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第二話 その名は!キンタ・ロウ

むかーしむかし(以下略)。


 


お爺さん(七十六)と、お婆さん(四十五)と、桃から生まれた天界の問題児――


 


モ・モタロウ。


 


『祭りじゃああああ!!!』


 


朝から騒がしかった。


 


『ドンブラコッコォォォ!! 宴じゃああ!!』


 


庭で酒樽を抱え、踊り狂っている。


 


婆『朝からうるさい』


 


バシッ。


 


婆様のハリセンが炸裂した。


 


モタロウ『ぐふぉ!?』


 


婆『近所迷惑』


 


モタロウ『いや祭りだから!』


 


婆『ここは民家』


 


モタロウ『ぐぬぬ』


 


爺『ほれモタロウ』


 


爺様は杖をつきながら言った。


 


爺『騒ぐ暇があるなら働け』


 


モタロウ『えぇ〜』


 


爺『ワシは山へ紫刈りに行く』


 


モタロウ『紫刈りって何に使うの?』


 


爺『知らん』


 


モタロウ『知らんの!?』


 


婆『昔からそういうもの』


 


モタロウ『雑!!』


 


爺様は背中に籠を背負い、山へ向かった。


 


そしてそのとき――


 


山の奥から声が聞こえた。


 


ドッコイショォォォ!!


 


ハッケヨーイ!!


 


ヨイヨイヨイ!!


 


爺『……』


 


爺様は耳が遠い。


 


爺『ついに幻聴が聞こえるようになったか』


 


爺『迎えが来るのも近いのぉ』


 


スルーした。


 


しかし。


 


ドッコイショォォォ!!


 


ハッケヨーイ!!


 


ヨイヨイヨイ!!


 


爺『……うるさい幻聴じゃ』


 


そのとき。


 


ガサッ。


 


紫の草むらから何かが飛び出した。


 


小さな影。


 


爺『お?』


 


出てきたのは――


 


子熊だった。


 


爺『ほほぉ……』


 


丸い耳。


 


ふわふわの毛。


 


つぶらな瞳。


 


爺『な、なんて可愛いんじゃ……』


 


爺様は子熊を抱き上げた。


 


爺『よしよし』


 


もふもふ。


 


もふもふ。


 


しかしそのとき――


 


背後から気配。


 


山ではよくあることだ。


 


子熊の近くには、必ず親がいる。


 


つまり。


 


親熊。


 


爺様、危うし。


 


ガサッ!!


 


草むらから現れたのは――


 


赤いふんどしの少年だった。


 


???『ハッケヨォォォイ!!』


 


爺『え?』


 


少年は突進してきた。


 


ブチかまし!!


 


ドンッ!!


 


しかし。


 


爺『おっとっと』


 


普通に受け止めた。


 


少年『ぬぉ!?』


 


爺様は軽く体勢を整え――


 


ガップリ四つ。


 


そして。


 


ひょい。


 


少年を投げた。


 


少年『ぐえぇぇぇぇ!?』


 


ゴロゴロゴロ!!


 


岩にぶつかり止まる。


 


少年『つ、強い……!!』


 


少年は立ち上がった。


 


目をキラキラさせている。


 


少年『師匠!!』


 


爺『誰がじゃ』


 


少年『拙者の師匠になってくだされ!!』


 


爺『断る』


 


即答だった。


 


少年『えぇぇぇ!?』


 


爺『ワシは忙しい』


 


少年『そこをなんとか!!』


 


少年は土下座した。


 


少年『拙者、名をキンタ・ロウと申す!!』


 


爺『ふむ』


 


爺様は顎を撫でた。


 


爺『ふんどし一丁で山を駆け回るとは』


 


爺『なかなか根性のある小僧じゃ』


 


キンタ『うおおおお!!』


 


キンタ『やったぁぁぁ!!』


 


爺『まだ認めておらん』


 


キンタ『え』


 


爺『まずは基礎修行じゃ』


 


キンタ『はい!』


 


爺『紫刈り三千本』


 


キンタ『え』


 


爺『薪割り五千回』


 


キンタ『え』


 


爺『山駆け十周』


 


キンタ『死ぬぅぅぅぅ!?』


 


修行が始まった。


 


その頃。


 


家では――


 


モタロウ『祭りじゃあああ!!』


 


婆『静かにしなさい』


 


モタロウ『ドンブラコッコォォ!!』


 


婆『うるさい』


 


バシッ。


 


モタロウ『ぐふぉ!?』


 


そのとき。


 


モタロウの耳が動いた。


 


モタロウ『……』


 


モタロウ『祭りの匂いがする』


 


婆『しない』


 


モタロウ『する!!』


 


モタロウは走り出した。


 


モタロウ『山だァァァ!!』


 


婆『昼までには帰ってきなさい』


 


モタロウ『はーい!!』


 


 


山。


 


キンタは修行していた。


 


キンタ『はぁ……はぁ……』


 


紫刈り三千本。


 


薪割り五千回。


 


山駆け十周。


 


どれも普通の人間には不可能な量だ。


 


キンタ『む、無理だ……』


 


そこへ。


 


モタロウ『祭りじゃあああ!!』


 


キンタ『誰!?』


 


モタロウ『俺はモ・モタロウ!!』


 


モタロウ『天界の問題児!!』


 


キンタ『問題児って自分で言う!?』


 


爺『来おったか』


 


モタロウ『おっ爺様』


 


モタロウはキンタを見た。


 


モタロウ『誰?』


 


キンタ『キンタ・ロウでござる!!』


 


モタロウ『ふーん』


 


モタロウ『祭りする?』


 


キンタ『しない!!』


 


モタロウ『つまらん』


 


そのとき。


 


山が揺れた。


 


ズシン。


 


ズシン。


 


ズシン。


 


爺『……』


 


キンタ『な、何だ!?』


 


草むらが揺れる。


 


現れたのは――


 


巨大な熊。


 


体長三メートル。


 


親熊だった。


 


キンタ『ぎゃあああ!!』


 


爺『ほれ来た』


 


モタロウ『でっか』


 


熊『グオオオオオ!!』


 


突進。


 


キンタ『死ぬぅぅぅ!!』


 


そのとき。


 


モタロウが前に出た。


 


モタロウ『祭りの時間だァ!!』


 


熊『グオ!?』


 


モタロウは熊の拳を受け止めた。


 


ドンッ!!


 


地面が砕ける。


 


キンタ『え』


 


モタロウ『ほい』


 


投げた。


 


熊が空を飛んだ。


 


ズドォォォン!!


 


山の向こうに消えた。


 


キンタ『えぇぇぇぇ!?』


 


モタロウ『熊鍋かな』


 


爺『やめい』


 


キンタは震えていた。


 


キンタ『つ、強すぎる……』


 


モタロウ『まあ天界出身だからな』


 


キンタ『天界!?』


 


モタロウ『宴会のしすぎで追放された』


 


キンタ『理由がひどい!!』


 


爺『ほれキンタ』


 


爺『修行再開じゃ』


 


キンタ『鬼ぃぃぃ!?』


 


モタロウ『がんばれ』


 


太鼓を叩き始めた。


 


ドン!


 


ドン!


 


ドン!


 


モタロウ『祭りじゃああ!!』


 


キンタ『集中できない!!』


 


しかし。


 


なぜか。


 


テンションが上がる。


 


キンタ『うおおおお!!』


 


薪割り成功。


 


爺『ほう』


 


モタロウ『祭りの力だ』


 


キンタ『違うと思う!!』


 


そのとき。


 


山の向こうから――


 


ズシン。


 


ズシン。


 


ズシン。


 


爺『……』


 


モタロウ『ん?』


 


遠くに見えた。


 


海の方から歩いてくる影。


 


巨大な体。


 


異様な筋肉。


 


モタロウ『なんだあの』


 


モタロウ『歩く大胸筋』


 


爺『あやつは……』


 


キンタ『な、何者!?』


 


その男の名は――


 


ウラシ・マタロウ。


 


筋肉の化身である。


 


 


 


 


【第二話 完】

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