王伝編集官 35話
---幕間--- 姫さんの休日 「影」おせっかいをやく
初めて会った時は親父さんの足元に隠れてこっちを見上げてたっけ。しゃがんで目線を合わせたらなにが面白いんだか、好奇心で紅い眼をきらきらさせててさ。黒ずくめで顔も眼だけしか見えないのによ。そういや、その理由聞いたことなかったな。
白い寝具と夜着に包まれて安らかに眠っている。起きるまでそのまま待つ。こっちの大陸は危険がないとはいえのん気だな。子供の時以来か、こんな顔してるのは。うなされてる訳でもなく、眠りすぎでもない。他に変な症状はないということか。ただ1つを除いて。さらに近づく。目を閉じた顔めがけて・・・
「ん・・・むにゃ、はっ!・・・・・・」
思いっきりおでこぶつけやがった。残念ながら強度はこっちが上だったがな。涙目でおでこをさすってこちらを睨む。しゃーない、気が付いていないなら警告しといてやるか。
「忍んでない密偵の査定はやったことありませんわ」
「その必要はない。今日と明日暇もらうからな」
「どこにいきますの?」
「行かないのはお前だ。今日と明日は人前に出るなよ。」
「どういう・・・」
わかってないようだから肩にかかった髪をすくって匂いを嗅ぐ。案の定移っている。本人にはこれがわからないのか。
「昨日食っただろ。それの匂いが体から染み出ている。そのまま出るとどうなるかわかるな」
そう言うと黙り込んだ。どういう感覚か思い出したんだろう。遅れて顔が赤くなりそして青くなった。獣人王子達と違い同行者が多い。若手の将来有望な士官や文官にトラウマを残す真似はできまい。
「まぁ、色気のねぇ姫さんがもてもてになる所を披露できないのは残念だがな」
にやりと笑い手にしていた髪にそのまま口づけすると再度顔が赤くなる。これで他大陸まで轟く美姫かね。顔は見せてないがため息がばれた。あぁ、怒ってら。マクラを投げつけ
「でてけーーー」
思わぬ休暇だがそのあいだに街でも探っておくか。別に飲みたい訳じゃないぞ。
そして2日後にベルデミン王子によって未到達のダンジョン発見の知らせがもたらされた。これによりラディアス王子の計画の一部が前倒しで進められる。南に向かう街道の整備と大森林の間引き。変異種は陽の差さない場所に発生しやすく、狂暴かつ元の種族とは関係なく魔法や技を使う。なので変異したものをひとくくりで変異種と分類している。未到達のダンジョンならさぞ多くいるだろう。ベルデミン王子が弟をつれて再び行く準備をしていると聞きつけ、喜々とした人物がいた。
「はーい、私たちもいきまーす」
「え?」
まるでカフェにランチでも行くようなノリ。聞いてないよという顔のサフィの腕をむりやり組んでテラはのたまう。「ふふふ」とうすら笑いで、すでに心ここにあらずの顔だ。
「出発は明日。それまでに準備しておいて。」
「楽しみだなぁ、初踏破。」
「調査じゃないのか。」
「うん、そう踏破。」
「・・・」
突っ込むサンドは諦めた。ここには普段慰めてくれるログサはおらず寂しかろう。クスクスと笑いながらラディ王子は1枚の紙を差し出す。
「調査項目?あれ、踏破時間もいるの?」
「そう、王子達は制限なしで全力で行くからね。こちらの踏破時間とは別物だよ。」
「調べたらどう使うの?」
「この大陸だと難易度もそこそこだろうから、手を加える」
「どんな感じ?」
「それはまだ内緒。中等部で留学するまでに調整がいるからね」
後にこのダンジョン、3ヶ月ごとに内部が変化し常に新鮮な気分が味わえると大人気になる。そして10年が経つころには周囲は整備された森とダンジョンがある街として栄え、いずれその先を目指す若者の良い訓練場として役立つ。そこからがようやく始まる。新しい国への道が。
戦闘シーンをすっ飛ばすのにだいぶなれてきました。
あとはご想像におまかせします。




