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不運なサチコちゃん

 ひどい目にあったぁー。お城のトラップが発動してくれたおかげで、どうにか乗り切ることができたけど、服に穴が開いちゃったよぉー

 それにしても、なんで私に襲いかかってきたんだろ? 何にも悪いことしてないのに。それに倭の国って配下だったはずなんだけど。

 そういえば、シヴィちゃんが他に二人いるって言っていたなぁー。ニャニャちゃんが含まれているなら、あと一人どこかにいるってことかな?

 うーん、なら食事なんてできないかも。食べている時に襲われちゃったらどうしようもないし。


「ゲッゲッゲッ。どこに行ったー!」


 うわ、こんな時にカアたんだよ。しかも包丁を持って歩いているし。

 あの状態のカアたんには近づかないほうがいいんだよねぇー。仕方ない、朝ご飯は諦めて部屋に帰ろう。


「そこかぁー!」

「キャー!」


 カアたんが誰かを捕まえたみたい。ご愁傷様だよ。私は見つかる前に逃げるから、頑張ってね。


「ゲッゲッゲッ、見つけたぜコソ泥猫」

「離してー!」


 あれ? あの猫獣人ちゃんの服装、見たことがあるなぁー

 もしかして、あの猫獣人ちゃんって――


「シャーラーップ! 俺のいる前でつまみ食いとは、なかなかの度胸じゃねぇか。その度胸に免じて、てめぇを料理してやるよ!」

「りょ、料理? それって、私を食べるってこと?」

「ゲッゲッゲッ、その通り。まずは、俺が味見してやるさ!」


 鈍く光る包丁。それを見たちっちゃな猫忍者ちゃんは身体を震わせていた。

 でもカアたんお構いなしに猫忍者ちゃんを床に叩きつける。痛そうにしている猫忍者ちゃんの緑色のポニーテールを鷲掴みして、包丁を振り上げていた。


「いやー! こんな終わり方ぁぁ!」

「ゲッゲッゲッ! てめぇにはお似合いの終わり方だー!」


 ああ、このままじゃ見たくもない光景が。だけど敵を助ける義理なんてないし。でも、なんだかかわいそうだよ。


「誰か助けてー! いやー!」

「ゲッゲッゲッ! 泣き叫べ! 俺をもっと、興奮させろぉぉ!」


 うー、なんだか気分が悪い。仕方ない、カアたんには悪いけどあの子を助けよう。

 でも、まっすぐ突っ込んだら絶対に返り討ちなんだよなぁー。何か方法はないかな?


「あ」


 そういえばこのお城はトラップだらけだったよね? さっきもそれで助かったし。

 じゃあ、そのトラップを発動させればあの子を助けられるかも。

 えっと、トラップの起動ボタンはどこかな?


「見っけ」


 うわー、こんなに堂々と壁にあるよ。すっごい敷き詰められているし、もー何がなんだかわからない。

 ひとまずこの青いボタンでも押してみようかな?


「ん? なんだ?」


 カアたん達のところに青い円陣が出現した。

 一体何が起きるんだろ?


「うげっ!」

「ひゃあ!」


 わっ! カアたんと猫忍者ちゃんが凍っちゃった!

 まずい、あのトラップは敵味方関係なしに攻撃する魔法だったみたい。えっと、早く溶かさないと二人が危ないよ。

 よ、よーし、青がダメなら赤だ。

 ポチッとね。


「どわっちゃー!」

「ふにゃー!」


 とんでもない業火が現れちゃった。大丈夫かなぁー?


「さっきから何なんだ!」

「燃えるー! 誰か助けてー!」


 よ、よし、二人とも生きてる。だから問題なし!

 それにしても、トラップボタンだけあってすっごく危ないなぁー。あまり触らないほうがいいかも。


「あら、マオちゃんじゃない」

「あ、ウィンディさんおはよー」

「何をしているの?」

「えっとねー」


 なんて説明をすればいいんだろ? まあ、いろんなことがあったけど、全て終わったって言えばいっか。


「あ、あいつらだ! あいつらが私達をこんな目に合せたんだ!」

「魔王に魔女! てめぇらの仕業かー!」


 やばっ、見つかった!

 捕まったら料理されちゃう!


「あら? あの二人ものすごく怒っているけど、どうしたの?」

「ごめん、説明している暇ない! 後はお願い!」

「ちょ、ちょっとマオちゃん!?」


 ウィンディさんに全てを押しつけて私は逃げ出した。数秒後に「きゃー」って悲鳴が聞こえたけど、私は振り返らなかった。

 ごめんね、ウィンディさん。私、まだ生きたいの。


「逃がさないよ!」


 って、足はやっ! いつの間にか回り込まれてるし!


「ふっふっふっ、ここで会ったら百年目ってね。覚悟しろ、魔王!」


 くっ、さすが忍者。とんでもないスピードで追い越されたよ。

 だけど私には心強い味方がある!


「トラップボタンをポチッと」


 灰色のボタンを押してみる。でも何も起こらない。

 あれ? 失敗?


「ふっはっはっはっ! 頼りの綱は不発したみたいね!」


 うっ、今まで悪いことをしたツケ!? やばい、じりじりと寄ってきているよ。


「ゲッゲッゲッ、追い詰めたぜ魔王」

「マオちゃーん、私を置いて逃げるなんてひどいわよー」


 ひぃっ! 後ろにカアたんとウィンディさんが!

 二人とも、とーってもとーっても怒ってる!


「今日の料理は、魔王の裸盛りだ!」

「たーっぷり味わってあげるわー!」


 に、逃げ道がない! や、やだ、来ないで。

 誰か助けてぇー!


――ゴーン!


 あれ? 妙に静かだよ。

 あれあれ? 三人とも倒れてる。

 あれあれあれ? このタライ、なんだろ?

 よくわからないけど、みんな目を回してるし。カアたんに至ってはお皿が割れてるし。

 もしかして、このタライが頭に落ちてきたのかな?


「はぁー」


 何にしても助かったぁー。悪いことなんて、しちゃいけないね。

 もー、絶対に悪いことなんてしません。いい子に過ごします。


「あ」


 そういえば、この猫忍者ちゃんの名前って何だったんだろ?

 まいっか。


名前を名乗ってなかったからマオちゃんに覚えられなかったサチコちゃん。

このことが一番の不運かもしれない。


だが騒動はもう少し続く!

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