表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の神犯  作者: 隆の爪
12/33

十話:帰宅

 一年振りに家に帰ってきた。

母さんは前線にいるだろうから、

帰ってこれないかもだけど

清正はもう帰ってきてるかなぁ。


「ただいま~。智也、千尋、克弥いる~?」


…返事がない。

まだ学校行ってるのかな?

でも母さんは国からお手伝いさんが来てるって言ってたような―――っ!?


ビュゴオオオオォォォ!!


「あぶなっ!」


転がって攻撃を回避する。

僕がいた場所に、急に小さな竜巻が発生した。

三人ともこんな『能力』じゃない…。

寝室に気配が…一つ。


「…誰だ!?」

「………。」

「誰だって聞いて―うおっ!」


ゴオオオオォォォォ!!


『風を発生させる能力』か…?

この家で『他恩系能力者』は僕しかいない…まさかっ!?


「…あなたはカチア水国の残党か?」

「…こんな時にも頭が回るとは恐れ入ったよ、リンジオの訓練兵。」


そういうと寝室から男が姿を現した。

…ボロボロの恰好だ。

ここまで逃げてくるのに、かなり苦労したんだろう。

…でもそれとこれとは話が別だ。


「…この家に大人が一人、子供が三人いたはずだ。どこへやった?」

「安心しろ、全員生きてる。縛ってここに閉じ込めてはいるがな。」


そう言って親指で寝室を示した。


「…いつからここにいる?」

「これ以上私が貴様の質問に答える必要があるか?」

「重要なことだ、日によっては餓死の可能性もある。」

「安心しろ、飯は与えていたし、便所にも行かせていた。

拘束したままではあるがな。」

「その資金はどこから?」

「もちろん私の金だ。

無理矢理とはいえ隠れ家にさせてもらっているからな。

とはいえもうじき金が尽きるから、

今日ぐらいに出ていこうとした矢先、これだ。」


言いながら男は両手を広げて、現状を見ろと促してきた。

…なるほど、昇格式が明日以降であれば鉢合わせすることはなかった、と。


「けど僕に会わなかったとしても、子供たちが言えば終わりだ。」

「なら脅すまでだ。報告すれば命はないと。」

「あなたが来るまでに国が保護するだろ。」

「そうすればこの国は守りの姿勢に入る。

その間にどこか別の地に逃亡するまでだ。」

「?あなたに逃げ場があるとは思えないが…。」

「真ノロア国になら入れるさ。」

「真ノロア国にも指名手配を発令すれば…あ。」

「気づいたか?今は戦争中だ、敵国に塩を送る真似はしないだろう?」


…くそ、意外と計算してるな。

いずれにせよここから逃がすわけにはいかない。

でも相手は大人だしなぁ…。

さっき見た限り、『能力』の扱いも上手そうだし…勝てるか?

とりあえず石之助(MY石)で側頭部辺りを攻撃して気絶を狙うか…。


ヒュウゥゥゥゥゥ…


狭い食卓の空間で穏やかな風が吹き始めた。

相手がどれだけ大きな竜巻を発生できるか…だな。


「―――ほっ!」


相手の懐に入るため駆け出した―――瞬間。

目の前に巨大な竜巻が発生した。


「うおっ―――がっ!」


こっちから突っ込んだのが仇になったのか、

受け身も取れないまま、壁に叩きつけられた。


「いっっっ…てぇー!」


背中を思いっきり強打した…激痛だ。


「背骨折れるかと思った…。」

「このまま見逃してはもらえないか?」

「う~ん…無理!」


石之助を風の影響の受けなそうな壁際にぶん投げる。

壁にぶつかる前に『能力』を発動、

男の側頭部があろう場所めがけて飛ばした。

竜巻のせいで相手が見えないから憶測でやるしか―――っ!?

…なんだこれ。

竜巻の向こう側の状況が分かる…いや、見える…のか?

…なんかよく分かんないけど、そこだ!


「ん?―――っ!!」


あ、くそ、避けられた…。

と言うより風で軌道をずらされたか…。

ちぇ、一番奇襲成功率が高いやり方だったんだけどな~。


「さて、次は―――うわっ!」


と、突然僕のいた場所にまた小さな竜巻が発生した。

床を転がりながら今度はしっかりと堪える。

…くそ、この辺りには石がないから、戦い辛いな。

さて、どうしたもんか―――


「なんだこれ?家の中どうなってんだ?」

「っ!?」


後ろを取られた、と思った。

でもその声は敵意こそないが力強く、何より懐かしい声だった。


「…お前。」

「ん?おぉ、晶斗!久しぶりだなぁ、先に帰ってたのか!」


そいつは幼馴染であり、親友であり、

なにより僕が憧れた目標である男だった。


「ただいま、晶斗!ただいま、我が家!」

「…おかえり、清正。ちょっと遅いよ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ