罪と罰(1)
俺たち二人の元にその“箱”が届いたのは、小雨降りしきる秋の終わりのことだった。その日は日曜でーー俺は高校をやめる気でいて仕事を探していた頃。もうあのまま早稲田とも会うことも無いだろうと思っていた矢先、その“箱”とヤツからの連絡が来た。
『君のところにも箱が来たか』
『会って話そう』
そうして俺は初めてヤツの家に上がることになった。高い壁に囲まれた、立派な日本家屋だ。
門を通って石畳を歩き、玄関のインターホンを押す。するとすぐ、ジャージ姿のヤツが現れて、俺は私服の早稲田を見るのが初めてだったということに気付いた。
「上がって」
前回の別れ方もあって妙な緊張感を感じていたが、それはどうやら俺だけのようで、ヤツの様子は普段通りだった。長い廊下を歩き、幾つかの部屋を横目にヤツの部屋に入る。壁一面にびっしりと並ぶ本以外、趣味を感じさせるもののない、生活感を感じさせない部屋だった。
「適当に座って。……さっそくだけど」
早稲田はいつも座っているのであろう、机の前にあるアームレスト付きのオフィスチェアに座る。そして、机の上にある箱を手に取った。
細かい刺繍の入ったこげ茶の座布団の上に俺は腰を下ろすと、鞄から箱に入っていた手紙を出す。俺たちはお互いに送られてきたものを見比べて、全く同じ内容であることを確認しあった。
私の正体は田村将也達の雇った探偵によって暴かれた。
私は奴らに殺されしまうかもしれない。しかし私は逃げない。
私の正義の心は死なない。
「この手紙はボックスマンの寄越したものじゃない」早稲田は言った。
「箱は同じものだが、封の仕方が違う。それにこの手紙、妙だ。なぜ自らの正体が田村達にバレてしまったことを僕たちに教える必要がある?」
「自分の正義感を強く信じていて、それは自分が死んだとしても消えない。俺たちはその証人として選ばれた、ってことか?」
「そう解釈しようと思えば解釈できないこともない。が、これは助けを求めているようにしか僕には読めない」
「でもこの手紙はボックスマンが送ってきたものではない、と」
「そう。この手紙はボックスマンの協力者が寄越したものだ。増子冷美……」
早稲田は窓の外、遠くを睨んでいた。




