような重低音を鳴らしながら、最下層である「セクター9」へと容赦なく降下を始めるのである。

 閉ざされた鋼鉄の箱の中で、かつての戦友であるアーサー・スミスだけは、他の三人のような歴戦の傭兵ようへいとは違って、極めて異質な空気をまとっていたのだった。

 彼は全身を最新鋭の流線型パワードスーツで隙間なく包み込み、片目には敵の情報やエネルギー残量を瞬時に分析して視覚化する、高機能なレンズ状の「タクティカル・バイザー」を装着しているのである。


 「バイザーの感度は良好だ。熱源感知、魔力残滓まりょくざんし、スター・カスケイダーの個体識別……すべてが私の網膜に同期されている。マッド、君たちの古いやり方では、今の戦場では一分も持たないよ。このバイザーが示すデータによれば、下の階層はすでに生存者がゼロだ」


 冷徹れいてつなデータに基づくアーサーの警告の言葉に、支給された最新式のパルスライフルを静かに見つめていたヴィクターと、巨大な電磁加速砲レールガンを肩に担ぎ直したマキシマムが、顔を見合わせて鼻で笑ったのである。

 二人は、サラから渡されたばかりの最新の未来兵器をアーサーの胸に手渡すと、自分用に極限までカスタマイズされた、火薬の匂いが深く染み付いた現代の銃火器を取り出し始めたのだった。


 「悪いな、アーサー。どうもその見慣れねえピカピカのおもちゃは、しっくりこねえんだ」


 ヴィクターが手にしたのは、数え切れないほどの修羅場しゅらばを共に潜り抜けてきた黒塗りの超硬ナイフと、ボルトアクション式の頼れる名銃、レミントンM24スナイパーライフルだったのである。


 「命を預けられるのは、自分の手足の延長線上にあるものだけだ。機械に頼りすぎると、いざという時に引き金が引けねえ。俺は自分の指の感覚しか信じねえよ」


 マキシマムも、最新のレールガンではなく、あえて自身の愛用するM60機関銃を手に取り、太い弾帯だんたいをガチャンとけたたましく装填そうてんしたのだった。

 その重く乾いた金属音は、彼らにとって何よりも信頼できる力強い心音のようなものだったのである。

 マッドもまた、貸し出されたパルスライフルの安全装置を静かに戻し、アーサーに向かって放り投げると、代わりに背中から使い慣れたスパス12ショットガンを引き抜いたのだった。

 そして、彼の太い腰に巻かれたホルスターには、あの象をも撃ち殺す愛用の44マグナムが、殺意を秘めて鈍く光っているのである。


 「結局、土壇場どたんばで頼れるのはこれだけだ。道具が賢くなりすぎると、使う側のかんがなまる」


 マッドの絶対的な経験に基づく言葉に、ヴィクターが全員そうだなと深く納得し、低い声でつぶやいたのだった。


 「やっぱり使い慣れた銃(相棒)じゃねぇと信用できねぇぜ、なぁマキシマム」


 「ああ、そうだ」


 マキシマムも巨体を揺らして力強く同意したのである。

 彼らの時代遅れとも言える武器の選択を見たアーサーは、タクティカル・バイザーの向こうであきれたように肩をすくめたのだった。


 「……信じられん。博物館に並ぶような旧式兵器で、あのローチの群れに挑むというのか? 合理性の欠片かけらもないな。君たちは時代に取り残されているんだよ」


 「おいおい、アーサー。お前、長年のデスクワークで勘が鈍ってるんじゃねえか?」


 マキシマムが、インテリの戦術顧問をバカにしたような豪快ごうかいな笑い声を上げるのである。


 「戦場ってのは、計算通りにいかねえから面白いんだ。データの向こう側で震えてるのがお似合いだぜ、プロフェッサー」


 「……フン、死んでも私は救護班を呼ばんぞ」


 アーサーは毒づきながらも、その口元にはかつての仲間たちと共に再び地獄へ向かうことへの、かすかな笑みが浮かんでいたのだった。


 やがて、鋼鉄の昇降機が目的の階層へと到達し、腹の底を揺らすような衝撃と共に停止したのである。

 巨大な防爆扉が「プシュッ」という重厚な蒸気音を立てて左右に開くと、そこは先ほどまでの清潔で未来的な科学施設とは完全に切り離された、地獄の入り口であった。

 マッドが最初の一歩を踏み出した瞬間、軍用ブーツの底から「ぐちゃり」という嫌な感触が伝わり、湿った音が静寂に響いたのだった。


 「……なんだこのゴミ溜めは。ひでえ臭いだ」


 マッドが顔をしかめて、低く吐き捨てるようにつぶやいたのである。

 視界に飛び込んできたのは、セクター9の壁一面を覆い尽くす、白濁はくだくとした巨大なクモの巣のようなねっとりとした粘液だった。

 施設を照らす赤色の非常用ライトが、その粘液に反射してヌラヌラと不気味に波打っているのである。

 そして、その粘液に絡め取られ、無惨むざんに食い荒らされた、見たこともない怪物の死骸しがいがいくつも床に転がっていたのだった。


 「……うわ、こいつはひどい。クソ尿と腐った肉を混ぜたような臭いだぜ」


 ヴィクターが鼻をつまみ、銃を構えながら警戒を怠らず死骸に近づいたのである。


 「……おい、なんだこの魔獣は?」


 マキシマムが、粘液にまみれた怪物の死骸を、重いブーツの先で乱暴に突き上げたのだった。


 「俺はこんなヤツ、見たことがねえぞ。ゴブリンよりも三倍はデカい。筋肉の塊みたいだが、腹と背中に大穴が開いてるぜ」


 マキシマムが死骸を思い切り蹴飛ばすと、それは「ゴロリ」と無機質に転がり、ひしゃげた醜悪しゅうあくな顔がライトに照らし出されたのである。

 豚のような鼻に、突き出た鋭い牙。

 だがその全身は粘液で白くコーティングされ、中身を吸い尽くされたミイラのように無惨に干からびていたのだった。


 「君たちは知らないのか。これはオークという魔獣だ。ゲートの向こう側では、ごく一般的な兵隊種だよ」


 アーサーが、教え子に講義でもするように冷淡な声で答えたのである。


 「……このオークってヤツ、腹が内側から破裂したみたいになってるけど……なんなんだ、これ」


 ヴィクターが眉をひそめて、愛銃ライフルのストックで死骸の裂けた腹部をぐいぐいと執拗しつように突っついたのだった。

 それは刃物で綺麗に切られたような傷ではなかったのである。

 まるで、何か恐ろしい異形いぎょうの存在が、内側から無理やり食い破って飛び出してきたかのような、むごたらしい破裂の傷跡だった。

 その傷口の周辺には、どろりとした黄色の粘着質な液体がこびりつき、腐敗臭とはまた違う、鼻を突く酸っぱいような異臭を放っているのだった。


 マッドもまた、足元に転がっていた別のオークの死体を踏みつけ、その大きな穴が開いた腹部を冷ややかに見つめたのである。


 「こいつ腹が減って、軍用手榴弾パイナップルでも食ったのか?」


 アーサーはその凄惨せいさんな死骸を見ても、表情一つ変えず、何もコメントしなかったのである。

 彼のタクティカル・バイザーには、ローチが魔獣の体内に卵を産み付け、成長した幼体が中から腹を突き破って誕生するという、おぞましき生態記録がはっきりと表示されていたのだった。


 「私の知ってるオークは、もっと頑丈なはずだがな。こんな無残な死に方をする魔獣じゃない……」


 アーサーは冷徹れいてつに計算していた。

 今、この恐るべき繁殖の事実を教えてしまえば、こいつらは引き返すと言い出すかもしれない。

 ローチの真の恐怖を知る前に、まずはゲートまで歩いてもらわなくては困るのだと、彼は感情を殺して思考を巡らせたのだった。

 彼はただ無言で、闇が深くなっているセクター9の奥地を静かに見つめたのである。

 一行が奥へ進むにつれ、その鼻を突く異臭はさらにひどくなり、周囲の生々しい殺意が一層強くなってくるのだった。


 「ローチどもが、ここを住処すみかにしているようだな……」


 マッドがスパス12ショットガンのフォアエンドを力強く引く。

 ガチャン、という重厚な金属音が静寂の中に鋭く響いたのだった。

 壁に張り付いたねっとりとした液体が、まるで生きているかのようにゆっくりと、糸を引きながら床へと滴り落ちる。

 その粘液の向こう側……暗闇の奥から、無数の「カサカサ」という、硬い足が金属の床を叩く不快な音が確実に近づいて来たのである。


 「殺虫剤《弾丸》の準備はいいか、野郎ども」


 マッドはショットガンのセイフティを静かに外し、前方の闇を獲物を狙うたかのように睨みつけるのである。


 「邪魔するヤツらは一匹残らず、たたきつぶしてやる。……ゴミ虫ども」


 暗闇の中から、漆黒しっこくの光沢を放つ巨大な影の群れが、一斉に姿を現したのだった。



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