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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十三章 跋扈の章

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ダークエルフ(ラパイソ)

誤字報告ありがとうございました。

「ダークエルフだと?」


 サラディオの言葉にイルアーナが反応する。


「馬鹿な。確かにダークエルフはいくつものグループに分かれたと聞いている。だがこの森と連絡が取れたという話は聞いたことがない」


 イルアーナが眉をひそめた。


「正確に言えばダークエルフのような種族が森の奥に住んでいるのだ。実際にお前らの同族かどうかはわからぬ。その姿を見て生きている者はいないからな」


 イルアーナを睨みながらサラディオが言う。


「この町の皆さんはそのダークエルフと交流はしてないんですか?」


 アデルは何の気なしに尋ねた。


「当たり前だ」


 サラディオは険しい表情で言う。


「かつて、森の奥まで入った者はみなそのダークエルフたちに殺されたらしい」


「それが本当にダークエルフなのであれば、この森は彼らの領土。そんなところにズケズケと入り込んだのであれば、殺されても文句は言えんだろう」


 サラディオの言葉にイルアーナが冷たく言い放った。


「まあ遥か昔の話だがな。今ではダークエルフを恐れて誰も森の奥に足を踏み入れん。他にも危険な魔物がいるしな。だから実際にお前たちに会って驚いた。そして同時に納得もした。こういう者たちが森を我が物顔で占拠しているのだとな」


「お前たちとて、ここを我が物顔で占拠しているではないか。もっとも強い者がその場所を支配する。当たり前の話だ。お前たちを攻め滅ぼさないだけありがたく思ったらどうだ?」


 サラディオとイルアーナが睨み合い、視線を戦わせる。


「ま、まあ、後でそのダークエルフと思われる皆さんと接触してみましょう!」


 アデルは精一杯の愛想笑いを浮かべて両者の間に割って入った。


(領土問題とか、ろくなことにならないよなぁ……)


 領土問題が円満に解決することなどほぼない。関わりたくはなかったが、今後避けることはできない問題だろうと思いアデルはうんざりした。


「ふん、よく言い聞かせるんだな」


 そう言い残し、サラディオはさっさと前に向かって進みだす。


(アデル王が強いのはわかったが……いったいどうやってこのダークエルフたちを従わせているのだ?)


 サラディオは不思議に思った。アデルが力づくでダークエルフたちを支配している様子もなければ、ダークエルフたちもアデルに服従している雰囲気もない。しかし不思議とダークエルフたちはアデルの意思に従っている。プライドの高いダークエルフたちがなぜアデルに従うようになったのか、サラディオにはまったく理解できなかった。


「しかし本当にダークエルフなんですかね」


「どうだろうな。風魔法であれば時間はかかっても大陸の端までメッセージを届けられる。いままでやり取りが無かったのは不自然だ」


 アデルの言葉にイルアーナが思案顔になる。


「もしかして……あの塔のせいで連絡が取れなかったとか?」


 ロスルーの東に遭った奇妙な塔を思い出し、アデルが呟く。


「……あり得るな。あの塔は魔力を吸収していた。風魔法がかき消されても不思議ではない。そうなると魔法文明が存在する前であれば連絡があった可能性もあるのか……相当昔の話だな。おじい様ならご存じかもしれぬが」


 イルアーナが考え込む。


(ダークエルフの昔ってどれくらい昔なんだろう。想像もつかないな……)


 イルアーナの呟きを聞いてアデルは思った。


「コラッ! なにしてんだい!」


 そんな二人の耳に中年女性の叫び声が飛び込んで来る。声のほうを向くと魚を並べた屋台の前で一人の中年女性が怒鳴っていた。その前には四人の神竜たちがいる。その頭にはなぜかイカが乗っていた。


「な、何してるの!?」


 アデルは慌てて神竜たちに駆け寄る。


「涼しい」


「冷え冷えなのー!」


 頭に乗せたイカの足を持ち上げながら、ポチとひょーちゃんが言った。

 

「ちょっと! アンタがこの子たちのお兄ちゃんかい? こんなことされたら困っちゃうよ!」


「す、すいません! これは買い取りますから!」


 アデルは何度も頭を下げて女性に謝った。


「おお、そうか。ではこっちの魚とあっちの貝も……」


 ピーコがそう言い出すと他の神竜たちも次々と追加注文をし出す。


「はははは……」


 結局、屋台のほとんどの魚を買い占める形となったアデルは乾いた笑いを浮かべた。一方で怒っていた店の主はニコニコ顔になっている。


「おいおい、あれが本当に王なのかよ」


 その様子を遠くから見ていたラヒドが呆れ顔で言った。


「さあな。ただ……我々も人のことは言えんだろう」


 サラディオはため息をついた。


「確かに。意外と女王とは気が合うかもな」


 そう言うと、ラヒドとサラディオは道の先にある大きな屋敷に視線を向けた。

お読みいただきありがとうございました。

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