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じゅういち
太陽が木の陰に隠れた。小鳥はせわしく羽ばたき日を求めて消えていった。
それと同時に、少女の手がぴたりと止まった。
青年は、時が止まってしまったようにさえ感じた。
たちまち白い手はさがり、自力で立ち上がった少女の身体は青年を見つめた。
その目は日焼けが治らないのか、朝だというのに紅に染まりきっていて、怒っているようにも、泣いているようにも見える。
身体は幼いのに、青年は恐怖しかいだかなかった。まるで、大波がそこまで迫っているような気がして、逃げる事さえ忘れていた。
押し寄せる水は容赦なく青年を呑み込んで行く。
「何故、湖を探す」
少女の声だった。
「お前の探すものはあそこには無い」
「お前は誰だ」
状況を呑み込めない青年から出てきたのはそんな一言だった。誰、だからといって安心する訳でもなかったが。
「お前が知る必要は無い」
少女の声とその口調はあまりにもかけ離れていたが、それを覆す程の威圧感と冷たさが言葉の芯にある。
青年はこれが現実かどうかを疑う事を忘れていた。
「探す物が無いとはどういう事だ」
「お前の姉は、あの湖の水では治らんという事だ」
率直過ぎる答えに、青年は混乱した。背中を冷たくも熱くもないものが走り、膝が笑って、よくわからない汗が頬を伝った。




