8月②
一次試験中の会議室。
「ま~た、あの赤千川君は」
「…どうにかならんもんか」
会議室には老人と少女しかいない。他の3人は役があるため不在。
「二次は誰でしたっけ?」
「更木だったな…」
「ザラ君か~」
「…あいつなら、二次を任せても問題ないだろう」
「暇なので遊んできます」
「…行って来い。御厨も言ってたろ。適当にってな」
は~い、行ってきますと言い残し、少女は暇つぶしに出かけた。
――――
二次試験の会場に着いた信達。
「いや~。どうするつもりなんだか…」
「知らないな。でも戦闘試験なら通過できるだろう」
「ぬ~…面白くないな~」
約10分待たされている。会場中が早くしろと言う声に包まれた時、
『え~。たいへん長らく、お待たせして申し訳ありせん。只今より二次試験を始めます』
先ほどの声と同じ人物。今回はスクリーンがあるため顔が見れる。
『まず、今回の試験官の、更木斬哲です。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。それでは指定の戦闘ルームに入ってください』
――――
信が入った部屋には盾と剣を持つ男がいた。
「マジか~。騎士かよ」
銃手と騎士の相性はやや悪い。守護戦士じゃ無くて助かったと内心思っている。
翼が入った部屋には明らかにスナイパー風の男がいた。
(スナイパーか…どうするかな)
少し策を立てながら開始の合図を待つ翼。
青波とドラゴは上から見ている。人数の関係上一度に這入れる人数は限られるためだ。
「今回の試験呼ばれたのは約512名。一次で128名落ちて…」
「おそらく、今回でもう半数落とすのでしょうか…」
「かもな~今年も64名だけかな~」
「何で、この事を隠してたんすか?」
来る前から彼が感じていた謎の違和感。その答えが一次に分かった。
「隠した理由か~…そうだな~特になし!」
またそんなことを。まぁ、気にすんなよ…ほら始まんぞ~。と会話しているうちにオープンチャイムが鳴った。
『二次開始‼』
――――
あちらこちらで声が湧いている時、
「ん~。どうすっかな~?」
相手は、自分的に相性の悪いと考えている騎士。
騎士
APPO東本部では盾と剣を持つ前衛系の隊員のクラスを指す。
特徴は大きく2つ。一つは一般的なの前衛クラスと違い、ブレイン製硬化盾が持てること。また、全身に金属鎧が装備可能。それを活かし銃撃、狙撃から自分を守ることができる。
もう一つの特徴は、所属がかなり数が少ないこと。これにより対策が難しい。
全身装備できるのに、目の前の相手は…
「さ~さ~。掛かってこ~い‼」
イレギュラーな無装備。さらに、あまり好きでない女子…
「なんで剣と盾しかないんだか…」
「来ないなら…行くっぞ~」
「ちっ…」
銃手対騎士の戦闘開始。
対して翼の方は、すでに闘い始めている。
見えない相手からの狙撃は全て、【風世界】で回避。が、それにも限界がある。対する狙撃手は当たり前だが何度も、狙撃地点を変えてくる。よって何度も連続で回避することは難しい。
「何度も避けるのは、サポートなし、じゃ難しいな…こういう時は」
建物で射線を切り、接近する作戦に切り替えた翼。
「…隠れても無駄だぜ、俺には隠れている敵でも見える」
狙撃手は能力を使い、確実に翼がいるところをピンポイントで狙ってくる。
「…うわっと…どうすっかな」
攻略の糸口がほとんど見えない翼。
――――
翼以上に信は困っている。
「そ~れ!」
「どわっ…危ね~」
剣を振るってくる女子の攻撃を避ける信。
「反撃だ、このっ」
銃で反撃するが
「ほいっと…」
盾でガードする女子。
「あっ、そうだ!君の名前は?」
「…電子盤見てくれ…」
「信さんだね~」
「蝶宮か…」
「鈴音と呼んでください」
何で俺の周りの女子はこんなのが多いんだ…と思いながらも戦闘は続く。
射撃がまったく通じず、近距離まで近づかれる。攻撃を避けて、下がりながら射撃。これを防御される。これの繰り返しである。
「ここでアレ使うのもな…」
小早川に渡されたブレインには改造が施されており、追加の武器が2つある。
「ここで落ちんのもあれだ…面白くないが使うか…変化弾セット」
右手の銃にいつも使っている通常弾ではなくコースを意図的に変えることができる変化弾に変え反撃を開始する信。
「おお~。これは!?」
驚く蝶宮。防げるわけがない、先ほどまで直線状に飛んできていた弾丸が、角度を着けながら曲がるのだから。盾を正面で構えていたため、右足に変化弾が被弾する。
「しゃ」
「うわ~、足が~…まっ、仕方ない」
「一気に行くぜ…」
当たり構わず発砲する信。もちろん変化弾を多めに撃つ。
「同じ手は食わないよ…っと」
盾を使い、突撃してくる蝶宮。そのまま突き飛ばされ、左腕を落とされる信。
「マジかっ…でも」
変化弾が帰ってきている。そのまま蝶宮に被弾。
「残ね~ん。もう少し遊びたかったのにな~…」
「次の機会にな…鈴音…さん」
蝶宮は換装が解ける。
『ルーム03:合格者、赤柱 信』
「ふ~。信さんは何歳なんですか~?」
試験終わった後にすぐそれか‼と言いたくなったが
「16だけど…」
「なるほど!私より2上なんですね」
下手していたら自分よりも年下に負かされてたのか…マジか、マジか! 心の中でその言葉を連呼しまっくていた信は無事に二次合格した。
――――
「さ~て、そろそろ崩れろよ~」
笑いながら翼を照準を合わせる鷲尾。
(もう少しで彼奴のエニマポが切れるはずだ…)
勝利を確信し始めた鷲尾。
「…そろそろかな」
剣を納刀状態にして1分。
「先生は、面白いものを入れてくれましたね…」
『チャージ完了:〈広翼〉』
剣の攻撃範囲を拡張できる、特殊ブレイン。
「さぁ、反撃だ…まずはあの辺のビルを~っと!」
思いの外、重くそしてスイングスピードが通常より速い。切断に成功したビルは物音を立てて崩れていく。
「うわっと!」
その崩壊に巻き込まれる鷲尾。
「さっさと、倒れろよ‼」
落下しながらも、照準を合わせ狙撃する。が
「もう、逃がさない。やったことないけど…【風世界】全開だ!」
目の前の光景が変わり風の色が見える、風が強い所は濃い白、風が弱い所は黒となる。
「見辛い…でも、信の【弾道読み】なしで、ある程度の弾道の先が見える」
飛んでくる弾丸を少しかする。
「全開…広翼!」
地に足が着き走り、始めている鷲尾を狙い斬る。体、半分になりながらも
「くっそ…でも、相撃ち狙いで…喰らえ:〈ループ・ショット〉!」
空に向かって、発砲。
「よっしゃ。っが!?」
上空に鷲尾が撃った銃弾が被弾する翼。ドローのように思えたが、
『ルーム06:合格者、白井 翼』
と審判が下った。
「やるな~。まさか、負けるとはな~。今更だが、俺の名前、鷲尾 一成」
「強いのはそっちだな…1対1でここまでやる人、初めてだった。俺は、白井 翼だ」
握手を交わし、部屋から出る二人。
――――
「おつかれ~。いや~、よくやった」
「どもども」「あざっす」
信と翼の健闘を労う青波。
「そんじゃ、次は…」
「俺らですね」
――――
「さて、相手は…鎌使いか」
「ヒャッハー…早く始めろよ‼」
ドラゴの対戦相手は悪意に満ちた態度の人間。名は、山崎。
「すぐに、やって殺るから覚悟しろや!」
「…5分で十分だ」
――――
「ん~、俺の相手いないじゃん…」
他の部屋では2試合目が始まっている。が、誰もいない
『…ルーム07の青波さんには、僕が相手です』
耳に入ってくる声は更木。
「はぁ?…は~」
『嫌がるなら棄権しても構いませんよ」
目の前に現れる白い隊服の更木。
「…恥かくぞ」
「構いません。勝つは僕ですから」
更木は剣を抜き始める。青波は槍を出す。
「行きますよ…」
「来いや~」
ルーム07の戦闘が始まる。
――――
「ヒャッハー。喰らえ」
鎌を振りまし攻撃してくる山崎。
「雑な攻撃だな」
全て避けていくドラゴ。
「ほら、使ってみろよ。取って置きっての」
「…すぐ、やってやる」
ドラゴが小早川からもらった特殊ブレインは、翼の〈広翼〉のように似たようなもの。名は、〈衝撃拳〉。チャージ時間は無制限。
ドラゴは右手に左手をかぶせ、力を集中させる構えを取る。
「そんなことさせね!」
ここぞとばかりに攻撃しようとする山崎。
「馬鹿だな…突っ込んでくるとは」
『チャージ完了:衝撃拳』
「吹っ飛べ…」
右ストレートから、龍のオーラが飛び出てくる。
「がっ!?くっそが!」
ルームの端まで吹き飛ばされ、爆発する山崎。
「…お前みたいなやつは嫌いだ。だから、制裁した。それだけだ…」
『ルーム05:合格者 灰 龍悟』
――――
「無駄ですよ…去年の手合わせで見えてますから」
余裕で、青波の槍の突きを避ける更木。
「その一戦だけで読めるのか…」
「読めます」
攻撃が全く当たらないので離れる青波。それを見て距離を詰めに行く更木。
剣士
APPO東本部では、太刀を一本だけ持つ者を指す。その太刀にも種類がある、自分のエニマポを剣の衝撃波として使用できるオーラブレイド。相手の武器を圧し折るためのメタルブレイド。大きくはこの二つ。
前者のブレイドを使うものは短期戦、後者のブレイドを使うものは長期戦を得意とする。
翼が先ほど使ったのは前者のブレイド。対して、更木のブレイドは後者の物。
「いい加減、あれ撃たないのか?」
「残念ですが…あなたに使う価値はあまりないですね」
「…ど~なっても、知らんぞ~」
突きの攻撃方法から急に打撃攻撃方法に変えた青波。一発一発が重すぎるので、それに合わせることができず、更木に確実にダメージを与え始める。
「何故…!?」
その動きに驚きを隠せない更木。去年はこのような動きはなかったはず。
「『剣士にはある程度型がありますよ』。これは、うちの翼が言ってたぜ」
「…なら、僕の型は何だと思いますか?」
「究極のカウンター型。…どうだ?」
いきなり離れ、その辺のビルを斬り始め、そのまま隠れる更木。
「へっ、ヤル気になったか?」
「…〈絶対陣〉」
(〈絶対陣〉か、去年は見るしかなかった。けど、今年は喰らえるのか)
「来い、来い‼」
更木を探すが、なかなか見つからない。そのまま30秒が経過した。そして前方から巨大なオーラの気配を感じる。
「…ヤベ~」
この一撃が試合を決めると思った青波は警戒し策を練った。




