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戦場の死神と呼ばれた最強のパパ、さらわれた娘の救助へ異世界に殴り込む ~拳と鉛玉でドラゴンもエイリアンもまとめてブッ殺す~  作者: els


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第5話 戦闘マシン!? 戦場の死神たちの再集結!


 マッドを乗せた双発の軍用ヘリ、UH-60「ブラックホーク」が、ネバダ州に広がる灼熱しゃくねつの荒野を暴力的に切り裂くように進んでいくのである。

 機内のシステムと強制的に共有させた軍用無線の無機質な音声が、ヘッドセットを通してマッドの分厚い耳に直接届いたのだった。


「知らねぇコールサインだ」


 特殊部隊の最前線で数多あまたの死線を潜り抜けてきた経験から、マッドは飛び交う未知のコールサインを聞き、ここが地図に存在しない特別な場所であることを再認識したのである。


「君はまだ知らんでも良い」


 トラウトマン大佐はマッドに冷徹れいてつな声でそう告げると、操縦席のパイロットに向かって素早いハンドサインを送り、何かを秘密裏に伝えていたのだった。

 その直後、近隣の軍事施設であるエリア51からスクランブル発進したとおぼしき最新鋭の戦闘機が、すさまじい轟音ごうおんと共にブラックホークの真横を通過していくのである。

 ブラックホークは戦闘機が進んだ先へと機体の進路を大きく変え、やがて、1960年代に作られたかのような赤錆あかさびの浮いた古臭い施設群が荒野の果てに見えてきたのだった。


「ここがエリア55? ダミー施設、常套手段じょうとうしゅだんか……つまんねぇことをしやがるぜ」


 マッドが忌々《いまいま》しげにつぶやくと、ブラックホークは偽装された巨大なヘリポートへとゆっくりと降下を始めたのである。

 機体が着陸した次の瞬間、大地が割れるような重低音と共に巨大な地下ハッチが開き、ヘリコプターごと深い地下の闇へと飲み込むように吸い込まれていったのだった。


「マッド、ここは軍の最高機密だ。口外無用なのは覚えているな」

「ああ、わかってる。さっさと案内しやがれ」


 重厚なエレベーターが果てしなく下った先は、太陽の光が届かない地下千メートルの隔絶された空間であった。

 分厚い扉が開き、マッドの目に飛び込んできたのは、現代の科学技術を数百年も先取りしたような、白銀とクロームに冷たく輝く未知の光景だったのである。


「……少しはマシな掃除用具がありそうだな」


 マッドが鉄のブーツを鳴らして地下施設に足を踏み入れると、一人の女性が規則正しい足音を響かせて歩み寄ってきたのだった。

 軍人らしく切り揃えられた短い髪に、決して曲がらないはがねのような意志を宿した鋭い瞳である。

 彼女こそが、この極秘施設の全権を握る現場責任者、サラ・ヴァレンタインだった。


「あなたがマッド・ボーンズね。話は聞いているわ。娘さんのことは……残念だったわね」


 サラは、マッドの巨大な身体から絶えず漂う圧倒的な威圧感と殺気を感じ取りながらも、微塵みじんおくすることなく機密区画の重厚なゲートを開いたのである。

 ゲートの奥に広がっていたのは、まさにSF映画から抜け出してきたかのような未来の兵器庫であった。

 圧倒的な防御力を誇る重装甲のパワードスーツや、青白い電磁光をバレルに宿すパルスライフルの試作品が、整然と棚に並んでいたのだった。


「これらはすべて、数百年後の未来から『逆流』してきたオーバーテクノロジーよ。詳しい事情は説明はできないけどね」


 サラの誇らしげな言葉とは裏腹に、マッドはそれらの未来兵器を欠伸あくびが出そうなほど興味なさそうに眺めているのである。


「あなたの装備はこれよ」


 サラが自信満々に手渡してきたのは、プラスチックでできた、うすい銀色の安っぽい作りの極端に軽い銃であった。

 マッドの巨大な手の中では、まるで子供向けのオモチャのようにしか見えない代物しろものである。

 マッドは、不燃ゴミでも見るかのような怪訝けげんな表情でそれを見ていたのだった。


「XM910EMプロトタイプ……電磁誘導パルスライフルよ、簡単に言えば小型レールガンね。最新のM4カービンの性能をはるかに超えるスペックを…………」


 サラの熱を帯びた性能説明が続くが、マッドは全く聞いている様子がなかったのである。

 鉛の弾を火薬で撃ち出す旧式のアナログ兵器に絶大な信頼を置く彼にとって、反動の軽い電子基板の塊など、実戦で使い物になる気はしなかったのだった。

 あきれたようにため息をつき、サラは続けて保管棚からこぶしサイズの小さな銀色のディスクを取り出し、マッドに手渡したのである。


「これを使いなさい。『次元格納装置ディメンション・ポケット』。そのディスクを身につけて強く念じるだけで、あなたの持つすべての装備を異次元空間に格納し、思考の速度で取り出すことができるわ」


 マッドはその異常な機能の説明を聞くと、ディスクを首の太いゴールドチェーンに無造作に引っ掛け、ニヤリと凶悪に笑ったのだった。


「リリーの好きなマンガにこんな道具があったな……四次元の物置か? これは悪くねぇ」


 愛する娘の記憶と重ね合わせ、マッドは未来の道具だけはあっさりと受け入れたのである。

 だが、サラの表情はすぐに血の通わない険しいものへと変わったのだった。


「マッド、ゲートの向こうには想像を絶する『魔獣』たちが跋扈ばっこしているとデーターが示しているわ。最悪なのは、宇宙からの侵入者であるスター・カスケイダーたちが、その魔獣たちと交配を始めていることよ。奴らは学習し、進化している。従来の兵器が通用しないほど強靭きょうじんよ。そして、ドラゴン種がいることも判明している。純血のドラゴンは巨大すぎてゲートを通れないけれど、ゴブリン以外に強力な魔獣がいることをきもめいじて」


 SF映画とファンタジーの悪夢を煮詰めたような最悪の生態系報告に、マッドは深く眉間みけんしわを寄せたのである。


「ドラゴンだか何だか知らねぇが、俺の娘はどこにいる」


 マッドにとって、世界の危機やドラゴンの脅威など、道端の石ころ以下の価値しかなかったのだった。


偵察ていさつドローンのデーターよれば、ゲートを抜けた先に巨大な『神殿』があるわ。ゴブリンたちはドラゴンの配下に過ぎない。リリーちゃんは、その神殿に生贄いけにえか何かとしてとらわれている可能性が高いわ。……そして、その神殿へ至る唯一の道を守るのが、あなたの言う『ローチ』の王、クイーンが支配するセクター9よ」


 サラの言葉に、マッドの瞳の奥で青白い殺意の炎が激しく燃え上がったのである。


「神殿、か。……ありがとよ、サラ。地図は頭に入った」


 最愛の娘の居場所が確定し、マッドは巨大な両拳をバキバキとすさまじい音を立てて鳴らしたのだった。



 無機質なブリーフィングルームを出ると、マッドは本格的に出撃の装備を調えていくのである。

 血まみれになった私服を脱ぎ捨て、エリア55が誇る最新鋭のコンバットスーツ、すなわち強固な重装甲のパワードスーツへと素早く着替えたのだった。

 各部のロックが重低音と共に起動し、その巨大な全身から放たれる威圧感は、かつて戦場の最前線で「死神」と恐れられた特殊部隊時代の姿そのものであった。


 「装備は完璧ね。でも、一人で行かせるわけにはいかないわ。最高の突入チームを紹介するわ」


 サラがパネルを操作して奥の重厚な防音ドアを開け放つと、そこにはマッドにとって懐かしくも、いまいましい硝煙しょうえんの記憶と共に魂に刻まれた三人の巨漢が、椅子に座って待ち構えていたのである。


 「よお、死神さんよ。ずいぶんと派手な格好で再会じゃねぇか」


 最初に野獣のような声を上げたのは、獲物を狙うたかのように鋭い眼光を放ち、手慣れた手つきで超振動ちょうしんどうナイフの刃を研いでいた男、ヴィクター・ドレイクであった。

 部隊の中では比較的短身ではあるものの、その全身は極限まで鍛え抜かれたはがねのバネのような高密度の筋肉で構成されているのだった。

 彼はかつて、マッドと共に灼熱しゃくねつの中東の砂漠に取り残された際、音もなく敵小隊をナイフ一本で完全に壊滅させた「鋼鉄の刺客しかく」である。

 ある時は気配を絶つ暗殺者アサシンとして、またある時は百発百中のスナイパーとして暗躍する、隠密行動ステルスに特化した危険な男だった。


 「ヴィクター……お前、あの爆発で死んだと聞いてたがな」


 「地獄の門番に『お前のナイフは痛すぎる』って追い返されたのさ」


 「相変わらず不吉な挨拶だな」


 マッドの軽口に呼応するように、今度は山のような巨大な体躯たいくを誇る男が、地響きを立てて立ち上がったのである。

 巨大な重機関銃ガトリングを、まるで小さな赤ん坊でも抱くかのように軽々と肩に担いだ巨漢、マキシマム・コルトだった。

 その丸太のような太い腕は、常人のサイズではなくマッドの太ももほどもある異常な太さを誇っているのだった。

 彼はかつての血で血を洗う戦場で、マッドが己のこぶしで強引に道を切り開くその後ろから、絶え間ない弾丸の雨を降らせて部隊の退路を確保し続けた「歩く要塞ようさい」である。

 味方からは「人間砲台」とも呼ばれ、あらゆる大型火器や重機関銃の扱いに精通している、誰よりも頼りになる男だった。


 「マキシマム、その馬鹿デカい図体は健在か。パワードスーツが破裂しちまうんじゃねぇのか」


 「ハハッ! 俺専用の特注サイズを作らせたのさ。マッド、お前のその『鉄拳』、錆びついてねぇだろうな?」


 そして、三人の最後に優雅な動作でゆっくりと立ち上がったのは、まるでギリシャ彫刻のように美しく整った褐色の筋肉に、シワ一つなく完璧にプレスされた軍服を着込んだ男であった。

 知性的な銀縁の眼鏡めがねをかけ、電子タブレットを素早く操作するその理知的な姿は、どう見ても軍の上層部にいる事務方のエリートそのものである。

 だが、軍服の下に隠されたその恐るべき肉体美は、かつて部隊で「プロフェッサー」という異名で呼ばれた伝説の突撃兵、アーサー・スミスのものだった。

 泥にまみれた最前線の突撃兵としての面影おもかげは完全になくなっていたが、あらゆる過酷な戦場でマッドと背中を預け合い、幾度もバディを組んだ最も信頼できる男である。


 「久しぶりだな、マッド。君がモンタナでパンケーキを焼いている間に、私はこのエリア55の戦術顧問に就任した。君の暴力をデータ化して管理するのは、なかなかに骨が折れるよ」


 「……アーサー。お前、銃をペンに持ち替えたのか」


 「効率の問題だよ。ペンの方が、一度に殺せる敵の数が多いこともある」


 マッドはかつての戦友たちを見た瞬間、フンと短く鼻を鳴らしたのだった。


 「……大佐、冗談だろ。俺は一人で掃除すると言ったはずだ。こんなお利口な連中を連れて行ったら、俺の仕事が増えるだけだぜ」


 「一人で死なせて、リリーちゃんに泣かれるのは御免なんだよ」


 ヴィクターが研ぎ澄まされたナイフをさやに収め、マッドの分厚い肩を軽くたたいたのである。


 「俺たちの命は、あの日お前に預けたままだ。利子を付けて返してもらうぜ」


 マキシマムが腹の底から響くような声で豪快ごうかいに笑い飛ばしたのだった。

 アーサーは眼鏡めがねの位置を直し、戦友としての深いきずなを感じさせる静かな笑みを浮かべたのである。


 「君の暴走を止めるストッパーが必要だ。……行こう、マッド。地獄の底へ」


 マッドは無言で愛銃である44マグナムのシリンダーを滑らかにスイングアウトさせ、胸ポケットにしまったリリーの小さな靴を、そっと太い指ででたのだった。

 その瞬間、彼から放たれる青白い殺気は、周囲の気温を物理的に数度下げるほどに恐ろしく膨れ上がったのである。


 「ローチの巣を焼いて、娘を救出する。……邪魔する奴は、たとえドラゴンだろうが、異世界の神だろうが、この拳でブチ殺してやる」


 最強の脳筋集団が、数世紀先の未来からやってきたオーパーツを身にまとい、地獄の釜底かまそこであるセクター9へと直接繋つながる巨大なエレベーターへと歩みを進めるのだった。

 昇降機のロック解除を告げる無機質な警告音が、静まり返った広大な地下施設に長く、そして重々しく響き渡ったのである。


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