12/20
じゅう
朝日が森を照らして葉は光る。虫の声は少ないが、代わりに鳥がうるさい。
霞んでいく空に雲は見えなくて、太陽が独り寂しそうに浮かんでいた。
遠くに見えていた巨木は、いつの間にかその大きさが望めない程近づいていた。
巨木はたくさん葉をしげらせ、枝を重たそうに揺らし、独りぽっちの太陽を見つめているようだった。
太陽こそ、巨木を憐れんでいるとも知らずに。
青年はいつもの場所につくなりため息をついた。どうしたものかと腕を組み視線を送る。その先には草を枕にし、土を下に眠る少女の姿があった。
起こそうか、起こすまいか。決めかねる青年の気持ちを汲み取ったのか、少女のすぐ側にあった木から小鳥が舞い降り、少女の上で鳴いた。
ゆっくりと白い目は開かれ、眠たそうな表情で少女は背を起こした。
青年はやれやれと手を差し出す。緩やかに白い手が伸び、ひとりぽっち同士にかけ橋ができようとしていた。
太陽は、この二人が嫌いだったのかも知れないくらいに、これでもかと照りつけた。
巨木は、この二人のうちの『独りぽっち』の方が嫌いだった。