ありがとう
。 。 。
「グルグル巻きの簀巻きにして東京湾に沈めてやる!って……よく聞くけど……」
下は地獄に繋がっているというエレボスへの穴
アタシは今、……吊られています
「エレボスの穴に沈められそう!?」
嫌だよ!?下のほうからなんかオイデって聞こえるよ!?(幻聴)
いやぁあああああああああ?!
「なんでアタシがこんな目に!?」
「えっとぉ~……うふ★」
聖女との会話終了
酷すぎる!
横に居た巫女は叫んだ
「大丈夫です!現人神様が媒介となってくれれば、我々も力を出し、完全とはいえないまでもエレボスの穴を防ぐことができるかもしれないのです!」
「『かも』とか『完全じゃない』とか!信憑性ゼロなんですけど!?」
巫女が微笑んだ
「OKでーす!皆さんスタンバイしてくださーい!」
「そうゆうキャラだっけ君――!?」
二人の神官が此方を向いた
「いくわよ、ユイ……貴女に懸かってるんだから」
「うぅ、嫌なプレッシャー」
「では、……はじめます!」
二人の力の形が炎として浮き上がり、その身を上回った……お互い色の違う炎だが反発しあいつつも最後には交じり合い、強い炎の色となり、また再び天に向かって燃え上がった。
普通に思った
綺麗って
「ユイ!」
って、名前呼ばれても……
良く見ればみんなも祈るような形でアタシに力を送ってくれていた
温かいチカラの波動が身体の中でめぐるのが分かる……でも
「……駄目だよ」
実際にエレボスの穴を対峙したら分かる
「エレボスの穴を塞ぐには……弱すぎる」
圧倒的な、この差
「みんなツライならもうやめたほうが……」
「いや、大丈夫だ」
マルクムが膝をつきながら言い切った
「ココでやめたら、恐らく次はない」
「おいアホ女!もっと本気出せ!」
「あ、アホ女じゃないもん!ムイトのバーカ!」
って、喧嘩している場合じゃないよね。うん
でも、無理だよ
「諦めよう、次の手を……捜そうよ」
この差は、埋まらないから
「また、そうやって逃げんのかよ」
「!」
トリュー?
「変わるんじゃなかったのかよ!頑張るんじゃなかったのかよ!できること、するんじゃなかったのかよ!?」
「だって……」
「そうやって、さっさと諦めて、いいことあったのか!」
「!!」
トリューは一度大きく息を吐いた後、もう一度大きく叫んだ
「太郎君と別れた意味は……なんなんだ!」
……太郎君
『―――ごめんね
アタシは、新しいアタシになりたいから。過去のアタシの象徴である君は連れてはいけない。
寂しいけど、お別れね』
何もない家の中での独り言
「私は、何のために生まれてるんだろう」
生まれたから
「私はどうするべきかね」
知らない
「私は、死ぬべきかなぁ?」
できるならね
「……はぁ」
自問自答でこんな自分に対して冷たい反応しかできないのだろうか。自分なんだからやさしくてもいいのに……
「自分が嫌いなのかな」
アタシだけじゃない、みんなも嫌いなんだ……だってアタシは『漆黒の毒婦』だから
「だって、アタシにはなんの力もないんだよ、……みてよ、ほら」
これでも最大出力の力を放出しているが駄目なのだ
「空っぽなんだよ、もう」
もう、アタシはなんの力も持っていないの
ただの無力な女なんだよ
「駄目なんだって」
「それ以上言ったら、殺すぞ!」
イチルが拳を握った手で立ち上がった。
「泣言ほざいて何が出来るんだよ!綺麗ごとだけじゃ……口先だけじゃ何にも出来ねーんだよ!」
「ユイ、笑う~ヴェルザも頑張るから」
「全く、アンタは相変わらず仕方のない泣き虫だよ」
「ネーネ泣き虫~」
「泣き虫だな!」
マリミアも、クロもクナも……ヴェルザもみんなみんな、立ち上がった
動くのもつらいはずなのに立ち上がる
「こぉぉらぁ―――!ちゃんとしなさいよ!いつまでうじうじしてるのよ!」
「え!マナ?!」
「そうよ、アンタが呼んだんでしょうが……呼んだなら、責任もって帰してよね!」
委員長の腕の中には太郎君がいた
懐かしい
心なしか、微笑んでいるように見えた
「ユイ」
トリューが手を伸ばした、届くはずのない手のひら
「空っぽなんかじゃない、俺達が居るだろ」
「……うん」
光の強さが増した
「!?」
「お手伝いします~エレボスなんかに神様の世界滅ぼされたらたまりませんし~」
「フェアナ」
『ユイ』
神様が身体のから強い光を放った
『わずかですが、使ってください』
力が一気にみなぎる、これならいけそう!
「若草雪衣!いっきまぁああああああああああす!!」
力を一気に穴に向かってたたきつけた。
光が一切の音と景色を遮断する。
全てが視界に見えるようになった頃、穴は……塞がって跡形もなくなくなっていた
「いやったぁああああああああ!!」
みんなが歓喜に飛び上がり吊るしから解放されたあたしのもとへと駆け寄ってきた
「アンタはやっぱり毒婦なんかじゃないよ!」
「ユイサマ、ありがとうございます!」
「よくやったなー!」
「ユイ」
遠くからトリューが駆け寄ってきた。
「わ」
おもむろにアタシを抱き上げると皆が笑った。
マナの抱いている太郎君と眼が合った
―――モウ、ダイジョウブダネ
うん、ありがとう太郎君
アタシはもう空っぽじゃない、みんなが、大切なみんながいるんだ……
だからもう、大丈夫
アタシは不幸で可哀想な、『漆黒の毒婦』なんかじゃないよ
長い長い拝読ありがとうございました^^
また短編を出すかもしれないと思うので、そのときにでもまたお会いしましょう
GOOD LUCK TO YOU !!