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じゅうに
「それどころでは無い。お前の姉は、いかなる方法を持ってしても、もう目を開く事は無い。諦めよ」
頭まで抉られる気分。舌が麻痺して、目が痛くて。思考は退行を繰り返し、出てきたのは子供のだだのような言葉だけだった。
「そんなの、やってみなきゃわかんないだろ!」
声を荒くした青年を、今度こそ少女の身体は哀れに思った。だが「言うべき事は伝えた。後は好きにするがいい」と青年を突き放して、それからは何も言わなかった。
太陽が、巨木の陰から脱出した。
少女は目を何度かぱちくりさせ、不思議そうに首をかしげたが、青年は動けなかった。
申し訳無さげに、少女が言う。
「えと、何だかすっごく眠たくて……」
青年はその声を聞いて少し安堵し、胸を撫で下ろした。先程の言葉は気になるが、そもそも信じる根拠も無いと判断。
「いや、気にしなくていい。それよりも、疲れてるなら明日にするか?」
青年が問うと少女は細い首を横にふり、「大丈夫。行こう」と歩き出した。