↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
小人編
88/88

休日

「りま、帰ったぞ」

「あ、うん……」

省吾に声をかけられ、慌てて手のひらに乗った。

「どうしたんだ? 守内さんの奥さんに、何か言われたか?」

私の様子がおかしいと気付いたのか、そう訊いた。

「それは、その……」

どうしよう、今なら訊けるのに、急に言いにくくなってしまった。どうして……。

「りま」

手を上げて、私に目線を合わせた。

「言っただろう? 俺は君に、自分の気持ちを言うようにするって。だから君も、自分の気持ちを隠さず言ってほしい。どんなことでも構わないから」

「……」

省吾は、私と向き合おうとしてくれている。私も、応えないと。

「好美さんから聞いたんだけど、省吾、西滝町出身なんでしょ?」

「ああ、そうだ。言ってなかったか……」

「そうだね、初めて聞いた。実は、私も西滝町出身なんだ」

「え、そうだったのか?」

私も、言ってなかった。

「うん、そう……それでね、私と省吾には、出身が同じってこと以外にも共通点があって、それが、好美さんが思考が吸い取ることができないってことなんだって」

「確か、出身が同じで、奥さんより歳下だとそうなんだったな。そうか、出身が同じ……意外な共通点だな」

「……それでね、その話を聞いてから、急に、その……ホームシック、みたいになっちゃって」

「なるほどな」

納得してくれたみたい。

「へ、変だよね、サバイバル生活までしてたのに、今更ホームシックなんて」

「そうか? どんな状況でも、淋しいと思うのは変じゃないと思うぞ。むしろ、十八で家を出て……よく頑張ったな」

「省吾……」

優しい笑顔で、私を見ていた。

「そういう事なら、どうする? ご実家に連絡するか?」

「あ、それは……実は私、家を出る時、置き手紙を残して出てきたから、ちょっと連絡しにくくて……心の準備がしたいかな。連絡したくなったら、言うから」

「そうだったのか、わかった。……それにしても、ホームシックか。俺はてっきり、今日の捜査のことでかと思っていた」

「捜査のこと?」

何かあったかな……。

「集中できてなかっただろう、パズルの答えが気になって……」

「あー、そうだったね。でも、さっきも言ったけど、仲西刑事や照井刑事よりは集中できてたし、推理もできてたから、あまり気にはならなかったよ? むしろ、集中できてた方だと思う」

「……そうだったか?」

「うん。むしろ、片腕でよく頑張ったと思うよ」

利き手じゃないとはいえ、片腕が使えない状態で、よく捜査できた。やっぱり、立派な刑事……あ、いや、これは思うだけじゃ駄目だ。

「省吾は、立派な刑事だよ」

そう言うと、ありがとうと呟いて、嬉しそうに照れ笑いをした。

「でもそれなら、答え合わせしないとね。あの雑誌、見てみてよ」

「ああ、そうだな」

私をテーブルに降ろして、雑誌を取り出した。

「思えば、昨日のうちに答え合わせをしておけばよかったんだ」

呟きながらページを捲る。

「ここだな、えーと……あくび、びじれいく、くれーん、さんかくきん、か……」

「私の答えも、あってるか、わからないけど……」

「いや、きっとあっている。君は賢いからな」

「……」

はっきり言われ、恥ずかしくなってしまう。

「ああ、スッキリした……どうする? パズル、やって行くか?」

「今日はもう疲れたから、また明日にするよ」

「じゃあ、風呂の準備をしよう、待っててくれ」

そう言って、テキパキと準備をしてくれた。

私も、言いたいことが言えて、スッキリした。




それから数日後。省吾は、お姉さんに付き添われて、肩の傷の抜糸のために、病院を訪れていた。

「ようやく片腕生活から解放されたな……まだ無理はできないそうだが」

「まあ、吊ったままよりはいいんじゃない? りまちゃんも安心できるでしょ」

お姉さんの言葉に、ポケットの中で頷いた。

「じゃ、私は車持ってくるから、待ってなさいよ」

病院の前で、一旦別れた。

「……りま、ちょっといいか?」

周囲に人がいないのを確認し、私に声をかけた。

「実はこの後、姉貴を誘って買い物に行こうと思ってる。そこで、君の服を姉に見繕って、買ってもらわないか?」

「え、私の服を?」

「俺が作るのにも、限度があるだろう? その……下着とか」

「あ……」

確かに、これまでワンピースとセーターの他、ジャケットやズボンも作ってもらっていたけど、下着とかは、会った時のままだった。……そろそろ買い替え時かもしれない。

「勿論、君が嫌なら、無理にとは言わない。だが、姉貴なら、ノリノリでやってくれるぞ」

お金の件でご迷惑をかけるわけには……とは思った。でも、ここは甘えさせてもらおう。

「わかった、お願いするよ」

というわけで、車を持ってきてくれたお姉さんに、早速お願いしてみた。

「服ね、いいよ! これから行っちゃおう」

そう言って、携帯で近くの店を探した。

「この辺だと、近くにショッピングセンターがあるね、あ、手芸店もある。ここなら売ってるかな」

「いや、普通の洋服屋でいいと思うぞ」

省吾の言葉に、首を傾げた。

「え、りまちゃんが着れそうな服、売ってるかな」

「りまは、物を小さくする力があるんだ。普通の服で、選んでやってほしい」

「へえ、凄いなあ……ちなみに、私も小さくできる?」

省吾と同じことを訊かれた。

「せ、生物は無理なんです」

「そう……でも、そういうことなら、選び甲斐があるね。行こうか」

エンジンを掛け、車を走らせた。

到着したのは、市内の大きなショッピングセンター。初めて来た……平日なのに、駐車場は車でいっぱいだ。

お姉さんは、空いていたスペースに手早く車を停めると、降りようとする省吾を呼び止めた。

「ちょっと待った、ここから先は女だけで行ってくるよ」

「ああ……そうだな」

私を手のひらに乗せて差し出した。

「くれぐれも安全に、頼むぞ」

「任せてよ。りまちゃん、どうぞ」

差し出されたお姉さんの手に移ると、着ていたブラウスの胸ポケットに誘導された。

中に飛び込んでから、省吾の胸ポケットと明らかに違うことに気付いた。

せ、狭い……何が原因とは、言わないけど……。

「りまちゃん、大丈夫? ゆっくり動いてほしいとか、ある?」

上から声が聞こえてきた。

「いつも通りで、大丈夫です」

「了解。それじゃ、終わったら連絡するね。一階にカフェがあるから、そこで落ち合おう」

「わかった」

省吾に鍵を渡し、車を降りた。


いつも通りで、と言ったのに、お姉さんは少しだけ、ゆっくりと歩いてくれた。

省吾も、初めて会った時、多分無意識で、少しだけゆっくり動いてくれてた……こういうところ、本当によく似てるなあ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。