源氏物語の世界⑥物忌みと方違え
平安時代の重要な習慣に、物忌みと方違えがあります。
物忌みとは、神事の前に身を清めたり、日や方角が悪い時に家に籠って身を慎むこと、だそうです。
物忌みの間は飲食や行いを慎み、穢れを避けなければなりません。高位の人の場合は、仕えている人達も一緒に物忌みをします。帝ともなると、朝廷を挙げての物忌みになったようです。
言葉も慎まなければならないんですが、あの女性談義はよかったんでしょうか・・・
雨夜の品定めが行われた時、宮中の物忌みが続いていたとあります。これが梅雨の時期だということが後でわかりますが、旧暦の五月にあたります。五月は田植えの時期で、古来、田植えを行う早乙女たちが、家に籠って身を清める習慣があったそうです。米は神様にもお供えする神聖な食べ物で、米作りに関する行事は、豊穣を願う神事にもなりました。現代にも受け継がれてますね。
田植えの時期は地域によっても変わりますが、現在でも五月中旬から六月上旬のところが多いようです。
それに加え、五月を悪月とし、菖蒲を使って災厄を祓う行事が行われた古代中国の習慣も入ってきました。
そうした理由で、旧暦の五月は物忌み月とされていたのです。
方違えは陰陽道と関係があります。
安倍晴明で有名な陰陽道。平安時代に大流行したそうです。
古代中国でこの世の万物を説明しようとした「陰陽五行説」というものが元になっていて、天文学や暦とも関連していますが、様々な吉凶を占う技術として定着しました。
占いをする部署が、国の機関にあるなんて、現在では考えられませんが、人々はこの占いに沿って行動しました。
日が悪ければ家に籠って動かず、方角が悪ければ避けるといった具合で、それが全てに優先されるような状態だったようです。なにしろ、合戦の時まで、今日は日が悪いから出陣しないだとか、方角が悪いからいったん別の方向に進んでから目的地に向かう、なんてしていたくらいです。
ちょっと縛られ過ぎじゃないでしょうか。
平安貴族は、一日の始めにまず今日の運勢を確認しました。方角が悪ければ、欠勤しても許されます。いいですね。
方位神というものがあり、凶神がいる方向は方塞がりで行ってはいけません。これを方忌みといいます。無視すると祟りがあります。
どうしても行かなければならないとか自宅に帰りたいという場合は、一旦別の方角の家に宿泊してから目的地に向かいました。これが方違えです。
どこに行くでもなく家にいても、方塞がりの方角で工事があると方忌みに触れてしまうので、方違えが必要になるそうです。
避けるべき方位神は、天一神(中神)、太白、大将軍、金神、王相の五つがありますが、彼らはじっとしていないで動き回ります。その周期はそれぞれで、毎日変わるのもいれば一年留まるのもいます。
なんて迷惑な事でしょう。
さすがに平安人も面倒に思ったのか、初日に方違えすればOKとか、一度方違えすればしばらくはOKとか、規則を緩めていました。
方違え所となった家は、客人をもてなすのが習いだったようですが、相手によってはなかなか大変な事だったでしょうね。
非常に面倒に感じる習慣ですが、物忌みも方違えも、ずる休みとか、他の女性のところに行くための口実として使う人もいたようです。
平安人も、ちゃっかりしたとこあるんですね。




