実戦訓練
「マーク、治癒魔法の練習をしたいので、怪我をして貰えませんでしょうか?」
「ふざけんなよ!!」
「あら? 私は大真面目ですわ?」
そりゃあ……『練習台になるために怪我をしろ』なんて言われて『ハイ』って答える奴はいないだろ……
「大丈夫ですわ。ウォルフ様の鍛練のついでに魔力の矢に当たってくれればいいだけですので!」
「ホリー、マークを狙ったら殺すわよ!?」
「ユリアは心配性ですわね。マークの顔が潰れれば少しは良い男にして差し上げますわよ?」
「どういう意味だ、この『お子様魔導師』!?」
「マーク、良い覚悟ですわね……」
「あなたが喧嘩を売ってるんでしょうが!」
「あの……冷静になりませんか?」
クリス……コイツらのジャレ合いに構うだけ無駄だよ?
「おかしいですわね……ドMのマークは喜んでくれると思っていたのですが……」
「誰がドMだ!?」
「ユリアと付き合ってるってことは、そういう趣味があるのではなかったのですか?」
「ホリー、あなたは私をどういう眼で見てるのよ!」
「あっ、あの……」
クリス、だから無駄だって。
【魔力増幅炉】と名付けるつもりの新しい魔術を最初に体験したマークとユリアに対する嫉妬なんだよ……
ホリーは基本的に我が儘なんだから……マーク達に嫌がらせをして憂さ晴らししてるだけだと思う。
「文句はウォルフに言えばいいでしょ!?」
ユリア、俺を巻き込んでんじゃねえよ!?
「私がウォルフ様に文句? あり得ませんわ!」
「だからって、俺達に不満をぶつけてんじゃねえ!」
フッフッフッ、ホリーは昔から俺には大甘なんだよ!
俺を巻き込んで有耶無耶にしようなんて甘いぞ。
とはいえ、さすがにマーク達が気の毒だな……
「ホリー、マークで遊んでないで試してみるか?」
「勿論ですわ!」
ハイテンションなホリーと対称的な表情のマーク達の視線が突き刺さってくるが、敢えて無視する。
助け船を出したんだから俺を睨むなよ……
【魔力増幅炉】で流れ込む魔力を実感したホリーとクリスは言葉が出ないって感じで、自身の体内に溢れる魔力を制御しようとしていた。
「ウォルフ様はこれよりも多くの魔力を制御されているんですわね……」
「これは……制御出来ればかなりの魔法を使えそうですね」
二人は謙虚なことを言っているが、治癒魔法を使うために魔力制御の鍛練を続けて来ただけあって短時間で魔力制御をこなしていた。
「では……」
「もう少し……工夫が出来そうな……」
詠唱と同時に顕現した魔力の矢は千本を超えている。
後は、狙いを外すことなく的を射抜くことが出来れば実戦で使えるだろう。
クリスが放った魔力矢は的に見立てた岩を粉々に砕いてしまった。
次はホリーだが、顕現させた魔力矢を空に向けて放った。
空から落ちてくる魔力矢は地面に刺さる直前に急旋回して目標にしていた岩を打ち砕く。
「目標をイメージに加えることで、目標を射抜くまで追尾する矢にすることが出来ますわね」
簡単そうに言っているが、これはかなりの高等魔法だ!
魔力制御の精密さがかなり必要になる魔法であり、レイスル王国の魔導師の中でも可能なのはホリーだけだろう。
あのエリー様が、
『魔法の才能だけは有ります』
と評価されていたのも納得だ……
ぶっつけ本番で使える魔法じゃないぞ!
「『だけ』って言葉が納得出来ませんわ!?」
「あのエリー様が褒めてるんだから凄いことだろ?」
「この知性と美貌を兼ね備えた私に対して『魔法の才能だけ』って言われたのが叔母様じゃなければ、炭になるまで燃やして差し上げるところですわ」
「さすがエリー様だ。正しい評価をされてるな!」
マーク……
御愁傷様しか贈る言葉はないぞ……
「うおおおおおおっっっ!!」
ホリーの背後に顕現した魔力矢の内十数本がランダムな軌道でマークを襲う。
剣でなんとか魔力矢を弾き返したマークが安心する間も無く、次の十数本がマークに殺到する。
「マーク……鍛練に付き合って差し上げますわ。光栄に思いなさい」
「オオオオオオオオッッッ!!」
眼が座りきったホリーを止める人間はいなかった。
さっきのはマークが悪い……
ユリアも呆れた表情でため息をついている。
これでは、本当に限界になるまでユリアの助けも期待出来ないだろう。
「ウォルフ、魔力の供給を止めろーっ!!」
マークが叫ぶように言って来るが、魔力の供給を止めたところで既に流れ込んだ魔力が尽きるまではどうしようもないんだよな……
「ホリー、魔力の供給は止めたから制御は気をつけてな」
「魔力が尽きるまで、実戦形式の鍛練に付き合って差し上げますわよマーク……」
一度に十数本の矢を放っているが、既に顕現させている魔力矢は千本以上残っている。
マークが動けなくなるまで終わらないんだろうなぁ。
本当に御愁傷様だなマーク……
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