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第五期 最終話(第十三話) 「いつまでも、この幸せを」

挿絵(By みてみん)


三月。


 やわらかな春風が大阪の街を包んでいた。


 今日は、ユウキとミヤビ、そしてひまりにとって特別な休日。


 ユウキが朝食の席で笑顔を見せる。


「今日は三人で、ある場所へ行こう。」


「どこ?」


 ひまりが目を輝かせる。


 ミヤビは優しく微笑んだ。


「パパとママが初めて出会った場所。」


「え?」


「そんなところがあるの?」


 ひまりは不思議そうに首をかしげた。


 夕方。


 三人が訪れたのは、難波にあるアニソンバー「Sirius」。


 扉を開くと、懐かしいアニメソングが店内に流れていた。


「いらっしゃい!」


 マスターは三人を見ると、すぐに笑顔になった。


「おお!」


「ひまりちゃんも大きくなったね!」


「こんにちは!」


 ひまりも元気よくお辞儀をする。


 いつものカウンター席。


 ユウキとミヤビが初めて隣同士に座った場所。


 今日は、その間にひまりが座っていた。


「ここなの?」


 ひまりが尋ねる。


「うん。」


 ユウキは懐かしそうに店内を見渡した。


「パパは一人でここへ来て。」


「隣にママが座っていたんだ。」


「それで、おともだちになったの?」


 ミヤビが優しくうなずく。


「最初はアニメの話をしてね。」


「好きな作品が同じだったの。」


「それがきっかけで仲良くなったんだよ。」


「すごーい!」


 ひまりは目を輝かせた。


 食事を楽しみながら、昔話に花が咲く。


「覚えてる?」


 ミヤビが笑う。


「オタク友達を集めて飲み会をしようって言った日のこと。」


「もちろん。」


 ユウキも笑う。


「『オタクっ子集まれ』が始まった日だ。」


「その仲間たちのおかげで。」


「結婚式も。」


「子育ても。」


「たくさん支えてもらったね。」


 二人は感謝するようにうなずいた。


 店を出ると、夜風が心地よく吹いていた。


 三人はゆっくりと川沿いを歩く。


 春の夜景が水面に映っている。


「パパ。」


 ひまりが小さな手を握る。


「ママとあえて。」


「よかったね。」


 ユウキは少し照れながら笑った。


「うん。」


「人生で一番よかった出来事だ。」


 ミヤビも穏やかに続ける。


「私も。」


「勇気を出して話しかけて、本当によかった。」


 橋の上で三人は立ち止まる。


 ユウキは静かに夜景を見つめた。


「昔の俺は。」


「仕事ばかりで。」


「休日は一人でアニメを観る毎日だった。」


「でも。」


「アニメがきっかけでママと出会って。」


「今は、家族三人で笑っている。」


 ミヤビは優しく微笑む。


「人生って。」


「何がきっかけで変わるか分からないね。」


 ひまりは二人の手をぎゅっと握った。


「ひまりね。」


「パパとママのこどもで。」


「よかった。」


 その一言に、二人の目が潤む。


 ユウキはひまりを抱き上げた。


「ありがとう。」


「パパも。」


「ひまりのお父さんになれて幸せだ。」


 ミヤビも優しく抱きしめる。


「ママも。」


「二人がいるから毎日が幸せ。」


 家へ帰ると、三人はリビングのソファに並んで座る。


 テレビでは、新しい春アニメの特集が流れていた。


「これ、みる!」


 ひまりが笑顔で言う。


「もちろん。」


 ユウキがリモコンを手に取る。


「家族みんなで観よう。」


 オープニングが流れ始める。


 三人は自然と笑顔になった。


 あの日、一人でアニメを観ていたユウキ。


 偶然隣に座ったミヤビ。


 そして今、二人の間には、笑顔いっぱいのひまりがいる。


 人生は、思い描いた通りには進まないこともある。


 けれど、勇気を出して踏み出した一歩や、大切な人との出会いが、未来を大きく変えてくれることがある。


 この家族は、それを知っていた。


 窓の外には、満開の桜。


 部屋の中には、三人の笑い声。


 これから先も、嬉しい日も、悲しい日もあるだろう。


 それでも。


 三人はきっと手を取り合い、笑顔で歩いていく。


 「おかえり」と「ただいま」があふれる、この家で。


 好きなアニメを一緒に観ながら。


 何気ない毎日を、かけがえのない宝物に変えながら。


完結


「あの日、アニソンバーで隣に座った二人の出会いは、一つの家族の物語へとつながった。


恋をして、結婚して、親になって、笑い合う。


幸せとは、特別な奇跡ではなく、大切な人と過ごす何気ない毎日の積み重ね。


この物語は終わる。


でも、ユウキ、ミヤビ、ひまりの幸せな日々は、これからもずっと続いていく。」

ユウキが一人でアニメを観る毎日を過ごしていたところから始まったこの物語は、アニソンバーでミヤビと出会い、恋人になり、結婚し、娘・ひまりが生まれ、家族として歩んでいくまでの長い道のりを描いてきました。


全五期、六十五話という長い物語でしたが、皆さまが最後まで見届けてくださったことを心から感謝しています。


この作品で一番描きたかったのは、「好き」という気持ちが人生を変える力です。


アニメが好きという共通点が、二人を出会わせました。


その「好き」は恋愛へとつながり、仲間との絆を育み、やがて家族という大きな幸せへと広がっていきます。


また、本作では恋人になるまでだけでなく、その先にある「結婚生活」や「子育て」も大切に描きました。


恋愛はゴールではなく、新しい人生のスタートです。


夫婦になってからも笑い合い、ときには悩み、お互いを支え合いながら歩いていく姿こそ、本当に描きたかった物語でした。


そして、ひまりの誕生によって、二人は「父」と「母」として成長していきます。


親も最初から完璧ではありません。


子どもと一緒に悩み、一緒に笑い、一緒に成長していくものだと思っています。


この作品を読んでくださった皆さまにも、ユウキたち家族の日常を通して、「何気ない毎日こそが一番の幸せなんだ」と感じていただけていたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


もしこの物語がアニメになったなら、アニソンバーでの出会い、仲間たちとの楽しい時間、結婚式、ひまりの誕生、そして家族三人でアニメを観ながら笑い合うシーンを、映像で見てみたいと夢見ています。


最後になりますが、この作品を最後まで応援してくださった読者の皆さま、本当にありがとうございました。


皆さまとの出会いも、この作品にとって大切な「ご縁」です。


また別の物語でお会いできる日を楽しみにしています。


本当にありがとうございました。

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