王伝編集官 36話
清々しい朝です。早朝の南門を出て、今日はテラとサフィの新ダンジョン行きのお見送りです。この先に街はなく、通るのは腕試しをしたい冒険者さんくらい。高レベルな依頼向けなので他の人もいないです。
「絶好の攻略日和だねぇ。」
朝特有の気持ちいい空気をめいっぱい吸い込んで言う。きっと僕はこの先も今の彼女の気持ちを理解できないと思う。ピクニックに行くような朗らかな声で、何日かかるかわからない未知のダンジョンへ向かうのだから。それにダンジョンの中に天気の良し悪し関係あるのかというつっこみ入れる人物もいないし。いるのはラディ王子とリノリスのみ。対して調査に向かうのは4名。ベルデミン、エウルピケ、そしてテラとサフィ。常に冷静な人、なにやら不機嫌な人、うかれてる人。よくわからない人。そう、彼は不機嫌でして・・・
「なにをふて腐れている、負けを認められないのか?」
「そんなことは・・・」
「それならすべき事はわかるな?」
「はい・・・」
しゅんとしてしまった弟をやさしく諭す場面を見たテラは、思う所があるのかないのか。断定できないのはやはりいつものごとく、後ろ姿でもわかる仁王立ちでえらそうだから。
「ねぇ、次は討伐数で勝負しない?それなら全力出せるでしょ?」
そういうテラも本気装備。こげ茶色のショートパンツに黒ブーツ。黒革ベストに腰から下げてるのは。ショートソード・・でいいんだろうか。悩むなぁ、突き仕様だもの。忍んでいる人みたく一撃必殺ねらう?パワーはともかくスピードも競うってことだねぇ。正しく乗せられたエウルピケ王子は
「もちろんだ、次は負けない」
初めて見る頼もしい顔。こういうのはテラの得意分野だ。自分の力に過信している人を見るとそれをへし折り、その後のフォローもばっちりとか。悩まし気な色気を振りまいてた小悪魔をさわやか熱血美少年に仕立てるんだもの。兄王子も満足気です。
「では参ろうか」
「迷惑かけますがよろしく頼みます」
「ラディ、そこ断定?ちょっとはぼかしてよ」
「それなら少しは否定してね」
ラディ王子はにっこり笑うが目は笑ってない。そして目を逸らすテラ。このへんも負けず嫌いなのです。なのでこっちに目を向けると悪い笑みを浮かべ「リノー、いってくるよー」と抱き着いてきた。さらに耳元で
「(お見合いがんばってね)」
「!~~~~」
(ちがうーーー、ってかどこからもれたー)
罪な笑顔を残したまま3人の元へ向かうと、ベルデミン王子はテラとサフィを抱えて走ると言う。両手に2人を抱きかかえさっそうと走り去る。なんだかとても疲れた・・・ラディ王子はリノの肩にポンと手をのせて
「リノも戻ったら支度だよ」
---幕間--- お顔と声にモザイクフィルター
いえね、疑っている訳でなないんですのよ。でもあの子見た目はいいのに態度で損してますでしょ。慣れさせたいのにこの国には勇気ある子がいなくて・・・ それであのお話聞きましたの。「偽装」ですってね。素敵だわ。ちゃんと女の子になれるんでしょ。うちの子を騙せるのはあなたしかいないの。設定は、そうねぇ。マラストーリス国から観光に来ているお嬢様ってことにしましょうね。お洋服はこちらで用意するわ。だからね、お願い。
「わたくしに孫の顔見させてーー」




