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闘い

「なぁ、お前らって強いのか?」


それは、ふとした疑問だった。

ロナとリリアは、俺の勝手な想像で新米冒険者って設定になってるけど、もしかしたらそうでは無いのだろうか。

しかし、判断材料が足りない。

今までは俺が一人で闘っていたから、二人の実力を見ることはできなかったが、モンスターを狩るついでにそれを見られる、いい機会なのではないだろうか。


「強いよー!」

「自分を強いとは思ったことありません......ライルさんは強いと思いますけど」


う、うーん。全く分からんな。

やはり自分の目で見て確かめる方が早い。

ここで二人の実力を知っておくことによって、後々のバトルが楽になるかもしれないからな。

もし、闘えないようであれば、それはそれで俺が教えるまでだ。


「なら、あそこにいる鹿みたいなのをやれるか?」

「しか?しかってのはよくわかんないけど、ケラビノスのことだね?」


俺にはどう見ても鹿にしか見えないが、強いて言うなら、少しだけこっちの鹿の方が大きいくらいだ。

ツノの生えてるやつと生えてないやつがいるが、おそらくオスメスの違いだろう。

ロナとリリアよりも大きいが、まぁ問題無いだろう。鹿なんて、モンスターを狩るゲームでは弱モンスターだ。

ロナもぴょんぴょんとその場で飛び跳ね、軽く運動をしている。やる気満々のようだ。


「じゃあ、そのケラビノスを狩ってくれ」

「おっけー......エンハンス・スピード!」


ロナは、腰から短剣を抜き出し、素早く目標へと接近する。しかしロナはソードダンサーではなく、普通のアタッカーだ。

故に攻撃力がある。


「うぉりゃッ!」


ズシャッと、鹿......じゃなかった、ケラビノスが逃げ出すよりも先に、首へ短剣を刺した。速いな。

しかしそれでも、ケラビノスは暴れ続ける。

しっかりと奥まで刺さって無いな。詰めが甘い。


「このッ!」


ケラビノスに跨った状態のロナは、首から短剣を抜き出し、もう一度同じ部位に刺した。

今度はもっと奥まで、しっかりと。

するとついに、ケラビノスは唸り声を上げながら倒れ込んだ。


「へっへー」


ブイッと、片手のピースを俺に見せつける。

嬉しそうだ。


「どんなもんだい」

「なかなかやるじゃないか。急所も的確に突けてるし、ケラビノスを狩る練習ばかりしていたのか?」


俺は状態半分で言ったつもりだったのだが、


「ううん、全く。そもそもモンスターを狩る練習なんてしたことない」


その言葉に驚いた。てっきり、モンスターを狩る練習ぐらいしているものかと思っていたのだ。


「なら何をしていたんだ?まさか対人戦......とか?」

「いや?まだ実践はしたことないよ。魔術の勉強だけ」


おいおい、それだけであんなに動けたのか?

そりゃあ本当に大したもんだ。

俺だって、弱点とか考え無しに強魔術をぶち込むこのしか出来ないってのに。

この子には、才能がある。

残念ながら、闘いの才能が。


「それで、お前はどうなんだ?リリア」


リリアはビクッと、体が跳ねた。


「わ、私は闘いはちょっと......」


苦手なのか、怖がりなのか。

恐らく両方だろうが、どちらにせよ、無理強いはしないでおこう。ロナが闘えるのならリリアは回復役だ。

まぁ、ヒーラーだからそりゃそうなのだがな。チームによっては、回復以外にも強化魔術や、攻撃魔術を使うヒーラーもいるだろう。本にヒーラー用の攻撃魔術があったから、たぶんそうだ。

しかし、それをリリアにもやれと言うのは少し違う気がする。無理はさせたくないのだ。


「あ、そういえばレティシアもヒーラーだったよな」


レティシア。最初に出会った、人間の三人チームのヒーラー役。しかし、レティシアは何故か回復魔術を知らなかった。正確には、ヒールを治療出来ないと思っていたのだ。

ただの痛み止めだと。


「ヒールって、本来は痛み止めにしか使えない魔術なのか?」

「はい、普通は怪我を治したりすることなんて出来ません」


ヒーラーの意味を探す俺だった。


「なら、俺が教えてやる。だからお前も回復出来るようになれ」


これだけは教えておきたい。今後凄く役に立つだろうからな。


「俺はリリアに魔術を教えるから、ロナは近くでモンスターでも狩っておいてくれ」

「りょーかい」


ロナは先程のケラビノスを血抜きすると、次の獲物へと向かう。


「ケラビノス以外は、あまり強そうじゃないの狙えよ。あと、あんまり遠くへは行くな」

「それもりょーかい」


少し心配だ。ま、鳥の目で見えないほど遠くには行かないだろう。

俺は宣言通り、リリアに魔術を教え込んだ。

回復魔術、強化魔術、それと攻撃魔術も。

本で読んだ、誰でも簡単に使えそうな魔術は、ほとんど教えた。

頭に入り切らなくてパンクしてしまうのではないかと思ったが、リリアは物覚えが良く、すぐに魔術を体得していった。

それに、二人の闘いを見て、もう一つ分かったことがある。


「ハァハァハァ」

「ふぅ」


魔力量の違いだ。

普通、通常の体力を使う時よりも、魔力を使う方が疲れやすいようになっている。

ロナは動き回っているとはいえ、魔術をあまり駆使してはいない。むしろ、ちょいちょい休憩を挟んでいるのにも関わらず、すぐに息切れするのだ。おそらく、元気過ぎて無駄な動きが多いのも原因だろうが。

反対に、リリアは魔力量が多い。

これだけ連続で魔術の練習をしているのに、あまり疲れているようには見えない。

ずっと空を飛び続けている俺でさえ、少しの疲れは感じるのだが、リリアはまるで知らないかのようだ。

もしかして天才なのでは?





リリア天才説が出たところで、俺達は村へと帰還した。


「たっだいまー!」


勢いよく、村長の家の扉を開けるロナ。

それに驚く村人達。

いや、これはロナに驚いているのではない。もちろんそれもあるだろうが、一番驚くべきは持っている物だ。

そう、俺達の後ろには、とても大きなモンスターがいる。いると言っても食料としてなのだが。

そりゃあ村長達がポカーンと口を開けるのは無理もない。

なぜなら相当な量だからだ。

ケラビノス五体に、ジャブルという馬のようなモンスター三体。ビフーブルという牛。いや、もうモンスターというか完全に大きな牛だよこれ。それが六頭かな。

あと豚。トンファーって言うらしいんだが、ビフーブルよりも強かったらしい。

それと、適当に石を投げたら落ちてきたという鳥、二羽。まさに一石二鳥だが、これ俺が食べたら共食いになっちゃうよ?

そんなこんなで、つまり沢山大きなモンスターを狩ってきたというわけだ。

それも、ロナ一人で。

俺も予想外の戦闘力。


「予定よりも少し多かったが、まぁお祭りということで。さて、王都の場所を教えて貰おうか!と言いたい所だが......」


俺は、腹が減っている。

ので、


「先に飯にしよう。それから教えてくれ」


いつの間にやら、村長の家の前には人集りだ出来ており、俺の飯という声で、皆が一斉に喜んだ。

そりゃあ目の前にこんなに食べ物があれば喜ぶわな。村長はまたもや驚いていたが、前のような悪質な笑顔ではなく、嬉しい笑顔でニコッと笑った。


「すぐに作ろうか」


今夜も豪華な飯だ。

ブックマーク登録、ありがとうございます!

昨日は、投稿出来なくて申し訳ありません。

お詫びと言ってはなんですが、二話連続の投稿をするつもりなので、よろしくお願いします。

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