王伝編集官 奥様達のお茶会 ①ナリフリカマッテイラレマセンノ
「まぁ、それでは今回の騒動は解決しましたのね」
「えぇ、もう娘の早とちりだったんですのよ。お恥ずかしいわぁ」
「エイドリアン様の肖像画依頼で次はご自分もだと思われたのでしょう。それで、どうなんですの?」
「そうですわ、先日お見掛けしましたわ。かわいらしいお嬢さんとご一緒でしたでしょう?」
「彼女はマラストーリス国へ留学してた頃の友人の娘さんですの。こちらで観光する間お預かりしてますわ」
アラステイ国の王城はお茶会に向いていない。室内は美しく設えているが、奥様達は外がよろしいのです。歴史の長いこの国は城に機能美という概念がなかった。なので茶会といえば各参加者が持ち回りで行う。旦那様が城でお仕事中、奥様は社交という名のお仕事をされているのです。王弟で宰相のユージン・カルツ殿の奥方は今日のお茶会中そわそわ。その視線はバラを中心に整えられた小ぶりながら品のいい庭園を抜けた先に向けられ
(今日もいつも通りね。弟さん達追いかけて、あれくらいの押しの強さがいいわぁ)
「ではその方が孫のお相手になるのかしら?」
「お義母様、慌てないでくださいませ。一時お預かりしているだけですわ」
「あらそうなの。でもあなたとてもうれしそうよ?」
うふふと意味ありげに微笑んで紅茶を一口飲み気持ちを落ち着ける。義母は義父亡き後、一人この館に住まいを移した。なんでも知人の奥様が亡くなられたので、その家の幼子達の世話をしているのだそうで。元気いっぱいの子供たちは気落ちしていた義母に元気をわけてくれ、こうしてお茶会も本来の役割をしてくれるようになったのだ。
こうして宰相の奥方の心配事は娘、そして義母と憂いはなくなり、いや一番悩ませる案件だけが際立つことになった。今まで手を打ってなかったわけではない。決め手がなかったともいう。彼女は美しくなった。学院でも人気がある。そして来年中等部を卒業する。そうなると成人でいつ縁談がきてもおかしくない。
(お父様の後を継いで画家を目指している今が一番のチャンス、児童書の挿絵を頼んで正解ね)
「お義母様こそポール君達と過ごされてから楽しそうでなによりですわ」
「ええ、とても。あら、そういえば最近あの子たちが言ってたわ。お姉さんの様子が変だって」
「変とは?」
「どこかぼんやりして話かけても上の空ですって。学院で好きな人でもできたのかしらねぇ」
お義母さまはうっとりとため息をつかれたけど、なんてこと!こうしてはいられませんわ。向こうはどうなったか確認しないと。
同時刻、別のお茶会現場では。
「なんていうか初々しさが足りませんわ、メイを見習えとは言いませんけど」
「叔母様それはあんまりです・・・」
ここは秘密のお茶会。秘密といっても怪しくはない。ただこの場にいるのは3人。所作について私に負けたと思いしょんぼりしたのはカルツ宰相の娘さんのメイフェリア嬢。対して私にダメ出しなさったのは王妃さま。ここは王妃さまの私室。ひそひそ話にはいい場所です。こそこそしたい私にもいい場所。王城で一番華やかでくつろげる場所なんですけど緊張しまくってます。はぁ。にしても初々しさですか。母上だけじゃ間に合いません。さすがに酒場みたく順調とはいえないです。
「でも所作は2人とも問題ありませんよ。うちのリンシェラが見習ってほしいくらいね」
「そろそろお兄様がいらっしゃる時間ね。ミアさんなら大丈夫ですわ」
私の手を取りぐっと握りしめ根拠なき保障されても。微笑むくらいしかできません。用意していただいた水色のワンピースの袖のレースが繊細で目が痛いですぅ。涙目になった私をさらに励ますように
「私たちもうお友達ですもの!」
勢いよく手を上下に振りまわすものだから、ゆるふわにセットしていただいた髪もふわんふわん舞ってます。演技開始ですね。これから帰宅されるエイドリアン様の馬車に同乗です。未婚の男女って2人きりにしないですよね、ふつー。収集つくんでしょうかね・・・あぁ忘れたい
まもなく5章完結です。
その後は別立でサイドストーリーもはじめる予定です。
最初はサフィです。ロビーオ君、ジェノス君までは決まってますが、ご希望とかありますかね。
人物紹介もかねてますのでぜひどうぞ。




