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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十三章 跋扈の章

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話し合い(太陽の森)

「……!」


 意識を失っていた女性のダークエルフが目を覚ます。そして体を起こして周囲の状況を確かめた。


「目を覚ますのが早いな。やはり耐性が強いようだ」


 イルアーナが呟く。そのダークエルフの周囲はアデルたちに囲まれていた。気を失っていたのは数分といったところだろう。


「……同族のようだが見たことがないな。誰だ?」


 そのダークエルフはイルアーナを睨みつけながら言う。その声は女性のものだった。


「私はイルアーナ。黒き森の族長ジェランの娘だ」


 イルアーナが自己紹介をするとそのダークエルフは訝し気に眉をひそめた。


「黒き森? 北の者か? 人間の魔法文明に滅ぼされたと聞いたが……」


「ふっ、逆だ。滅びたのは魔法文明のほうだ」


 イルアーナは笑みを浮かべる。


「……そうか。ではこの人間や珍妙な鳥はお前たちの配下か?」


 そのダークエルフはアデルやコカトリスたちに視線を向けて言った。


「いや、我々の同盟者といったところだ」


「……そうか」


 話ながらもそのダークエルフはしきりに目を泳がせ周囲の状況を探る。


(同族だとすると……逃げるのは無理か)


 そのダークエルフはイルアーナの後ろにいるダークエルフたちを見た。


「押しかけておいてすまぬが、お前のことを教えて欲しい」


 イルアーナがそのダークエルフに尋ねる。


「……私の名はドリューシェ。この『太陽の森』のサンズウッド族の一員だ」


 少し逡巡したあとドリューシェと名乗ったダークエルフが答える。


(サンズウッド族……それがこの森に住むダークエルフの氏族の名前か)


 アデルはドリューシェの言葉を聞いて思った。


「サンズウッド族は何人いるのだ?」


「そんな重要なことを教えると思うか? 同族だからといってお前たちが仲間だとは限らぬ」


 尋ねたイルアーナをドリューシェは睨みつける。


「確かにな。いきなりやってきて信用しろというのも無理な話だろう」


 そんなドリューシェを落ち着かせるようにイルアーナが同意する。


「しかし敢えて敵対する必要もない。我々はお前たちと手を結びたいと思っている。今、人間の間で魔法文明が復活しようとしているかもしれぬのだ」


「魔法文明が復活?」


 その単語にドリューシェの表情が険しくなった。


「……そんな人間たちとなぜ仲良くしているのだ?」


 ドリューシェがアデルを睨みながら言う。


「『人間』と一括りに考えるのは愚かだ。実際、魔法文明に止めを刺したのは人間たちだ。その前に神竜……竜王たちや我々ダークエルフが戦い、魔法文明を弱体化させたのだがな」


「竜王? まるでおとぎ話だな」


 ドリューシェはイルアーナの話をいまいち信用出来ない様子だった。


「あの……やっぱり人間はお嫌いなんですか?」


 アデルが恐る恐る尋ねる。元々はイルアーナたちの氏族も人間を嫌っている者が多かった。


「当たり前だ。森で生きる術を教えてやったというのに、ズケズケと森の奥まで我が物顔で入って来た。人間など甘い顔をすればつけあがる醜い種族だ」


 ドリューシェが怒りをぶつけるようにアデルに答える。


(あの包帯やハーブの汁もダークエルフさんたちの知識だったのかな……)


 アデルは顔をひきつらせた。確かに元がダークエルフたちの知識であるのなら、森の民と格好が似ているのも納得だった。


「アデルは普通の人間とは違う。強い魔力に尋常ではない肉体の強さ。それに思慮深く統率力がある。まさに王の器だ。我々はアデルを人間の王とすることで、彼らとの共存を図っている」


 イルアーナはどこか自慢げに語る。他のダークエルフやコカトリスたちも頷いていた。アデルはそれを聞き恥ずかしくなり、顔を赤くして俯く。


(そんな人間が本当にいるのか……?)


 ドリューシェは疑いの眼差しでアデルを見つめた。外見からではとてもイルアーナの言うような人間像に見えない。


「……それで、お前たちの要求はなんだ?」


「さあな」


 ドリューシェの言葉にイルアーナは少し笑みを浮かべた。


「ふざけているのか?」


「いや、申し訳ない。だがこちらとしては本当に同族がいるかどうかもわからなかった。さきほどお前が言った通り同族だからといって仲間とも限らぬ。まずは友好的に話せる相手かどうかの確認が必要だったのだ」


 イルアーナがドリューシェと話す。その態度にはどこか余裕が感じられた。


(友好的……ダークエルフさんたちの感覚ではこれが友好的でいいのかな……?)


 アデルは少し疑問に思ったが、心の中にとどめた。


「こちらとしては今後の協力関係を構築していきたいと思っている。そうだな、アデル?」


「は、はい!」


 イルアーナに突然話を振られ、アデルは慌てて返事を返した。


(……どう見ても立場が下のようだが、本当に王の器なのか?)


 ドリューシェは少し疑問に思ったが、心の中にとどめた。


「しかしそのためにも、もっとお前たちの情報を知りたい。出来れば里に招いてくれ」


「里に?」


 イルアーナの言葉にドリューシェは警戒の表情を見せた。


「こちらがそんな危険を冒すメリットはない。それに協力関係を望んでいるのはそちらだろう? なぜこちらがリスクを負わねばならぬのだ」


 ドリューシェが眉間にしわを寄せながらイルアーナを睨む。


「森に閉じこもって暮らせるならそれでいい。しかし人間は着実に力をつけ、いつかお前たちは森を追われることになるぞ」


「お前たちの一族がどれほどの強さなのかは知らぬが、我々が森において人間に負けることなどない。いらぬ心配だ」


 ドリューシェの言葉にイルアーナは一瞬、怒りで表情をゆがませるが、すぐに平静さを取り戻した。


「……どうだかな。たったこれだけの人数を危険と考えているのだろう? いや、こちらの配慮が足りなかったか。もし我々が怖いというなら、里に入る人数を制限しよう」


「な、なんだと!? 別に恐れてなどいない! ただわずかとはいえリスクが……」


 イルアーナに言い返そうとするドリューシェ。だがそこに神竜たちが近づいてきた。


「ふむ。しばらく魔物や町から持ってきた干しイカを焼いたものしか食べてなかったからのう。ご馳走を用意してくれ」


「食べれれば何でもいい」


「ひょーちゃんは果物が食べたいの!」


 お腹が空いていたらしい神竜たちが騒ぎ出す。そんな神竜たちをドリューシェはしばらく見つめた。


「……子供もいるのか。仕方がない、解放してくれれば一族に話を通して来よう」


 ドリューシェは態度を変えてそう言う。


 そしてアデルたちは里へと戻るドリューシェを見送ったのであった。


お読みいただきありがとうございました。

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