王伝編集官 16話
今から12年前のアスコーディ家
ご当主ダスティン氏は一人書斎にいて、すでに冷めた茶を飲もうと手に取り飲まずにまた置く。さらに気持ちを落ち着かせようと本を取りに行っては、本棚の前で何しに来たか忘れたようにソファーに戻る。とても変だが廊下でウロウロするくらいならそこに居てくださいと窘められたから仕方ない。
どのくらい時間が過ぎたかわからなくなったころ、扉がノックされ侍女が呼びに来た。その頃には頭の中が真っ白になっていたので、隣室にいた大事な妻と初めての我が子を見た時言葉がでなかった。
「さぁ、お嬢様ですよ」
助産師にそっと手渡された赤子の顔を涙目で眺めていたが、ふんわり握られた小さな小さな右の手のひらにあるものに驚く。それこそバケツの水をぶっかれられたかのように。
「王印・・・なぜ今なのだ」
急ぎ連絡を取り外出する。眠る妻に労いの時間さえ贈れないのを悔やむが、それも後で説明しなければ。我が子の危機だ。まずい、あいつの横やりが入る。焦る気持ちを顔に出さず目的地に向かう。後から聞くと途中で彼を見た誰もが、鬼気迫る表情の訳を聞けなかったという。ノックもせずに乗り込んだその部屋の人物がにやにやしながら言った。
「お、女の子だって?おまえに似てないだろうな?」
「世界一かわいいに決まってる。それより大変だ」
「どうした。奥方の具合が悪いのか?」
「ちがう、王印だ」
「ほぅ、それはいい。これで一安心だ」
「何を言う。最悪だ。お前にはやらんぞ」
娘をやらないと嫁にでも出すかのように不機嫌なのは、ルシネイラ国宰相アスコーディ家当主ダスティン。反対にうれしそうなのは、ルシネイラ国王アルバート。不機嫌な父をさらに追い打ちかけるは
「さっそく王伝編集官を手配しないとな。決まりだろ?」
「・・・」
「ふてくされるな、俺より若いのが他にいないんだし」
せっかく女の子が生まれた場合の未来夢想図を描いていたのに、馬鹿アルに王印のある子が生まれるまで暫定王位継承者扱いだと。スティシアと馬鹿アルに滋養効果の高い食いもん大量に送り付けてやる。まだ新婚の王と王妃には残念ながらまだ御子がおらず、女児であっても0歳であっても帝王学がもれなく付いてくる。どれだけかわいかろうと、べったりできないのである。あぁ残念。
「ただなぁ・・帝王学入れると嫁の貰い手狭くなるんだよなぁ」
「・・・責任取れよ」
「おぅ、最高の旦那見つけてやるよ」
「それもなんかやだな・・」
ちなみにお父さんの本当の苦悩はラディアス王子・リノリス・レイアール王子が生まれてきてくれる約5年間一喜一憂することだった。
(早く王印生まれてくれーー)
あと3人分誕生時の様子入れようかと悩みましたが先延ばしです。
同様に研究院の様子もカットしました。いずれ、そのうち。




