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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十三章 跋扈の章

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襲撃者

 草むらから飛び出したいくつもの影は高々と舞い上がった。


「よせ!」


 サラディオの険しい声が飛ぶ。


 舞い上がった影のひとつが次々とダンゴウムシの上に着地した。


 それは体長1mほどのバッタのような生き物に乗った人間だった。身体にはボロきれのような衣服をまとい、顔や手などは包帯のようなものを巻いて素肌が出ないようにしている。その手には短剣が握られ、アデルたち一行に突きつけられていた。


「動くな」


 その影たちドスの効いた低い声が発せられる。


「うっ……」


 神竜騎士のクライフは喉元に短剣を突き付けられ呻いた。他の神竜騎士たちも同様だ。神竜騎士たちは両手を挙げつつ、目をキョロキョロさせてどうすべきか悩んでいた。


「相手が誰だかわかってやっているのだろうな」


 一方、イルアーナをはじめとしたダークエルフたちは毅然とした態度で襲撃者たちを睨んでいた。その様子に襲撃者たちも少し腰が引けている。


「なんじゃワレ! ドタマかち割ってタマゴ置きにしたろかい!」


 シャモンをはじめとしたコカトリスたちは翼をばたつかせて今にも襲い掛かりそうな勢いだった。


「シャモンさん、待ってください! ここはいったん、話し合いましょう!」


 そんなコカトリスたちをアデルは制止する。その喉元にも襲撃者の一人が短剣を突き付けていた。


 襲撃者たちが乗っているバッタのほうは緑の体色で、見た目は完全に普通のバッタだった。どこをみているのか分からない大きな複眼が少しコミカルに見える。


「ほう、美味そうじゃな」


 そのバッタを見てピーコが呟くと、その横でポチが頷いた。脅威と見なされなかったのか、神竜たちに短剣を突き付ける襲撃者はいなかった。


「おいおい、こいつらは俺の客人だ」


 ヒトコブダチョウに乗ったラヒドがその襲撃者たちに声をかける。


「手荒な真似はよせ、草の民よ」


「お前らの客人?」


 襲撃者は首をかしげる。包帯で顔を隠しているため、その表情はうかがい知れなかった。


「そうだ。噂は聞いているだろう。神竜王国ダルフェニアのアデル王ご一行だ」


 「草の民」と呼ばれた蛮族たちも神竜王国ダルフェニアの話は伝え聞いていた。そしてその王がまだ少年であるということも。


「ほう、ではこいつがアデル王か」


 襲撃者が値踏みするような目でクライフを見る。立派な鎧を身にまとったクライフだったが、その表情は怯え切っていた。


「違う、そっちだ」


 ラヒドが苦笑いしながらアデルを指さす。襲撃者たちが一斉にそちらを向いた。


「……こいつが?」


 クライフよりさらに頼りなさそうなアデルを見て襲撃者たちは困惑する。


「あははは……」


 アデルもどうしてよいかわからず、ただただ愛想笑いを浮かべた。


 そして武器を降ろした草の民からアデルたちは話を聞くことになった。コカトリスたちやダークエルフたちは不満げに草の民を睨みつけている。一方の草の民たちはそれをまったく気にしていない様子だった。


「彼らは草の民。この草原を守る一族だ」


 ラヒドが草の民たちを紹介する。


「まったく。こんな道を作ってしまって……」


 草の民はアデルたちが通ってきた跡を見て不機嫌そうに言った。ダンゴウムシの一団が通った草原は草が倒れ、道のように開けてしまっていた。


 草の民の話では、この先にはいくつもの罠が仕掛けられているらしい。街を襲おうとする魔物、そして人間を排除するためだ。実際に砂漠を横断して町を襲おうとした人間はいないそうだが、彼らは北からの侵略に備えていた。


「ちなみにその包帯はご病気か何かで……?」


 アデルは恐る恐る尋ねる。


「これは鎧のようなものだ」


 アデルの問いに草の民はぶっきらぼうに答えた。この先の草原には剣のように鋭い葉や、槍のような棘を持った植物が大量に生えているらしい。知らずに踏み込めば、罠にかからずとも大変なことになっていただろう。


 草の民が巻いている包帯はそういった植物から肌を守るための物なのだそうだ。特殊な樹脂が染み込ませてあり、見た目と違ってある程度の硬さと弾力性があるらしい。


「お前たちはその危険性を知っていたのではないか?」


 イルアーナがラヒドたちを睨みつける。確かにラヒドたちがこの危険地帯を知らないのはおかしな話だった。


「ははは、安全なルートをよそ者に簡単に明かすわけには行かないからな。まあ許してくれよ」


 ラヒドは豪快に笑ってごまかす。


(それにこいつらの力をもっと見てみたかったんだが……草の民にあっさりとやられるようじゃ、意外と人間相手には弱いのか?)


 笑いながらラヒドはアデルたちの力量を測っていた。


「それは理解できる。だが信頼関係を築こうとしているのであれば、この件はマイナスに働く。それは覚えておけ」


 イルアーナはラヒドを睨みながら厳しい口調で言った。


(さすがに合理的な考え方だな。人間ならもっと感情的になっちまいそうなもんだが……)


 イルアーナの言葉にラヒドは苦笑いを浮かべつつ心の中で思った。


「ところで……どうやってあれを手懐けたのだ?」


 草の民がダンゴウムシを見ながらアデルに尋ねる。


「まあ……交渉役みたいな方がいらっしゃいまして……」


 アデルは空を見上げる。ジェントアウルのセバスチャンは危険を察知し、自分だけさっさと空へと逃げていたのだ。


「よくわからんが……あんなものに罠場を壊されてはたまらん。ここから先は徒歩で向かってくれ」


「安全なルートなら知っている。我々が案内しよう」


 草の民に続き、ラヒドが言う。アデルたちから白い目を向けられても、ラヒドは全く動じなかった。


「ムシさん、バイバイなのー!」


 ひょーちゃんに見送られダンゴウムシたちが帰っていく。そして今度こそラヒドたちが案内する形でアデルたちも再び町へと向かって歩き出した。


「おい」


 その途中、アデルのもとへサラディオがやってくる。


「はい? どうしました?」


「ずいぶんと簡単に短剣を突き付けられたな。なぜだ?」


「えっ?」


 サラディオに問われ、アデルはキョトンとする。


「なぜって……殺気は感じなかったので……」


 アデルの答えを聞いたサラディオはしばらくアデルを睨む。


「あ、あの……何か?」


 アデルは居心地悪そうに尋ねた。


「……いや、なんでもない」


 しかしサラディオは顔を背けると、先を行く蛮族たちに合流するためヒトコブダチョウの足を速めた。


(殺気がなくとも、剣を突き付けられれば自然と身体が反応するだろう。咄嗟のことに反応できなかったのか、それとも……)


 アデルの話を思い返しながらサラディオは考える。


(……あの程度の相手ではまったく命の危険を感じなかった、ということか)


 アデルの底知れぬ力量を想像し、サラディオは顔を歪めたのだった。

お読みいただきありがとうございました。

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